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sayuraさんのフェイクアズール・アーコロジーの長文感想

ユーザー
sayura
ゲーム
フェイクアズール・アーコロジー
ブランド
あっぷりけ -妹-
得点
96
参照数
1335

一言コメント

【ネタバレ有り】思っていた感じでは無かったけれど、凄く面白かった。派手さは無いけど堅実な作りが好ましい作品。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

■積みゲー消化。

”凄く面白かった!”

先ずクリアして思った感想です。
素直に積んでいたことを本気で後悔しました。

物語は「あっぷりけ」というか「あかべえ」のノリに近い作品だと思います。
※まあ、姉妹ブランドなので当然似てるのは当たり前なんでしょうが。

「あかべえ」系の良い部分が全面に出ている作品で、ノリと言い、物語の見せ方と言い、あかべえブランドで
出しても良かった気がします。

初めて今作を知ったとき、OHPのストーリーを見て、空から金髪少女が落ちてきた?
ラピュタ??ウイングマン??等と勝手に世界観を誤解してしまい、全く違う物語を想像して
おりました。

こんなSFチックな物語とは全く思っていなかったのです、最初に理解していれば新品で購入し
もっと早くクリアしていた思うんですが、何とも間抜けでした・・・トホホ

何せ、登場人物が脇役も含めて実に魅力的で、物語の骨組みも、しっかりしている。

ただ、無論良い点ばかりではなく残念な部分も見られました。
共通√と個別√の整合性の部分です。

例えば春子個別イベントで花火大会のフライトレースで、春子のチームのアドバイザーをし
レースに勝利するんですが、その後の共通部分に戻ったとき「春子も1位になったらしい」と
客観的説明が入ったりします。

正直、これかなり熱が醒めました。

レースイベントがそれなりに盛り上がり、プレイヤーの気分も良い感じにできあがっているのに
話が繋がっておらず、その現場に自分は”いなかった”事にされちゃってるわけです。

こういう熱さをウリにする作品は特に整合性には気を遣う必要はあったんじゃないかな、と。

上記以外でも、湖を仲間内で調べるイベントが共通√にありますが、この時点で既に付き合っていて
Hまで済ませているのに”付き合ってない”扱い、とかになっているのもあります。

非常に面白い作品なだけに、この整合性部分が勿体なくてしょうがないです。
ちゃんとデバッグしてほしかったなあ。

以下個別感想(ネタバレ有り、要注意)







■春子√

私的には最初にクリアするなら、このルートが良いような気がします。
話の内容が一番シンプルで”飛行機乗り”の視点だけで描かれており、他の√と違い、権力闘争は
前面に現れず純粋に人と人の思いを楽しめました。

他ヒロインの√で出てくる権力闘争自体も勿論、面白くはあるのですが余分な枝葉をつけずに真っ直ぐに
ストーリーを追いかけれたのは大きなプラスだったと思います。

特にストーリー上のクライマックス部分がフライト界全部を巻き込んだ”痴話喧嘩”と言うのが
中々に潔ぎ良くて、恋愛部分を楽しみたい私のようなユーザーにはいい感じです。

”フライト”という共通の目的がある二人が最終的に見据えている”空を飛ぶ事の意味”ですれ違いを
起こしていく内容自体、王道で展開ですし高いレベルで安定したシナリオだと思います。

エンディングも何故か?2種類ありどちらも大団円として見れない事はない結末ですので
最後まで安心してストーリーに没頭出来る√だと思います。



■あきら√

権力闘争の話パートワン。

輝はともかく、あきら自体は余り好きではないヒロインでしたが、クリアすると感想変わりますね。
かなり好きなヒロインになりました。

大樹自体が全面に出張ってきますので緊張感はかなり高かったです。

特にあきらに見合い話を強引に持ってきた時に学校での身内での会話。
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「なによ、ちぃ兄はヤなの!?いいの、あたしがどんな目にあっても!」
「今まで会ったかあってないかも分からない相手に結婚させられて、ひん剥かれて逃げちゃダメで
 中に生だよ、ナマ」
「初めてからのHがそれで、それから子供が出来るまでその調子とか、ありえないでしょ!というか
 それが前提とかさー!」
「・・・いつか、そうやって望まない結婚をするかもしれない。あたしは、天御の子だし天原の為には
 仕方ないのかもしれない」
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この会話・・・寝取られ展開が大嫌いな私としては非常に危機感のあるやり取りでした。
なんか想像しちゃったんですよね。

