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sayuraさんのノーブレスオブリージュの長文感想

ユーザー
sayura
ゲーム
ノーブレスオブリージュ
ブランド
CLOCKUP
得点
88
参照数
5235

一言コメント

【全√クリア】【大幅修正・追記】予想していたのと大分違っていた、良い意味で裏切られもしたし、残念だったところもある。しかし、個人的にはかなり満足度高い作品でした。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

まず、前提としてこの作品は正統派のストーリー重視型の作品だと私は思います。
「メイド物」=ご主人様、尽くします~的な、まずはご奉仕ありき作品では無いのです。

メイドをターゲットにした作品は数多く有りますが大半がメイドにHなご奉仕をされるのが
目的だったり、ヒロインを騙してメイドにして陵辱したり、そんなのが多いような気がしますが
本作は、物語の中にメイド有り、という感じですごく新鮮です。

私の個人的な好みで言えば、「かなり当たり」な作品でした。

本作を気に入った要因として

・ストーリー性重視
・キャストが豪華
・遊莉亜と依莉沙が非常に魅力的

という3点でしょうか。

特に二人のメイドサーヴァントが無茶苦茶に魅力的でキャストも豪華ですが
作中の彼女らのイメージはまさに”双璧”という言葉がぴったりと思える程、存在が際だっています。

プレイ前の二人の印象は遊莉亜は見た目のイメージ通りだろうと思っていましたが依莉沙を
図りかねていました。

服装も黒ですし、どっちかというと色物キャラで遊莉亜の引き立て役かな?とか、物語が進んでいくと
裏切って敵に回るとか、そんなイメージでした。

けど、蓋を開けてみると陳腐な言い方かもしれませんが依莉沙もきっちりと「正義の味方」だったんですよね。

オープニングから彼女が登場するのですが、その存在感があまりに強烈で、、、そして魅力的なキャラで
事前に持っていた負のイメージはすっかり失せ、かなりのお気に入りヒロインになってしまいました。

そして、ヒロインの魅力だけに頼るのではなく、前述したとおり「メイド=ご奉仕」というエロを目的とした
展開ではなく物語を読ませる作品だった、ということに非常に好感を覚えました。

どのシナリオも後半部分の展開は少し駆け足気味だと思いましたが、一気に読ませる魅力があると思います。

※私は単純なので本作を非常に満足しておりますが、ある意味ご都合な展開ですから、不満足な人もいるかと思います。
あくまでも私の個人的な思いとして捉えてください。


■完全に蛇足な話。

ちなみに私が本作のレビューを最初にUPしたのは「2010-04-24」です。
この修正版をUPしたのは「2010-08-12」と全√クリアの感想をあげるのに実に約4ヶ月もかかっています。

実は感想を書いた時には「遊莉亜」のみクリアだったのですが「遊莉亜→依莉沙」とメインの二人をクリアした
時点でこの二人を気に入りすぎてしまって、ゆかりと絢奈をプレイする気力が沸かなかった為です。

厳密にはゆかりの途中までは頑張ったのですが、どうにも興が乗らず放置してしまったという経緯があります。

新作のプレイがある程度、終わったので全√クリアしていない作品に手をつけ始めたのですが、この半年という
時間を空けたのは正解でした。

落ち着いた気持ちで再開した結果、ゆかりと絢奈の二人の√も非常に楽しむ事が出来ました。
作品の感想、という訳ではないのでこれを読んでいる方にはお目汚しな文章とは思いますが、時間を空けて
昔の作品をプレイするのって結構いいのかもしれませんね。

以下、個別感想です(ねたばれ有ります、ご注意を)















■遊莉亜√

「白き革新」真のヒロイン。
かわしまりのさん、相変わらず素晴らしい演技でした。

容姿からのイメージ通りでしたが、それに加え芯の通った強さを胸に秘めた所がすごく魅力的なヒロインでした。

エロゲでは知らないうちに付き合ったり、え?何時の間に好きになったの?みたいな感じで強引にエロ方向へ持って行こうと
する作品が多い中ので、煌司と遊莉亜との付き合い方はベタな展開ながら個人的には満足することが出来たのは良かったです。

ストーリー自体は物語の核心に一番踏み込んだ内容で、後述するゆかり√と二つで全ての姿が浮かんでくる作りです。
何故、二人のSランクメイドが煌司に仕えるようになったのか、等が明かされます。

NOの目的も明らかになりますしね。

黒マントを倒した後の最後の台詞。「第三フェーズに突入した」は明らかに次回へ続く、的な終わり方で
1stレビュー時には全√をクリアすると後日エピソードが出てくる物だとばかり思っていましたのでそのように
なるんじゃない?と書きましたが結果的に大嘘となってしまいました。

まるで、打ち切りになった週刊漫画のような扱いで正直ガッカリ感は拭えません。
出来るなら、きちんと最後まで描いて欲しかったなあ。




■依莉沙√

「黒き癒し」メインヒロイン。
一色ヒカルさん、いつも通りの演技なんですが、非常に依莉沙に合ってました。

依莉沙の魅力、それは”距離感”でしょうか。
一般的なメイド、という意味合いでは主人を立て、後ろに下がってサポートに徹する。
そんなイメージだと思います、遊莉亜がまさにそんな感じなんですよね。

