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sasaburoさんの野々村病院の人々(Win)の長文感想

ユーザー
sasaburo
ゲーム
野々村病院の人々(Win)
ブランド
elf
得点
76
参照数
1379

一言コメント

主人公が素敵

長文感想

主人公の海原琢磨呂。
何といっても、名前が素晴らしい(笑)
蛭田主人公と探偵って案外相性が良いですよね。
有名な推理探偵モノを思い返すと、常識外れで変わった主人公が多い印象がありますが、
本作における主人公琢磨呂も御多分に洩れずそんなキャラクター。
蛭田主人公全開でありながら、有名ミステリー作品の名探偵達と人間性を並べてみても、あまり違和感が無いんですこれが。
破天荒だけど根がしっかりしている主人公と共に進めて行くストーリーはとても楽しいひと時でした。

シナリオは病院を舞台とした推理物アドベンチャー。
豊富に選択肢が用意されている中、破綻無くしっかりとストーリーが組み上げられているのが素晴らしい。
「同級生」を顧みても、蛭田さんの正確無比なプロット管理には頭が下がります。
このゲームや「遺作」のような選択肢で遊べるサスペンスADVって今じゃあまり見かけなくなりましたね。
あのプレイしている時のワクワクドキドキ感は今でも充分通用すると思うのですが・・。

ミステリーとしてはまぁほどほどな内容。
私はものの見事に最後まで犯人が分からなかったので、
バッドを繰り返しながら真エンドに辿りついた時は非常に達成感がありました。
よっぽど辛口なミステリーファン以外の方であれば、普通に楽しめる内容だと思います。
ただぶっちゃけ・・結構後味が悪いんですよねこれが。
赤川次郎とかの作品で割と見受けられる、ユーモアだけど後味の悪いミステリーが好みの方には大変お勧めです。

あと、当時結構辛口に批判されていたのは、マルチシナリオを謳っていた点ですかね。
発売された頃はまだノベルADVの草創期であり、
マルチシナリオやマルチエンディングの定義が曖昧だった頃なのですが、
同時期に「かまいたちの夜」というマルチシナリオの金字塔とも呼べる名作が出てしまったのが痛かったですね。
選択肢によってまるで無限の分岐があるかのように錯覚されられる「かまいたちの夜」と比べると、
大枠で見てグッドエンドとバッドエンドの違いしかなかった「野々村病院の人々」は、
アドベンチャー作品として、インパクト等の面で明らかに見劣りしてしまったと言わざるを得ないです。
まぁわたくし的には、時代的な不運もあったという印象ですかね。
売り上げ的には充分成功している作品ですけど。

絵は横田守さん。エルフ塗りの極みとも言える美しさ。
SS版からリメイクされてWIN版はより綺麗になりましたね。

BGMはほどほど良質。
個人的に曲名は分かりませんが、地下で○○(ネタバレ伏せ)を発見した時の曲(番号11)が好きですね。
Win版はご丁寧にもWAVでデータが入っているので、今でも良く聴いています。
ちなみにXP版は、WESTSIDEのお楽しみCD49にちゃっかり変換ツールが入っていたりしました。

そんな感じで点数ですが、無難なところで76点を付けさせて頂きます。
全体的に旧作な感は否めませんが、「遺作」のような選択肢を楽しめるサスペンスをやりたい方や、
蛭田主人公が大好きな方、エルフ塗りを改めて堪能してみたい方などには今でも充分お勧めできる作品だと思います。


お気に入りのキャラ:千里