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sayuraさんののーぶる☆わーくすの長文感想

ユーザー
sayura
ゲーム
のーぶる☆わーくす
ブランド
ゆずソフト
得点
95
参照数
13778

一言コメント

【全√クリア】【追記・修正】序盤に不愉快な表現が目立つキャラがいるので不安だったが、尻上がりに面白くなる。キャラゲーとしてはかなり秀逸でこの手のゲームが好きな人には堪らない出来なんじゃないかと思う。少なくとも私は凄く楽しめた。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

一言感想にも書きましたが、序盤で激しく不快な言動や行動を取るキャラがいます。
その不快キャラはまず、兼元家メイド長である源 茅明。

何というか、エロゲー特有の表現というかよく見るテキストではあるんですが、少し度が過ぎるかな、と
個人的には思います。

また、兼元家当主の伊角も度を超えた不快な言動が見受けられました。
匠が伊角と初顔合わせの際、灯里が一緒に住むと分かった途端、

序盤で伊角(兼元父)と初顔合わせの際、灯里と住むと言われた途端、暴言を連発。
人に物を頼む態度じゃないですね、あれは。
匠が自分から住んで欲しいと言い出した訳で無し、勝手に決まった事であそこまでの暴言を浴びる必要が
あったのか?きっと私なら影武者断りますね、あの時点で。

そして、執事をやることになって、洗濯(下着含む)をしろと言われて洗濯をしたら変態呼ばわり。
※無論、パンツを握りしめて妄想していた匠も悪いのですが・・・。

灯里を起こしにいけと指示されて起こしに行ったら、やっぱり変態呼ばわり。
挙げ句「事故は仕方ないが続くようなら分かりますね?」と脅迫される始末。
指示されたことを履行してなんで変態のレッテルを張られた上に脅迫されるの?

こんな理不尽な事はないんじゃ?

そんな、マイナスを感じたのにも関わらず、クリア後の感想は「ああ、面白かった」です。

物語が進行していくに従って茅明も伊角も実は”いい人”だった事が分かって行くのも不快感を打ち消すのに
良かったのかもしれません。

以下、個別感想(ネタバレ有り、ご注意下さい)





















■兼元 灯里√

Hシーンは大盤振る舞い?の4つ。
キャラゲーとしては多い方なのかな?

シナリオは単純に面白かった。
お嬢様との恋、ということで見合い話等、テンプレ通りの展開ではありますが非常に丁寧に
描いているので最後まで飽きずに楽しめました。

見所はやはり、父親(伊角)への交際報告でしょうか。

不覚にもこの伊角との直接対決と病院での最後のやり取りを見たときには少しだけウルっと泣いて
しまいました。

こういう何というか親が子を思う心情や子が親を思う心情にとても弱いな、俺。

ただ、残念だったのは個別に入ってから他のヒロイン+虎鉄の出番がメッキリと減った事。
その中でも静流は不遇で全く出てこなくなったのは非常に残念。

そして、個人的には大きな見所になる筈だと思っていた仲間に隠し続けてきた嘘を告白するシーン。
結局、中座したまま最終的に語られなかったと言うこと。
※見えない所で語られたのかもしれませんけどね。

また、エンディング後、結局の所、以前の匠の生活はどうなったのか?
元々在籍していた学校はちゃんと卒業したのか?(卒業見込みとはなっていましたが実際にどうなったのか)

あと、疑問というか灯里の心理を描いて欲しかった点として、”弟と同じ顔”を愛した訳ですが
その事に葛藤は無かったのか?というのも私的には思いました。

等々が消化不良気味だったのが残念ではありました。



■正宗 静流√

個人的に神√認定です。そして静流、激しく萌え狂いそうな位に可愛い!
この√だけで評価するなら100点でもいいとマジに思います。

静流の設定から、まさかあんな流れに発展するとは正直、全くの予想外で結末が読めず
本気で時間を忘れて、気が付くとエンディングになってました。
※私と違って感のいい方は読めたかもしれませんが。

特に匠の行動が格好良くて、だけど静流を傷付けてしまってすれ違って、そしてまた近づいていく
流れが激しく私の琴線を刺激しました。

シナリオも大満足だったのですが、何より静流の「たーしゃん」に萌え狂いそうですw

場面転換の部分で2カ所ほど、もう少し描写が必要だろ?と思わないでもありませんでしたが
久しぶりに満足感が得られるシナリオでこの√だけでこのソフトを買って良かったと
思います。

