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sayuraさんのものべの -monobeno-の長文感想

ユーザー
sayura
ゲーム
ものべの -monobeno-
ブランド
Lose
得点
90
参照数
694

一言コメント

【全√クリア】【ネタバレ有り】雰囲気を重視した丁寧な作りが非常に好印象。かってない程の背徳感を味わう事が出来る近親相姦ゲーの金字塔といっても差しさわりのない作品。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

プレイを開始してまず、思ったのは「やばい、すげえ、やばい、無茶苦茶、雰囲気がいいぞ、この作品」でした。
そして、雰囲気の良さもさることながら、なによりも妹・夏葉の描き方が素晴らしい。

声優の杏子御津さんの力も多分にあるかと思いますが、心底”守ってあげたい”と思わせる魅力あふれる妹として
実に見事に描かれています。

プレイ開始後、わずか5分でここまで感情移入したヒロインってちょっと過去にいなかったな、と思います。

そして、主人公達を囲む周りの人々(妖怪含)も非常に素晴らしい味を出しています。
彼らとの会話の一つ一つ、行動、、、その全てが優しい気持ちにさせてくれます。
※部分アニメーションの効果も多分にありそうですが。

特にありすなんかは、一歩間違えばウザキャラと化す可能性が高いキャラだと思うのですが、非常にうまく彼女の魅力を
嫌み無く、描けていますよね、彼女のルートは実に素直で、たまに見せる本音がいじらしく素晴らしいヒロインに
なっていると思います。

作中で夏葉はありすに非常に懐くのですが、そんな夏葉の気持ちも理解がちゃんと出来ますしね。

ここより余談ですが「冬のロンド」という作品がありました。
シナリオの面白さという部分には全く評価が出来ないこの作品、評価を書いた人々が口を揃えてべた褒めしていた
部分があります。

それは、「魅力的なヒロイン」と「優しさで満ち溢れた主人公達を取り巻く環境と人々」です。

特にプレイ中、何度もルミアウラ(国)に住んでみたい!と思わせる程、魅力的に世界とその中に住む人達を
丁寧に描いていました。

本作”ものべの”も、これに似た優しさ?雰囲気?を感じる事が出来る作品に仕上がっていると私は思います。
まあ、勿論外国と日本国内という舞台の違いからイメージは大分違うのですが。

そして本作の「ものべの」は「冬のロンド」と違い、雰囲気の良さ+シナリオもよく作りこんでいます。

こういった雰囲気を持つ作品は希有で、雰囲気を楽しみたい方々には貴重な作品だと思います。

パッケージイラストからどうしても夏葉の外見的な印象でロリゲーオンリーと思われがちな作品だと思いますが、
雰囲気を重視する人や日本的な様相、伝記的要因を好む方には是非、偏見を持たずに手にとって欲しい作品です。

※エッチシーンはもうロリ以外の何者でもありませんがw








■すみルート

正直言うと、ヒロイン・・・としては、弱く感じてしまいます。

そしてシナリオ自体も、本筋の夏葉を助けたいという部分がどうしても先行してしまう結果、すみとの関係に
ついては、無理があると言っても過言では無いほどの駆け足で進行していきます。

カヤリノ洞窟で、いきなり透がすみに欲情するシーンがありますが、あまりにも唐突な展開すぎて
正直何が起こったのか私には理解不能でした。

そこまでの展開で、すみを《女性として》意識する描写は無く、本当に唐突に欲情します。
その場面で、ほんの数行、文章でのみ過去に何かあったような事が示されますが、まったく持って説明不足
で、唐突感は否めません。

すみをヒロインとして弱く感じてしまうのは、まさにこの部分が原因で、彼女を一人の女として我々プレイヤーが
意識するには、バックボーンも描写も圧倒的に足りないからだと思います。

