【全√クリア】【感想修正・追記】”大事な人を守りたい”と言う気持ちが良く伝わってきました。個人的には「MagusTale」よりも好きです。
私の好みで言うと「MagusTale」よりも本作の方が好きかもしれません。
神様が出てくるというある種、大仰な設定の割にストーリー展開はシンプルで「大事な人を守りたい」
という恋愛物では根本的な部分を大事にしている作品だと思いました。
その想い、そのものがストーリーの要になっているので、例えば巨悪が現れて世界を守ろう、そして大事な人も
一緒に守ろうとかいう大仰な展開が主の作品ではありません。
「涼風のメルト」という作品の根っこにあるのは「純粋な好意」であり「絆」だと思います。
一つの√だけでは伏線の回収が全部は終わらないので、今作をプレイされる方には是非、全√のクリアを
してもらいたい、と思います。
※佳華の性格は苛立ちを覚える方が多いかもしれません。不快感を少しでも味わいたくない方は今作自体を
やらない方がいいかと思います。
また、個別√をクリアするとタイトル画面に「絆語り」という新たな話が出てきます。
クリアしたヒロインに対する過去の物語を楽しむ事が出来ます。
”伝承”を書物で調べたり、口伝で聞いたりする展開では無く、その時代を精一杯に生きた人々の”ドラマ”を
見せてくれる事で多くの伏線を回収し、よりヒロインに感情移入する役目を果たしており、上手い演出だったなと
心から思います。
以下、個別感想です(ネタバレ有り、注意してください)
■捺菜√+絆語り(奈津編)
「巫女」に選ばれた主人公、彰人の幼馴染み。
余り詳しく物語の設定を読まずにプレイしはじめたので「巫女」がどういう物なのか分かっていませんでした。
「巫女」のこれから、を知った時はかなりショックで、内心かなりイヤなドロっとした物を感じました。
何故、巫女になる事を断る事も出来たのに、彼女は巫女になる事を選んだのか。
何故、彼女はずっと一緒だった、大事な人の筈の彰人を置いて行ってしまうのか。
この謎がずっと心に引っかかったまま、ストーリーを追いかけて行きましたが、その理由が分かった時に、
プレイ中、ずっと心に引っかかっていた、捺菜と離ればなれになってしまうと言う何とも耐え難い思いは
消え失せました。
そして、腑に落ちたと同時に少し悲しくもありました。
そしてもう一人の捺菜とも言える奈津の物語。
彼女は本当に強い。心が誰よりも強い。
きっと彼女は明人に純粋な好意を持っていたのでしょう、しかし聡い彼女の事ですから恵の想いにも
気が付いていたのでしょうね。
死の間際、彼女はきっと明人の元に返るのかな?と思ってもいましたが、あれはあれで良かったのかも
しれませんね、遠い未来に自分と同じ悩みを持つ捺菜を助けるために、その最後の力を使い果たした彼女。
そして、最終的に捺菜と彰人を救い、昇華していった彼女。
すごく好きなヒロインでした。
また、エンディングでの土地神様の粋な計らいは、本当に良かったです。
ご都合主義?いえいえ、それでいいんです。
本当の意味では大団円では無いのでしょうが、きっと彰人と捺菜は幸せに人生を全うしていくことでしょう。
※関係ありませんが学園でも評判のアイドル的存在、と紹介されていますが、実際に学園内で彼女をそういう風に
見ている他人の視点的な表現はありませんので、その辺が少し残念に思いました。
■月音√+絆語り
ショコラに泣いた、ひたすら泣いた。
月音√はまさにショコラに始まり、ショコラに終わる。そんな物語でした。
最後に彰人がつぶやいた「相棒」この言葉こそ、ショコラにとって最高の贈り物だったことでしょう。
今作で精霊は何体?か出てきましたが、個人的にはショコラがダントツで私は好きでした。
何というか、憎めないんですよね。
月音を幸せにしたい、月音を好きで好きで堪らない。
だからこそ、泣けるんですよ・・・。ありがとうショコラ・・・。
さて、肝心の月音√自体ですがしっくり来ない部分も結構ありました。
森の開発についても結局の所、決着はついた訳ではありませんし、何よりもエンディングの後、森が
どうなっているのかがイマイチ不明です。
