【全√クリア】『心の欠片をもらったのだ、ありがとう、だぞい』そう、これは”心”を知らなかった小さな妖精が恋の応援をしながら心を知り成長していく物語。彼女の一生懸命さは僕らの心にも何かの欠片を間違いなく置いていってくれた。
■積みゲー消化。
個人的にはシナリオ自体、全てを手放しで褒められる作品ではありませんでした。
まず、不満点として、主人公の態度がちょっといい加減(優柔不断)すぎます。
告白?されてから恋人を作ると決意するものの、自分の為では無く、チョコの為で
自分からは決して行動を起こさず、状況に流されまくりで一向にシャッキリとしない部分が
私にはダメでした。
また、協定の意味もヒロイン達は、はき違えているんじゃないかと私は思いました。
結局、朋絵の言ってた事が正解じゃないか?
元々、仲良しグループを作りましょう!と言って締結された物では無く、あくまでも主人公に複数の
告白対象者から冷静に恋人を選んでもらうために抜け駆けを防ぐのが当初の目的でしたし”協定”と
いう言葉が本来持つ意味でしょう。
それなのに、途中から目的がすり替わっていて疑問を投げかけた朋絵が悪者になってしまっています。
これが朋絵が言った「友達の協定」なら朋絵に非難が来たこともしっくりくるんですけどね。
ライターの方の言わんとすることは分からないでもありませんが、上手く伝えることが出来てません。
どちらかというと、主人公を奪い合ううちに芽生えていく女同士の連帯感、そして友情・・・というノリの
方が良かった気がしますね。
朋絵を悪者にする事で、善意を表現しようとして悪意も同時に見せる。そんな手法だったのだと思いますが
正直、善意だけでよかったんじゃないですかね?
しかし、上記のマイナス要素を差し引いても私は本作が気に入りました。
では、結構大きな不満点をスポイルするほどがどこが気に入ったのか?
それは、恋のキューピッドである妖精のチョコの存在です。
本作は間違いなくチョコゲーと呼べるでしょう。
主人公とヒロインが成長するのは勿論だけど、何よりチョコの成長物語であるということ。
ヒロイン個別ルートクリア後の最後に出るチョコの「心のかけらをもらったのだ、ありがとう、だぞい」を
初めて聞いたとき(朋絵√)、涙がぶわっと溢れました。
全くの不意打ちで本気でやられました。
”妖精”という言葉ででパっと思いつくのは戯画の「ショコラ」に登場するチロル。
チロルは正直言って「ショコラ」と言う作品に必要なキャラだと私は思いませんでした。居なくて特に問題無し。
しかし、この愛cuteと言う作品にはチョコは無くては成立しない程の存在だと思います。
多分、人によってはチョコをうざいと思う人もいるだろうと思います。
人の言うこと聞かないわ、授業の邪魔をするわ、気に入らないことがあれば蹴ったり殴ったり体当たりを
してくるわ、と全くもってろくな事しません。
けれど、私はこう思います”うざくて当たり前”なのだと。
チョコは人間では無く妖精なのです。
妖精だから人間の有する感情の機微や心が本気で分からないし理解出来ないのです。
だから、恋のキューピットと言う役割をすることで人の感情、心を学習していくのです。
そしてヒロイン達との交流を繰り返していくうちにチョコは「人間にとって大事な心」を少しずつ学んでいきます。
「ループ物」ではありませんが、チョコは各ヒロイン√を通過する度に少しずつ、違う心を学んでいきました。
全ヒロインをクリアした時、チョコ√が開かれるのですが、この√のチョコは最初からある程度の感情の機微を
きちんと理解出来、更に足りない人間になるための心を学んでいったのです。
チョコの一生懸命さ、友達への想い。
この想いもどんなに一生懸命訴えかけても相手に届かない。
それでも、一生懸命にヒロインに訴えかけるチョコの姿には心にうつものがありました。
泣き物が好きな人はきっと楽しめると思います。
※チョコが画面狭しと飛び回るのは非常に良い演出。
※メッセージウィンドウに乗っかるチョコカワイス