家の中を家捜しした場面とか、すみの心情を描写する機会はあった筈なのですが・・・。

また”唐突に欲情”はシナリオの展開上も不適切です。

二人にとって大事な夏葉を助けようと、決死の思いをもって進んでいるあの場面に挟むべきエピソードでは
断じて無いと思います。

結末として、このルートが一番BADな展開ですしね。

また、これは私だけが気にしていることなのかもしれませんが、人と妖怪が結ばれる、というのは
もっと沢山の葛藤があって然りでは無いでしょうか。

もっと本人達の心情や周りの人間達の反応を描くべきシナリオでは無かったのではないかと思います。



■ありすルート

正直言って舐めてました、、、というか夏葉が強く残りすぎてヒロイン力?がどうしても弱く見えてしまう
唯一の普通の女の子的な彼女はどうしても、印象的には弱くなってしまいます。

また、私が他のゲームに毒されてしまっているからかもしれませんが、何となくせこい絡め手を使って
透にアプローチしてくるウザキャラ系にプレイ当初は見えてしまっていました。

しかし、その予想は見事に裏切られて、最後の最後まで、なんとも気持ちの良いヒロインでした。

たまに挟まれる、弱い心情部分もホロリと上手く彼女の人間味を出すことに成功していますし、シナリオも
個人的には非常に好きな展開です。

すみルートと違って、恋心の変遷もそこそこ描かれていますしね。

ありすシナリオの結末って余り他のゲームでは見ないですよね。
○○出して問題解決という、ある意味スッキリし無いと言えばしない結末・・・。

本作の主題から言えば、すみルート同様、このルートもBADなんでしょうけど個人的にはそういったスッキリしない感
も含めた上で、満足度は高いシナリオでした。

敢えて苦言を言うなら、すみ・飛車角のその後をきちんと描くべきだったと思います。
その後の二人がどうなったのかは知りたいですね。




■夏葉ルート

ロリ好きな諸氏には本気で堪らないヒロインじゃないでしょうか。
ロリ嗜好が無い、私ですら夏葉にはやられました。

シナリオ前半部分の共通のシーンは賛否はあるでしょうが、個人的には正直省いて欲しかったかなあ・・・。
夏葉の心境が理解出来るという意味では良い演出効果だったとは思うんですけどね。

ちょっとくどいというか、一度見たシーンを夏葉の心情が見たい為だけに繰り返し見るのは少し苦痛でした。

シナリオ的にはハッピーエンド・・・なんでしょうが、広げた風呂敷をたたむことが出来なかった感が
ひしひしとします。

あれほどの急激な成長を○○○を失った彼女が止められる訳もなく、7年も立てばとっくに老衰死して
いなければならないはず。

ラストの一枚絵はどうみても、夏葉(大)程度でした。

この部分だけでは無いのですが、もう少し精神論だけじゃなく、シナリオ的に整合性を持たせて欲しかった。
どうせというと語弊があるかもしれませんが”妖怪””○○○””ひめみや流”等のトンデモ設定がゴロゴロしてるんですから
そういったトンデモ設定を使ってでも、整合性を付けるべきだったと思います。

最後の最後になって、正論というか常識部分をメインに話されてもなあ、というのが本音。

まあ、とはいっても楽しむ事は出来たのですけどれどね。



■販売方法について

DL販売が始まりました、何でもDL版だけの特典として夏葉のHシーンが1つ余分に収録されているそうです。

大人の事情、があるだろうことは容易に想像できますが、正直言って(建前)同じ値段を出して購入している
ユーザーに差別を与える販売方法に大きな疑問を持ちます。

発売日から2年や3年経過してからのDL販売で差をつけるというのは、分からないでもないのですが
この短い期間でこのような差をつけられる事に憤りを感じます。

その特典がDL販売開始から一定の期間の経過で全正規ユーザーに開放されるなら分かりはするのですけどね。

正直、この売り方は無いだろうと思います。



■総 括

物語の完成度、を追い求めるために、個別ルートでのヒロインへの思いやバックボーンを描く事を
犠牲にしてしまった感がどうしても否めません。

物語「ものべの」としては大成功だったとは思うのですが、恋愛作品としての「ものべの」としては
まだまだ、改善の余地が多くあったような気がします。

そして、本作のキモは夏葉とのHでしょう。
作中での夏葉は、まさに守るべき対象であり、妹だから+αの部分からも、究極の禁忌対象だと思います。

そんな夏葉とのHは、個人的には相当な背徳感がありました。

近親相姦というシュチュエーションが好きな諸氏には是非ともプレイして頂きたいものです。