いや「たーしゃん」いいですよ、ほんとに。
大事な事なのでもう一回いいますね。
「たーしゃん」です、「たーしゃん」コレ、やばいww

※灯里√とは違って泣き要素はありませんでした。



■月山 瀬奈√

瀬奈の立場的にもの凄く大きな山場は無い物の丁寧に作り込んで、何気ないながらも
面白いシナリオとして成立している√。

個人的にはこの√は匠の優しさや格好良さが際だっていると思います。
その代表的なイベントがコレ。

瀬奈が叔母からの電話で弱っている時、夜中に匠の部屋に来て抱きしめてもらうイベント。
これ、すごく良かったです。

匠の気持ちすっごくよく分かるんですよね。
瀬奈を安心させるために優しく話をして、安心してやっと寝た後にボソッと呟いたこの台詞。

「で、どうするよ、これ」
「こんなに、ふわふわで温かい身体を一晩中?ずっと抱きしめんの?」

この匠の気持ちというか強がりというか、すごく格好いいと思いました。

女の子の前でここぞという時に格好つけなきゃ行けない場面ってありますよね。
自分の感情を捨ててでも何せ全力で格好をつける。

まさにこのシーンはそういった場面で匠という主人公が凄く好きになりました。

最後のプチ家出騒動も良かったですし、婚姻届もすごく良かった。

瀬奈がみんなに愛されているのも、みんなを大事に思っているのも良く伝わるまさに瀬奈の為の
お話、でした。

※良い話ではあったと思いますが灯里・静流√の出来が良すぎて少し、低くみられてしまうかも
知れないですね。



■国広 ひなた√

年下キャラってどうしてピンクの髪の毛がデフォルトなんですかね?
・・・関係無い話は置いておいて。

個人的にピンクヘッドは余り良い印象ではありません。
希にシナリオが非常に良い作品もあり、侮れない存在ではありますが、脳内に苦手意識が
はびこっており、大体どんなゲームでも敬遠しがちなキャラ位置だったりします。

本作では、残念ながら自分の苦手意識が正解だという残念な感じです。
ひなた自体はCVのうまさも手伝ってか、良いヒロインだとは思います。

しかし、シナリオの流れが良くない。

匠が朱里の替え玉をしている事は本ゲームではトップシークレットの扱いです。
その最大の秘密がバレそうになっているのに、お互いが自制をせず、楽な方向へと逃げていく
行動パターンは正直、かなり気に入りません。

特にひなたも匠もお互いを意識しはじめ、何を話して良いか分からなくなったひなたが匠を
裂け始め、ギグシャクしたのを解決しようとデートをする話。

ひなたの提案で、匠は昔の制服を着て町中をうろつくわけですが・・・。

コレってダウトじゃないですか?
少なくとも真琴と麻夜は当日、ひなたと”朱里”がデートに出かけると知っている訳です。

”偶然”町中で出会ったときに、正体余裕でばれてしまいますよね。

そしてひなたも事情を知っていて、ばれることがどういう事になるかも分かっているはずなのに
何度も何度も「先輩」を連呼しますね。

シナリオ上の演出だと思うんですが、正直気に入りません。

「ばれないために最前を尽くす」が匠の決意じゃなかったんじゃないんですか?
朱里を心の底からバックアップしてやる!って決意したんじゃないのか?

元々、期間が決まっているんです、それも非常に短い期間です。
その間くらい、ひなたにきちんと説明して接触しないようにしなさいよ。

影武者になるって決めたのなら、それくらい覚悟しろよ。

旨い物くって、寝心地のいいベッドで毎日寝て、それで日給2万だ。
しかも自分で、朱里をサポートするって決意したんだ、イヤイヤやっているわけじゃない。

もっともバレてからの友人の態度も正直、ガッカリでしたが。
そもそも兼元家がバックアップしていなければ成り立たない入れ替わり劇です。
兼元家内部の事で匠が説明をする事が出来ない状況位、六麓学院に通う程の才媛者でしたら
予想が付きそうな物ですし、匠を本当に友人と思っているなら、もう少し深く状況を考えると
思います。なのに、あの態度。

友人って言うのは口だけなんですね、分かります。

個人的な主観だけ言えば、正直言って匠が提案した朱里が病院に戻ったことにして、匠は
二度とみんなの前に現れない、と言う方がスッキリしますね。

そして更にひなた。
真琴と麻夜にあっさりとあれだけ匠が話さなかった事情をばらしてますよね。
これって私から見るとかなり重度の裏切り行為だと思うんですけどね。

まだ、あります。
つきあい始めてからのひなたの態度、何度言っても事の重要性を理解していない。
学園の中で平気でイチャイチャしようとし、キスをせがんだり。

”ばれたらいけない”と言いつつ全く意識していない。

ぶっちゃけ、ライターは”話を作る上”だけで都合良く友人を怒らせたり、仲良くさせたりと
してるだけのように見えて、シナリオを全く楽しめませんでした。

※エンディングで出てくる「のどか」見た目の歳からすると赤ちゃん言葉はどう考えてもおかしいぞ。
※このシナリオ書いたの誰でしょうかね?さいろー氏では無いと思うんですが・・・。