以下、個別感想(ネタバレ有り、攻略順)
■桐風 朋絵√
正直、全ヒロインで一番敬遠したいヒロインでした。
妄想癖のある電波な女性、それが朋絵に感じた第一印象。
シナリオ中も正直、(私的に)うざい部分が沢山ありました。
主人公に近づいた理由とか、余りにも失礼だと思いますし。
けど、シナリオの最後に彼女が主人公に言った「チョコへの感謝の気持ち」
これを聞いたときに、全て許せて、かつ一気に好きなヒロインになりました。
結局の所、チョコありきだったのかもしれません。
シナリオの中でチョコの一生懸命に朋絵を応援する姿が本当に一生懸命で、見ているプレイヤーの心に
確かに届く物がありました。
シナリオ中で朋絵がチョコを感じる事が出来ないのを悲しむ場面が何度かありますが
最後の最後、朋絵の”チョコを信じてくれた”ことで報われたような気がします。
シナリオラストの泣け具合では正直、全ヒロイン中1,2を争う出来だったと思います。
■春日井 結√
唯一、真っ直ぐに主人公に好意をぶつけてくる彼女。
主人公に会う為だけに背伸びして頑張って分不相応な学校に入学までしてきた彼女。
彼女は心に大きな劣等感を抱いていた・・・。
そんなストーリー。色々不満が多いシナリオなんですよね、このシナリオ。
まず、劣等感がテーマなだけにシナリオ自体はかなり暗いんです。
主人公と結の出会いなんかはありがちながら、いい雰囲気だったのにどこでこうなった?と
言うのが正直な感想。
鬱気味なヒロイン見ていて何が楽しんだ、と。
担任やパパッラチ共の暴挙も目に余りますし、学校側もイジメになりかねない学生新聞に
何も手を打たないのもおかしく感じます。
ヒロイン達も何故、学校に相談しようとせず、自分達だけで解決しようとするんでしょうか。
そして何よりチョコは結が「嘘付いている」事を主人公に話さなかったのでしょう。
違和感ばかりが目に付きました。
そして、ラスト。あの展開は正直言って期待はずれもいいとこです。
ライターの人は満足してるかもしれないけど、正直ライターの方の底がしれます。
チョコが何であれで満足して消えていったのか理解出来ませんでした。
良ヒロインになり得ただけにひたすら勿体なかったなあと思います。
■樹 まゆ√
まゆ√は本作のヒロインの中ではひょっとしたら一番良いシナリオ(物語)かもしれません。
「コーヒーの思い出、何年後どうなってるんだろう」これ、非常に上手い描写と思いました。
昔は飲めなかったコーヒー、今は毎日美味しく飲んでいる。
こんな風に未来の自分達は変わっていっているんだろうか。
これって、普段考えないけどまさにその通りでこの描写を見たとき自分の未来はどうなってるんだろうな
なんて軽く考えちゃいました。
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「あたしは君に合わせているつもりは無いよ」
「えっ?」
「君に見てもらいたいから女の子らしくした」
「あたし自身のためだったんだよ」
「君は馬鹿だね、実に馬鹿だ」
笑顔でボクの頭をコツンと叩くまゆちゃん。
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作中に上記のようなやり取りがありますが、これが非常に好きな流れで、前後の会話もドキドキします。
また、結との三角関係が中々リアル感が合って、これも非常によかったと思う。
そして何よりもチョコはこのシナリオで大きく成長したと思う。誰かのキューピッドを買って出る事は
他の誰かを泣かしてしまうこと。
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「チョコね、チョコね!」
「みんなをおうえんしてたんだよ」
「・・・」
「・・・ふぇ」
「人間なんて・・・なりたくないのだ」
誰に見えなくてもいいのだ。
・・・○○としか話が出来なくてもいい。
どうせチョコには、人間になりたいということしか覚えてない。
だから・・・
---だから!
