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sayuraさんのbitter smile.の長文感想

ユーザー
sayura
ゲーム
bitter smile.
ブランド
戯画
得点
90
参照数
6761

一言コメント

【全√クリア】【感想修正・追記】ねこにゃん頑張ったと思う。もちろん、粗も見えるけど全体的にまとまっていると思う。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

事前の世の中の心配同様、私も「だいじょぶ?」と心配していました。


         シナリオ:ねこにゃん


エロゲー業界では、シナリオのみで勝負している方でも非常にしょんぼりな内容を
平気で我々に提供してくださる有様です。

自分の仕事に胸を張って「どうだ!」と言える方の少ない事、少ない事。

そんな時勢の中、絵師として、世間の評価を受け成功していると言って良いねこにゃんが
いきなり何を思ったのか、シナリオを書くと言い始めた本作「bitter smile.」

先にも書きましたが、シナリオで食べている方々でもユーザーに評価されるのは難しい
世界です。そりゃ、今までに実績も無く、別の部署で著名になっている人が書くと言われれば
誰もが不安に思うでしょう。

実際に購入前に皆さんの評価もそんな感じでしたしね。
じゃあ、実際にこの「bitter smile.」どうでしょう?

まず、本編の感想で無くて申し訳ないのですが、エンドロールを見たときに思いました。
良い意味でも、悪い意味でも本作はねこにゃんは戯画とブランド色に染まっているんだなあ、と。

ねこにゃんシナリオ、というとてつもないインパクトに霞んでしまっていますが、当然ねこにゃん
だけでは当然、良い作品にはなりません。

戯画の完成され尽くした感のあるシステム周り、音楽 etcetc・・・。

そう言った部分に助けられて、本作はなかなかの良作に仕上がったような気がします

無論、良い点ばかりの作品では無く、悪い部分も当然ありました(その辺は後で書きますが)。

本作をプレイして私が良いなと思ったのは、まず”素直”だと言うこと。
王道という言葉を使うべきかと思ったのですが、”素直”と言う方がしっくり来ると思う。

一歩間違えばクドい伏線・展開があったりしましたが、上手く文章をまとめて嫌みな感じに
ならないよう工夫をしている印象を受けました。

この部分についてはデビュー作として考えればすごい事だと思います。

私も相当数のエロゲーをプレイしましたが、ねこにゃんも相当にエロゲーをやり込んでるような
印象を受けました。

多くの経験から、なるべく不快な感じをプレイヤーに与えないよう、与えないように言葉を選び
シナリオを書いていった、そんな気がします。

ただ、初シナリオと言うことで肩を張りすぎたのか比喩的な表現が多くて分かりにくい部分も
目立ちはしましたが、そこは今後の課題、と言うところでしょうか。

さて、良い所ばかりでは無く悪い部分も。
ここから少し辛口です。

戯画の伝統のでしょうか? 主人公・優がイベントによってですが激しく腐ってます。
「さかあがりハリケーン」を私は涼をクリアしただけで放棄しました。
理由は「独りよがりな主人公が気に入らなかった」からです。

本作の主人公も似た傾向を引きずっているように思います。

以下、その例。
-----------------------------------------
・知世翔に対して親が外人とか、思ってても口に出して言わないだろう、しかも何回も。
 余りにTPOをわきまえない言動にかなりイラつきました。

・何にでも中途半端な態度・姿勢な主人公がむかつく、特に要√のマラソンイベントは最悪。

・制服泥棒事件の時、突進してくる犯人から逃げる→追いかける→転ける。そのあげく
 女の子に追跡させて「すまない、任す」って。男としての矜恃はないのか!?
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私は主人公ってゲーム内での自分の分身だといつも思ってゲームをプレイしています。
自分がイラっと思うことを自分の分身がやっているのを見るのって苦痛以外何も有りませんよね?

