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sayuraさんのるいは智を呼ぶファンディスク -明日のむこうに視える風-の長文感想

ユーザー
sayura
ゲーム
るいは智を呼ぶファンディスク -明日のむこうに視える風-
ブランド
暁WORKS
得点
90
参照数
4137

一言コメント

【全√クリア】【感想修正・追記】正しく「るい智」という系譜を引き継いだファンディスク。本編に無かったヒロインの純然たる個別√なので本編スキーな方には堪らない内容だと思われる。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

評点修正85→90

本当にファンディスクらしい、ファンディスク。
ハッピーエンドばかりでは無いが、これも一つの物語だと思う。

本編でも感じた事ですが、相手の事を気遣わない行動原理には相変わらず「んー・・・」と思ってしまう部分は
ありますが、概ね満足感を得られる内容でした。

新規で追加された智ちんボイス。佐本二厘様の声は想像通りによく合っていて違和感を全く感じませんでした。
声が追加された事により、一段と智ちんが男に見えなくなり、やばい感じですw

伊代のCV変更ですが、小手島ひばりさんは確かに頑張っていると思うんですが、どうにも水鏡さんよりも
声質が高いため、違和感を感じてしまいました。

まあ、最後の方は慣れてきたので違和感感じなくなってきますが。
声優廃業と言うことですので仕方ない事ではありますが、やはり残念ではあります。

本作の流れとしては、シナリオを進めて行くと新たな章が解放されていくストーリーで基本は一本道です。
一章は宮和、二章は尹 央輝、三章は才野原 惠、四章は・・・といった感じで進んでいきます。

それプラス断章のような感じでサイドストーリーが挟まれ猫島イベントや怪しげなドリンクイベントが
存在しボリューム的には十分な内容だと思います。


以下、個別感想(若干のネタバレ有り)













■第一章:宮和√

何というか、本編で完全なる脇役だったために攻略対象になりましたよ、と言われても違和感の方を
強く感じてしまいます。

本作でやっと性格付けや細かい描写がなされていて宮の人なりが分かってきましたが、やはり呪いを
持っていないヒロインということで少しメンバーとのやり取りに遠慮が見え、物足りなさを感じました。

ああ、そうそう宮ってお嬢様だったのですね、ちょいビックリです。

個人的にはこの√は宮よりも央輝の方が可愛かったw
ラストイベントの際の尹の顔と服装は犯罪級でしょう、照れた顔の央輝の顔はむちゃくちゃ可愛かったですw

ちょっと惚れちゃいました。


■第二章:央輝√

一匹狼な央輝がどうやって智に心を許すんだ?とか思っていましたが、餌付けですかw
予想を遙かに斜めに行く展開が却って自然に見えて、個人的には好印象です。

本編では余り多く語られなかった央輝の背後関係・過去の話がきちんと説明されていくため、それなりの
尺が有り、読み応えのある√だと思います。

智に心を許していく央輝の様子が上手く表現されていて「借りを作りたくない」と言いながらも同盟の仲間に
なっていく様子は本編を見ていたときに願っても叶わなかった展開だけに、感無量な感じです。

Hシーンで央輝ってやっぱり女の子なんだね!って納得しつつ、エンディングでの笑顔も非常に良く大満足な
シナリオでした。

ただ、あやめ先生が残念でしたね。
結構いいキャラになりそうだったんですが。



■第三章:才野原 惠√

潔い結末というか、開き直った結末というか、あまりの重いラストに衝撃を受けました。
彼女の「才能」を考えると、必然な展開だったのかもしれません。

プレイ中に日野氏はどんな、どんでん返しを見せてくれるんだろう、どんなトリックで大団円となるんだろう
と期待を込めてプレイしていました。

私にはどう考えても、あの状況をひっくり返す方法が思いつかなかった。
更に三宅が絡んできた所から更に問題は複雑になってきており、収集が効かなくなってきてました。
提示されたエンディング以外では収集付かなかったんだと思います。

あの結末は大凡、今までの「るい智」では考えられない結末だけに自分の中では気持ちの整理が付かず
正直、鬱な気分で一杯です。

あの確かに結末は予想出来ました。だからこそ、プレイ中に私は日野氏に良い意味で裏切って欲しかったのですが・・・。

いずるが登場した時に「呪いを解く方法は一つじゃない」という言葉を残していただけにあの結末でしか
描けなかった日野氏に恨み節を言いたくなります。



■第四章:タブン 和久津 真耶√

壊れてしまった真耶、壊れてもひたすらに求めた物は智の幸せ。
酷く歪んでいたけれど、智を想う気持ちは本物だったと思う。

FDが出来ると言う事で正直言って、幸せにしてあげたかった真耶という女性。

未来予知という人智を越えた力<呪い※能力では無く敢えて呪い>を持ってしまったが故に
壊れてしまった彼女自身と彼女の未来。

最後の膝枕こそ、彼女が今まで生きてきた人生で一番幸せで彼女が望んでいた幸せだったんだと思う。

個人的には幸せになってもらいたかったヒロインなので残念無念と言うところ。



■総括

るい智ファンの方には多分、良いFDだろうと思います。

ファンディスクにありがちな、値段だけ高くて中身は薄い、という感じでもなく、それなりの
ボリュームで本編の内容を補完する物語が収録されているという点でも評価出来ます。

甘い世界だけが真実じゃない、現実って辛くもあるんだよ。
そんな、メッセージが伝わってくるお話でした。

本編が好きだった方は、是非、購入して下さい。損はしないと思います。