「人間になるのあきらめる!」
「チョコ、かなしいおもいではいらないのだ!」
「だからげんきだして!」
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チョコのこのセリフには正直驚きました。
他の√も含めて、こんな言葉を言える子じゃなかったんですよね。
チョコの成長をぐっと感じる事が出来る名シーンだったと思います。
最後のチョコには本気で泣かせてもらいました。
※エレナさん、こんな声も出来るんですね、すごいわ。
■佐伯 亜里砂√
ありがちだけど夢を取るのか恋を取るのかというテンプレ話。
未来の態度が露骨すぎてちょっと引きました。
一番いけないのは「おままごと」を許容している主人公。
真剣に主人公のことを好きなヒロインに失礼。
チョコにも失礼だよね。
正直、余り好きなシナリオじゃなかったなあ・・・。
※亜里砂の設定自体は非常に好きだったんですけどね。
■冬條 未来√
プロローグを見たとき、”義姉と呼ぶ”事に抵抗を感じていたけど、やってるうちに姉に思えてきた。
そういう意味ではキャラ設定が上手くいった好例だと思います。
未来√だけは他のヒロインと比べて大きな違いがあります。
それは未来もチョコを見ることが出来、会話することが出来るようになること。
これは子供の頃に”妖精”を見たか、見ないかという部分に原因があるような気がしますが
結局の所、正確な理由は明かされません。
この辺はきちんと回収して欲しかったなあ、と思ったりします。
「チョコがヒロインと会話する」という事柄は私に取ってかなり大きなウエイトをしめるイベントでしたので。
また、ちょっと気になった点もやはりありました。
最後の教室で未来が逃げた後、全員を主人公が振った時に亜里砂は主人公をひっぱたきました。
けど、亜里砂ルートからすると叩くのは余りにも自分勝手というか雰囲気に酔ってるというか、おかしくないでしょうか。
無論、この時点での朋絵については主人公と未来を弾劾するなんて論外。
彼女らは主人公を”好き”だから告白したわけでは無いのですから。
※チョコとの別れで泣けるシナリオとしては朋絵ルートと双璧かもしれない。
無茶苦茶泣けました。
■チョコ
チョコは成長した、間違いなく成長した。
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「恋人探しのことなんだけど・・・」
「きにしなくていいのだ」
チョコの言葉に半身を起こす。
「でも、人間になれなくなっちゃうんじゃ・・・」
「どすこーい!」
ぺちんっ。
飛び上がると同時に、僕のおでこに張り手が見舞われる。
けれど、少し手加減されていたり・・・
「チョコが人間になれないから恋をする」
「ノンノン、それはちがうのだ」
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このチョコの一言をみたとき、正直驚きました。
最後の伏線のために仕方ないこととはいえ、石碑に釘で落書きするというのは正直かなりむかつきました。
ちょっと冗談ですまされる話じゃないと思うんですけどね・・・。
どなたかも言われていましたがチョコにHシーンは必要無かった気がしますね。
結末はちょっとご都合すぎてどうかと思いますが、まあ綺麗にまとまったんじゃないでしょうか。
■総 括
結局、各ヒロイン個別のエピローグを見た感じ、チョコは再び会いに来ることはありませんでした。
チョコルートを見ると理由は大凡想像は付くのですが、私はこんな風に思いました。
各ヒロイン√の最後で流れる「心のかけらをもらったのだ」
チョコは主人公の恋を成就させたら人間になれる、と言っていましたが正しくは人間の心を理解する事が
出来たら人間になることが出来る、なんだと思います。
各ヒロイン√をクリアしただけでは「心」は手に入れれず「かけら」だけを手に入れたチョコ。
全てのヒロインからそれぞれの「心のかけら」を得て、チョコは初めて人間になることが出来た。
未来√でこんなやり取りがありました。
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「まるで、テストを受けているみたいだね」
「お?」
テスト。
人間にとって必要なこと。
手伝うと怒られること。
「これに合格すると人間になれるんだね」
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この流れは悪くはないと思うんですが、それだと各ヒロインとの個別はなんだったんだろうなあ・・・と
思わないではありません。
未来・亜里砂・朋絵・結・まゆ・・・彼女達と通じ合い、一緒になった未来がなんか夢オチのような
そんな寂しい気がします。
・・・とまあ、色々書きましたが最終的にはかなり楽しめました。
泣けましたしね。
今や中古で買えばかなり安く買えます。
泣きゲー好きでまだ未プレイならやってみる価値はあると思います。
良いところばかりではありませんが、確実に心に何が残るんじゃないでしょうか。
※なんか、微妙に名古屋弁っぽいのが入ってるよなあ。ちょっと使い方とか違うけど・・・。
ライターさん名古屋出身か?