「さかあがりハリケーン」と違って個別では悪い言動・行動は無くなり良いイメージで進んでいく
ので我慢出来ましたが、作品の雰囲気をもっと考えて欲しかった、と思います。

※それでも桜子ルートの主人公はむかつきましたけどね。まあ、代価を払うことになるので納得は
しましたけど。

なお、主人公の友人?ポジションの小林君、彼は何のために配置されていたキャラなのでしょうね?
いなくても無問題だったような気がひしひしとします。

以下、個別感想(ネタバレ有りですのでご注意を)

























■要√

年上お姉さんというだけで私の好みど真ん中な要。
ちゃらんぽらんな感じだけど、実は色々考えている、ということでかなり好きなヒロインです。

年上のお姉さんの王道展開であるお見合いをキーにじりじりと距離を縮めていく様が
心地よかったです。

付き合い始めてからのラブラブ展開は甘すぎず、短すぎずで良いバランスだったと思います。

最後の妊娠騒動は、あの展開でも良かったとは思いますが、どうせなら本当に妊娠してた方が
良かったような気もします。

まあ、梅干しの伏線が事前にあったので、ああ、やっぱりか、とは思いましたけどね。

ちなみに意外と”家族”とか”家庭”という言葉が似合いそうですよね、要さんには。



■みい√

不思議系?な彼女ですが、ちょっと他のゲームの不思議ちゃんと違ってて実にいい味を出しています。
いつもの私のパターンだと余り好きなポジションのヒロインでは無かったのですが、すんなりと
惚れる事が出来ました。

付き合うまでの彼女の葛藤、好きだけどついつい言えなくていつも通りからかってしまう。
それが空回りし、結果的に傷つく彼女。

告白のシーンは非常に「彼女らしくて」個人的には凄く好きな感じでした。

付き合い始めてからの、みいが感じていた不満は予想出来たのですが、優の感じてた事に気がつくのが
少し遅くてはっと気がついた時には結構「やるな、ねこにゃん」と思いました。

橋の下でのお互いの気持ちを告白する場面は本作の中でも恐らくトップクラスのいいイベントだと
思います。

エンディングでの彼女の小悪魔ぶりも非常に彼女らしく、最後までいい余韻のままで終わることが
出来たシナリオでした。

通い妻、大歓迎ですよ!



■勇樹√

中々、重い話で展開が二転三転としながら進むので、最後まで緊張感を持って楽しめました、、、、が。
この√は正直いって未完成だと思います。

投げっぱなしの伏線があります(これを書いてる時点では桜子√未クリアなので、そこで回収になってるかも?)

勇樹のイトコの存在、そして夏祭で知世翔のとこのチンピラ風会社員から勇樹が逃げ回っていた理由。
これが全くの投げっぱなしで、訳分かりません。

何時絡むんだ、とわくわくしながら読み進めていたのに、結局全くふれられずに終わってしまった。

前述しましたが展開が二転三転とするので、ねこにゃん忘れちゃった?この伏線・・・。と思ったり。

本筋のシナリオ部分、勇樹の気持ち・考え方は分からないでは無いのですが、どうも強引すぎた感が
否めず、少し失敗だった気がします。

ただ、最後の優の頑張りは見ていてかなり気持ちが良かったですね。

あとエンディング。

あそこまで見せるなら、きちんと結婚式までやるべきだろう?と思ったりしました。


■桜子√

中の人の声がもの凄く合っていると思いました、桜子。
ちょっと鼻に詰まったような声が思い切りツボです。

そんな、ツボなヒロインだけに一番最後にクリア。
いつもなら勇樹が一番最後に回るんだけどなあ・・・。

シナリオ的には満足・・・のような不満足・・・のような・・・。

記憶、最後に戻っても良かったんじゃないの?
優もそうでしたでしょうが、プレイしている我々も記憶をなくした彼女を見るのは寂しかったですよ。

しかも我々はあくまでも傍観者ですから、優達のように彼女の側にいて寂しさを埋める事も出来ません。

最後の最後くらい、感情移入をしてきた彼女に再会させて欲しかったなあ。




■総括のような物

個別が短いような気がしないでも無いですが「シナリオ:ねこにゃん」デビュー作としては
上々の出来だと思います。

今後の活躍が素直に楽しみです。

次回作がもしあるなら、きっと買うでしょう。

願わくば、今作のような「素直」な作品を作り続けて欲しいなあ、と思います。



※あ、そうそう四季折々の服装がきちんとあるのは非常に良かったです。