■長光 麻夜√

麻夜、むっちゃ可愛いです。
シナリオも凄く重厚で任侠の親を持つ娘との恋愛がテーマなだけにある程度、結末が想像出来るかな?と
思ってシナリオを開始しましたが、甘かった。

想像したイベントは確かにありましたが、そこに至るまでのプロセスが素晴らしかった。
麻夜の友達への複雑な想い、朱里(匠)への恋心への戸惑い、お互いが隠していた秘密の告白。

段階的にきちんとストーリーが進んでいき、予定調和な結末に収まる。

多少、いいの?それでと思う部分が無いわけではありませんでしたが、サラっと流せないでもない
程度でしたので、特に突っ込む必要はないかもしれませんね。


■安綱 蛍√

正直、ビックリしました。
先生の√があったとは・・・。Hシーンは1つだけですが。

話は随分と中途半端に終わりますしエピローグも無いのですが、一応正規√と言えるんだと思います。

実は、学院で下着ドロの犯人疑惑の時に流れた噂。

この噂が流れた時にこんな事を想っていました。

面談で匠がシロと分かっているのに、その面談の為に学園長が呼び出ししたことが原因で噂が
広がっているのに何故、学校側は何もフォローを入れないのかも不思議でした。

仮にも兼元家の御曹司がそんな噂に巻き込まれているんです。
事実かどうか判断付かないのならいざ知らず、分かっていて手を打たないというのは作中で
説明のあった六麓学院という一流学院が取る対応では無いですよね、と。

しかし、蛍√?で、完璧では無いにせよその疑問が払拭されてちょっとホッとしました。

ああ、きちんと考えていたんだ、と。

CVがみるさんだし、結構好きなキャラでしたので中途半端とはいえ専用√があるのは嬉しい限りですが
どうせなら、もう少しきちんと最後まで書いて欲しかったなあ・・・。




■総 括

ひなた√だけ、個人的には残念でしたがかなりの上質なキャラゲーだと思います。
2010年を締めくくるに相応しい作品だと思います。

シナリオもそれぞれのヒロインの設定を上手く生かしたイベントをいいタイミングで挿入し、√毎の
差を明確にしており”飽きさせない”演出を全√に組み込んでいたのが非常に好感触。
また、共通√も含めてかなり丁寧に作り込んでおり、他のブランドもこの丁寧さは見習って欲しい所です。

そして何よりも本作がここまで評価出来る作品になったのは、主人公である藤島匠の存在でしょう。

すごく気持ちの良い主人公で、なんと言うんでしょう。
見ていて凄く安心出来るんですよね。

そして何よりも、影武者を引き受けた理由が素晴らしい。

   ”朱里を助けてやりたかった”

無論、破格の給与も理由の一つでしょう、本人もそう明言していますしね。
けど、朱里を助けたいという理由は今までの主人公に無い思考でこういった事をさらっと言える匠という存在が
我々プレイヤーとゲームの世界を一気に身近に感じられる大きなファクターになったのは間違い無いと思います。

余談ではありますが、ひなた√の感想で、私はこう書きました。

>「ばれないために最前を尽くす」が匠の決意じゃなかったんじゃないんですか?
>朱里を心の底からバックアップしてやる!って決意したんじゃないのか?

匠が”朱里を助けてやりたかった”という想い。
これが私の中では、かなり気に入っていて、匠はこうじゃなきゃ!と思っていた所でひなた√の有様でしたから
何となく裏切られた気持ちになってしまった気がして酷評になってしまった部分があります。

なお、ゲームの難易度としては選択肢自体はそこそこありますが、狙った個別に入るのはそれ程難しくは無いと
思われ過去にいくつもエロゲーをクリアしてきた方なら、攻略サイトは必要無いでしょう。

普通のセレブ物とちょっと違う設定が心配ではありましたが、いい意味で裏切られたと作品になりました。
まじでお奨めの作品です。


※システム周りが非常に秀逸。前の選択肢に戻れるのは本当に便利ですね!
※本当は100点付けようか迷いましたが、ひなた√がどうしても納得出来ず、5点マイナス。