公園になっている位ですので、あの場所に”人の手が入った”のは間違い無いんだと思いますが
それがどの程度の規模で入ったのか、また開発計画がその後どうなったのか?が全く分からないんですよね。
私が残念に思うのは、この事柄は捺菜との約束に直結する大事な話だからです。
捺菜は森に入る最後の言葉として彰人に言いました「誰の為でも無く、私の為だけに森を守って」、と。
結局、森の開発自体は(今のところ)月音の父親に掛かっている訳ですから、彼の気持ちが変わらない事には
捺菜との約束は果たせない訳です。
ほんの一文だけで良かった。
テキストだけのエピローグだけで良かったので、開発が中止になった、という表現が欲しかったなあ・・・。
そうそう、月音への告白シーンは個人的にかなりツボでした。
ああいった告白は素晴らしいよね、ちょっと恥ずかしいけどw
■佳華+絆語り(恵編)
佳華・・・何というか、短慮過ぎてイライラしました。
「ダメだ」と言われているのに、何度も何度もやろうとする、理由をきちんと説明し、一度は納得してるのに
何度も繰り返す短絡さは、やってて辟易しました。
また、玲於奈に尾行をされていると分かっているのにも関わらず、禁則地へ行こうとする行動も呆れるばかり。
自分達が困る、のなら問題はありませんが、土地神様や捺菜に迷惑を掛けるかもしれないという事を全く
考慮しない考え方には反吐が出ます。
それらの全てが”自分の興味を満たすため”に行動しているから、なおさら苛立ちます。
・・・と思っていました、クリアする前までは。
恐らく多くのプレイヤーはそう感じたのでは無いでしょうか。
確かに、苛立ちます、それはもうかなり苛立ちます。
ただ、クリアした今思うのはこの√は”佳華の成長”と言う意味合いも描きたかったような気がしたのです。
成長を描く、そういう意味合いならば、あの佳華の苛立つ行動も実は必要だった事なのかもしれません。
佳華√には他の√で登場しないゲストで玲於奈というキャラが出てきます。
この玲於奈と言うキャラは一見、好意的に見えるも自分の知識欲を満たす為なら”何でもやる”女性です。
人を殺す事でも必要ならば彼女はきっとやるでしょう。
そう、言うならば佳華のスケールアップ版です。ちょっと違うのは佳華は人間としての道徳迄は欠如していない
という事でしょうか。
そんな玲於奈という人格を見ていく佳華はちょっとずつ成長していきます。
自分が目指していた物は何だったのか、と言うことに気が付いて行くのです。
そういった彼女の成長を見ていくうちに、ちょっとずつ佳華というヒロインの暴走?も許容出来るようになっていきました。
そして何よりも決定的だったのは「絆語り」でした。
「奈津編」で登場した恵がまさか出てくるとは思ってはいなかったので、実はかなりビックリしました。
恵の物語は確かに悲恋でしたが、最後の最後に自らの命を賭けて行動した彼女は心底格好いいと思いました。
そういった恵の想いを知った後に佳華を見ると不思議と当初感じていた彼女への負の感情が無くなっているんですよね。
勿論、恵=佳華では無いのですが・・・。
きっとそれでも佳華が苦手、気に入らない、そういう方は多いと思います。
人それぞれ感じ方が違いますから、最後まで見ても、私のように佳華の行動が気にならなくなったりならないかも
しれません。
けど、出来るなら最後(絆語り)まで付き合ってあげてほしいなあ、と思いました。
■羽衣√+絆語り
疑問は残りましたが、概ね好きな結末を迎えてくれたので満足です。
なによりも、みるさん大好きなのでそこも羽衣√の満足度に大きく貢献してると思われます。
羽衣のような年下の妹タイプのヒロインにみるさんの甘え声はピッタリですよね。
最近だと、ましろのアンジェとか置き場のシャノンとか、ハマリ役が多くて嬉しい限りです。
さて、文頭に書いた疑問点ですが、そもそも優衣の患っていた病気ってなんだったんだろう?です。
「謎の病気」っぽい描写でしたよね。
そして、どうして、優衣から羽衣へ移ったのでしょうか。
作中では”強く願ったから”とありました。
じゃあ、何に願ったの?誰がその願いを叶えたの?
