絵もきれいだし声もうまいし絵買い・声買いとしては悪くない。ただシナリオは良くも悪くも微妙。細かいことを忘れてキャラゲーとして見ればそこそこ。あとデザインはいい感じ。
体験版の時点で、毒にも薬にもならなそうなシナリオとヘタレな主人公であることは容易に想像できたものの、どこかで見たことのあるような原画と最近流行り(?)の桐谷華さんに惹かれて購入。
絵については言わずもがなで、声については桐谷華さんだけじゃなくみんな素晴らしい演技。
気になるのはジャンルの「文化体育会系ラブコメAVG」で言うところの、「文化体育会系」があまりプッシュされてないように見えるところ。
せっかく主人公にやる気がないんだから更生させるなりいびるなり、いくらでもいじりようがあるのに、基本的にみんなで一緒にグダグダくっちゃべってるだけ。
というか主人公が入る前の部自体も仲良しこよしのお遊びとしてしか活動してないように見えるのも微妙で、一体どうやって「文化体育会系」を表現するつもりなんだろうか。
「体育会系」の定義は知らないけれど、個人的には徹底した縦社会とそれに伴って滲み出る理不尽みたいなものだと思ってて、けれど残念ながらこの部には大した縦社会も理不尽もないように思える。
いわゆる文化部に所属したことはないので“これこそが文化体育会系!”と言われたら、まあなにも言えないんだけれど……。
そもそも演劇自体が各ルートで一回ずつ、というか共通ルートで一回しかない。
演劇そのものは少なくとも、せめて練習とかの部活動自体の描写が濃ければ「文化体育会系」っぽく感じられると思うんだけれど……。
もしかしたら一度目の演劇までが「文化体育会系」、そのあとが「ラブコメ」みたいに切り分けられてる――わけじゃないよなあ。
正直ただの「ラブコメ」以上のものは感じられず、きっと「文化体育会系」はおまけ。
(というか前半と後半でライターが違うんじゃないだろうか。気のせいかもしれないけれど主人公の性格が変わってる感じがするし。あるいはまさかこれは成長なんだろうか。)
ただ「ラブコメ」についても付き合い始め方が個人的にはちょっと不思議展開。
特に遥先輩以外のルートではヒロインから告られるのが唐突すぎる。
もちろん主人公も驚いてるし、ぶっちゃけプレイヤーも驚いてる。
いったいここまでの主人公をどんな風に見れば付き合おうと思えるんだろうか……。
というかここまでの展開でお互いを意識するようなイベントはまったく見当たらなくて、降って湧いた感じなんだけれど、ロマンチックは突然に?
うんいやまあ唐突なのはいいんだけれど、ぶっちゃけ主人公のことを好きになれなくて納得しづらいなあ、という。
一応取って付けたような理由は述べられてるんだけれど……うーん。
個人的に気に入ってるのはシステムデザインとか。
設定項目などは多くないものの、エロゲーらしからぬ多すぎず少なすぎず・細かすぎず粗すぎずの良いセンスだと思う。
いつもはうざくてしょうがないアイキャッチも、タイトルロゴのほうはともかく黒板のほうは面白いし。
まあシナリオを生暖かい目で見守りながら絵・声を楽しむ分には悪くない。