魔王の正体に拘っちゃ駄目。
魔王とは一体何者か。正体は誰なのか。
推理しながらプレイしている間は非常に楽しかった。
だが、真相がすべて分かった時は、全体を通して存在する矛盾に酷くガッカリ感を覚えたものである。
るーすぼーい氏のコメントによると、
魔王の正体に関してはどうやら制作中に二転三転したらしい。
おそらく推測であるが、叙述トリックに固執した結果、
本来の主人公=魔王から、恭平=魔王に変更したのではないだろうか。
こう考えれば、三章までの展開と四章からがガラッと変わってしまう点など、辻褄の合う部分が多々ある。
主人公=魔王のままだと、確かにシナリオ上、物足りなくなってしまっただろう。
だが、前半で展開されたミスリードの流れから、各シナリオをパラレルに帰結させたのは、
正直徒疎かな設定であったと言わざるを得ない。
車輪の次の作品と言う事で、あっと驚くようなトリックを期待されているプレッシャーがあった事は察する。
だが、G線をプレイ後改めて抱く所感として、叙述トリックには一切拘らず、
人の内面の部分にのみ焦点を当てても良かったのではないかと強く思う。
犯罪者の子供の心理というものはそれだけで一大テーマであり、
小説などでは徹底的なリサーチが求められる題材でもある。
そのため、ADVというジャンルでは安易に踏み込んだ表現ができず、
叙述トリックなどを絡めたエンターテイメントとして仕上げるのは致し方ない側面はある。
だが、心的精神的な苦悩とその克服という点においては、るーすぼーい氏の描写は非常に見事であり、
この点を全面的にプッシュしたシナリオプロットにした方が良かったのではないだろうか。
事実ハルシナリオのラストは非常に感動的な結びとして構成されており、決して不可能では無かったと思う。
それとガッカリだった事のもう一つとして、
私のお気に入りのキャラであった水羽のシナリオが非常に残念な出来であった。
水羽シナリオを攻略順の最後に持ってきたら、それはもう酷い肩すかしをくらい、
口から白い煙を吐きかけたくらいである。
延期期間のギリギリまでプロットが上がらず、るーすぼーい氏も大変後悔していたようであるが、
いずれ小説やドラマCDなりでちゃんとしたシナリオを見てみたいと切に願う。
(そもそも正規のドラマCDが止まっているわけだが…)
余談ですが、G線上の魔王の背景設定は、野沢尚の小説「深紅」にそっくりでしたね。
少女同士と少年少女の違いはありますが、どちらも被害者の子供と加害者の子供の邂逅というものを題材にしており、内面心理等対比させると結構面白いです。
お気に入りのシナリオ:無し
お気に入りのキャラ:水羽
お気に入りの曲:Close Your Eyes、さようなら