けど、依莉沙は少し違ってて、確かに主人を立てているんですが、”後ろに下がって”サポートするって
感じじゃないんですよね。

主人の隣で”一緒に”サポートしながら歩いていく、そんなスタイルなんだと思います。
ある種、友達的な感覚というんでしょうか。

この距離感がたまらなく心地よく、そして彼女を身近に感じる事が出来、魅力的に見せて居るんだと思います。

前文でも述べていますが、彼女ほどゲームをやる前とやった後でイメージの変わったヒロインはいません。

シナリオ的な物から遊莉亜に後塵を拝していますが、十分にメインヒロインを名乗れる位に魅力あるヒロインでしょう。

ストーリー的には彼女自身に関わる展開なので遊莉亜と比べると少し、残念な展開だったと思いますし、
”俺の”依莉沙があんな奴の思うがままになっていたかと思うと、かなりザラっとした気持ちになりました。

最終的には大団円?ですので遊莉亜と比べてストレスが無い結末でしたのでそこは良かったのですが
出来るなら本筋に絡ませて欲しかったなあ、とか思います。

「始まりの子」の母親として依莉沙がどんな行動をしたのか、興味があります。




■ゆかり√

なんか所々に「めぞん一刻」っぽい感じを受けました。

・古ぼけたアパートの管理人
・未亡人

まさに、めぞんですよねw

物語的には付き合うまでの葛藤もそれなりに描かれていて、中々好感触でした。
面白いな、と思ったのは、煌司の事を想っているのは分かっていましたが、けじめをつけるため、というか
気持ちの整理の為というか、夫の墓前に煌司への想いを報告する描写があるんですよね。

実際にお墓の場面が出るのではなく、あくまでも”行った”という報告だけですが。

こういった、描写って余り見ないので新鮮に思えたし、プレイヤーである自分も「ゆかり」というヒロインに
対して感情移入が出来るようになりました。

始めてのHも強引な展開では無く「ああ、あるだろうな」と思わせる感じにスムーズに進むし、その後の
二人の葛藤についてもよく表現されていて、すんなりとストーリーが心に入ってきました。

恐らく、過去にメイド・サーヴァントだったんだろうと思っていましたが、メイド姿で登場してきたときは
その容姿、ごまかし方が「おぉ、グレートサイヤマン・・・」と思ったり。




■絢奈√

シナリオ自体は特に特筆すべき部分はありませんでした。
可もなく不可もなく、といった感じ。

ただ、

「二人の妹に紹介して欲しい」

この展開は予想出来ましたし、ズバリその通りになった訳ですが、個人的にはショックを受けました。
そんな安易な道を絢奈が選ぶ、というのが気に入らなかったのです。

妹制度のリスクも説明がありましたが「白き革新」「黒き癒し」この二人はNOの中でもエリート中のエリートな訳で
そんな人達(しかも、一人じゃなく二人の妹)の妹になるなんて言うのは相当の覚悟がいる事だと思っていました。

作中で二人から絢奈に「覚悟が足りない」と言われた時は妙に納得したりしたものです。

珍しくそういった辛口な要素が詰まっている話という意味では評価出来るシナリオだったと思います。

ただ、全体的にイラつく場面も多く、全4√の中では一番悪い出来だと思います。






■総 括

非常に残念だったのは二人の設定で「白き革新」「黒き癒し」という大層な肩書きが
あるのですが、彼女らが始めて主人公とその友人たちの前に現れたときに効果的にその肩書きが
使われなかったのが勿体無く思いました。

なんて言うんでしょう、優越感というかそう言った物をもう少し味わいたかったなあと。


以下、妄想ですが彼女たちの登場シーンがこんなんだったら・・・
=================================================================
亮輔:ぬわわわわわ・・・ゆ、遊莉亜さんっても、もしかして・・・

     (雑誌の表紙を見ながら)

亮輔:あ、あの、、し、白き革新・・・さん・・・なのでは・・・!??

     (ちょっと困惑しながら、大げさな汗を流しながら)

遊莉亜:え、ええ、どうやらそう呼ばれてもいるようですね。

     (煌司の首を絞めながら激しく揺すりつつ)

亮輔:なんで、なんでお前のところに白き革新がくるんだよ!なんで俺じゃなくおまえんとこに!
=================================================================
依莉沙:今日からマスターに使えることになったの、よろしくね

     (呆気にとられながら、じっと依莉沙を見つめる)

亮輔:・・・。

亮輔:え、えーっと、「黒き癒し」??


     (にっこりと微笑みながら)

依莉沙:あら、わたしのことを知っているのね、嬉しいわ

     (亮輔、煌司をキッと睨みながら涙をながしつつ、胸倉をつかんで揺する)

亮輔:な、なんでだよー、なんでお前なんかんとこにSクラスのメイドが二人もくるんだよぉ

     (依莉沙、亮輔を蹴り飛ばす)

依莉沙:私の目の前でマスターに攻撃なんて、容赦しないわ
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こんなやり取りを実は期待していました。
まあ、妄想ですがw

作中ではあくまでも”美人のメイドが来た”程度でしか表現されておらず、分不相応な高嶺の花が
いきなり来たんだ、という部分の表現が無かったんですよね。

これは本当に勿体なかったなあ・・・。

無論、彼女たちは世間的にも認知されている超有名人な訳ですから町を歩くときの通行人とか
からも恨みの視線などを感じる場面が欲しかったですね。


※なんか、かなり「めぞん一刻」を意識してる感じがします。
ゆかり√なんかはゆかりの立場的にも被る部分が多いためか、無茶苦茶「めぞん一刻」の場面が
目に浮かんできました。

ゆかり√のエンディングなんか、まさに「めぞん一刻」の最終回ですよねw
また、宴会時の「ちゃかぽこ、ちゃかぽこ」って一ノ瀬さんですか、あなたたちは!と心の中で突っ込みまくりですw

あと、ナディア分(タイムボカン)も多少、入っていますねw

※余談ですが、会話の最後にやたらと「♪」が入るのは正直うっとおしかった・・・。
シリアスな場面で敵の会話の語尾にも「♪」とか入っていると萎えますね・・・。