この会話があったせいか、ここより先の展開は本当に気が気でなりませんでした。
ホント上手いこと纏まって良かった。

ところでラストの部分でレティが基準DNAを初代天御からあきらに書き換えましたが、あれって冷静に
考えると大樹のやろうとしたこととあんまり変わらないような・・・。
大樹は己の利権が目的でした、あきらは千尋との結婚の為、という私欲の為です。

視点・立場が変わると不思議な事に同じような事でも悪いことと考えにくいんですよね。
なんか世の中の真理だなあ、とか思ったりしました。



■莉音√

シナリオ自体は悪くは無かったのですが・・・莉音の声、風音さんはダメだったんじゃないかなあ。
個人的には非常に合って無く感じました。クリアした今でも違和感が残っています。

軽くヤンデレ入っている彼女。
正直言うと男の視点から言うとかなり苦手なタイプのヒロインなんじゃないでしょうか?

簡単にこのシナリオを簡単に言うと、自分が嫌いな物を”夢”として追いかけるのは許せない。
自分と付き合っているんだから、そんなこと位理解してよ!

こんな感じです。

気持ちは分からないでも無いですが、正直うざかったです。

最後の展開も何故、ここにいるの?
気持ちよく送り出したんじゃないの?

とひたすら???でちょっと強引さが目立ったのが残念ではあります。

エンディングは2種類ありますが、1つは本編にそのまま組み込むような内容でしたので
実質は1つなんでしょうね。


■レティ√

個人的に本作で一番お気に入りヒロイン。

クールビューティ、、、と本来の意味とはちょっと違うのかもしれませんがクールビューティと
いう表現が一番ぴったりくるような気がします。

ノエルとの掛け合いも面白く、シナリオ展開も個人的には一番面白く感じました。

特に初Hの時の初々しさというか健気な感じは、ここしばらくやったソフトの中でも1,2を
争う位に凶悪です。

動けなくなったレティを送り届ける、という千尋の決意も行動も主人公らしく格好良く
大樹の妨害にも負けずにやり遂げるのも王道展開で心地よく感じます。

内容的にはTRUEの前にプレイするのが良いかと思います。
※ノエルはレティクリア後しかプレイ出来ないので、レティ>ノエル>TRUEが良いのかな。


■ノエル√

おまけ的なシナリオで他の√のエンディングでちらっと出てきたキャロルの秘密が
明かされるシナリオです。

人間タイプのノエルは無茶苦茶可愛いですw
単純に”発情期”のために千尋と関係を持つわけですが、単純な展開なりに工夫をして
短いながらも楽しめました。

桃井いちごさんがCVですが、いつもの如く言われても分かりません。
多芸すぎます・・・いちごさん・・・。

エピローグにもう少し尺があったら良かったのですが、そこだけ残念ではありました。


■TRUE

なんか気持ち的には消化不良でした。
流れ的にはレティルートの続きかな?と思うんですが、恋人になっているわけでも
無さそうなので、設定的には誰とも付き合わなかった事になっているようです。

出来るならエンディング後の他のアーコロジーとの国交が回復して新たな高原の生活、
ヒロインとの幸せな未来、を描いて欲しかったなあ・・・

TRUEというより後日談を少し・・・という感じでした。




■総 括

TRUEこそガッカリしましたが、作品全体としてはかなり面白かったです。
シリアスなストーリーが好きな方、燃える展開が好きな方にはたまらない作品だと思います。

中古でもまだまだそれなりに良い値段がしますが、内容的にここまで良ければ当然かな
と思います。

超お奨めです。