サンタが街にやってきた。ならぬ、神が街にやってきた。
自分の命を言葉に乗せて、相手と自分の命を共有し、他人の意思に干渉出来てしまう人のお話。
とりあえずどのルートも、命と、言霊で出来ることと、願いで出来てました。
生きたい、生きたかったはずなのに私のせいで、死にたくない、あなたは生きて。
ヒロインの聡明度みたいなものが都合によって上下したりあまりせず、
分かる子は全部わかってしまうというのが徹底していたのも良かったです。
日常は、教室で友人と話していて答えに窮して言霊で全部ごまかすだとか、
面倒くさくなっちゃったから言霊で認識を変えてテストを抜け出すとか、
さほど多くない日常シーンをほぼ常に言霊に絡める感じで想像力の良さが出てました。
何がしたくて書いたのかとか考えなくて済む自然なテキストで、
主人公がどうにでも出来る存在としてのクラスメイト、みたいな突き放しも薄くていいバランスでした。
唐突な家族ごっこの犠牲者であるはずのあずきさんが
言霊が解けてもなお、娘を一人にしないで欲しいと願ったあたりで、
「神がなんでもないような顔で人様のご家庭を利用」してる異常性が少し和らいだ気はします。
コレがなかったらサスペンスホラーですよね。クリーピーみたいな。
どんな価値観で生きてるのか想像できない・・・みたいになってたかもしれない。
神が化けて人の生活に溶け込む民話ってだいたいそんな導入かもしれませんが。
ほたるエンド1は、じわっと泣いたし強度があると思うけど、
犠牲の否定をしてきた話の結実としてはエンド2しかないと思います。
論理矛盾から突いた話とか、能力のルールとか、喪失感の描き方とかテクい部分もあったけど、
結局行動が脳筋な主人公と狂言回しなヒロインと、破綻のない各キャラの言動が良い作品でした。
以上です。