少なくとも作中にそれを叶える事が出来そうな存在は土地神しかあり得ません。
しかし、土地神は知らないと言う。
最終的には神具の力で病気を祓って大団円、という訳ですがなんか解せない気持ちです。
また、インフェルが昇華しました。
インフェル(初)の遺した想いってなんだったんでしょう?
羽衣と彰人が”二人”で一緒にこれからの事を乗り越えて行こうという決意がトリガー?
けど、TIPSの初の欄にはこう書いてあります。
”初は医術でも呪術でも治せないような病を癒す精霊になることを旅の途中で望むようになった。”
インフェルが昇華したシーンにこの初の想いを完遂したような描写は無かったように思います。
この辺の疑問がきちんと回収されていたら、もっと好印象な√だったと思うんですけどね。
■神語り
一番、世界観的に大団円な結末を迎えるこの√。
ここまでの4ルートを楽しむ事が出来た人には間違いなく楽しめるストーリーだと思います。
土地神様、すなわち涼も無茶苦茶可愛いですしね。
ここまでで、至る所に散らばっていた伏線がこの√で次々に明かされています。
月音とショコラが何故、土地神様に会ったときに怯えていたのか、とか・・ね。
話がそこそこ大きくなってきてましたので色々と最後の方は、俗に言うご都合的な感じでは
ありますが、それでも個人的にはすごく楽しめました。
ラストの禁足地との別れ、懐かしい面々との別れ。
奈津が旅立つ時に明人は言いました。私たちは家族だ、と。
家族だから彼らの魂は、大事な家族の一員である涼を見守り続けてきたのでしょう。
そして、トロゾーもそんな家族の一員だったのかもしれません。
涼の幸せをずっと、気の遠くなるほど長い時間、願ってきた心優しい神獣。
ショコラの離別の時と並んで、うるっと来ました。
願わくば、残りの人生が彼ら全員にとって素晴らしい物になることを祈ります。
■総 括。
個人的には本編よりも「絆語り」の方が好きだったかもしれません。
ただ、絆語りを一通り見終わってふと疑問が起こりました。
奈津はボンタに、恵はごまちゃんに、そして初はインフェルにそれぞれ転生をしました。
そして明人は恐らく彰人の祖となる人物だったと状況から思われます、と言うか私は思ってました。
しかし「神官の家系」と言う意味では明人でも恵でもどちらでも祖となり得ますが、どちらも結婚をしたような
描写はなく、子を成すこと無く逝ったとように思われます。
と、なると神官の系譜ってどうやって継がれていったんでしょうか?
ボンタ、ごまちゃん、インフェルの行動から彰人に一定以上の親愛の情を持っていたように見受けられます。
これは彰人が明人の遺伝子というか、意志というかを精霊達が感じていたように私は思います。
明人も恵も子を成していない以上、彰人は別の神官の系譜なのか?
明人がインフェルを神具に封じた時にもう旅をする体力が無い、と言っていました。
そして、現代に残る伝承として神官が神具を持って旅をしたと言う記述が残っていますから別の神官が
いた可能性が強いとは思うのですが、なんとなくスッキリとしないんですよね。
実際はどうなんでしょうね。
そして本編でも疑問が一つ。
捺菜が巫女を引き受けた最大の理由、それは自分の命を賭けて彰人の呪いを解く為の儀式を執り行う事。
捺菜√では彰人が飛び込んだ事で捺菜は死なないで済みます。
しかし、他のヒロインの√ではどうだったんでしょうか?
捺菜の目的は彰人が他のヒロインを選んだ場合でも一向にぶれません。
ぶれないからこそ、禁則地へと入っていくわけですよね。
そして、他のヒロイン√でも彰人の体調不良は起こっている描写がありました。
捺菜√以外で、彰人の呪いは解けたのでしょうか?
解けたとしたら、捺菜はどうなったのでしょうか。
もの凄く気になります。
更に神語りでも軽く疑問。
最終的に「言霊」の力はどうなったんでしょうか??
消滅?それとも彰人の中に残った?
どうなんでしょうね?
そんな疑問もありますが、個人的には大満足な作品でした。
今後のWhirlpoolに期待、大です。