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sanholaさんのグリザイアの楽園 -LE EDEN DE LA GRISAIA-の長文感想

ユーザー
sanhola
ゲーム
グリザイアの楽園 -LE EDEN DE LA GRISAIA-
ブランド
FrontWing
得点
90
参照数
6300

一言コメント

グリザイアシリーズ3部作の完結編。今までと方向性は違うものの素晴らしい出来でした。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

今までは雄二が誰かを救うお話。今作は雄二に救われた人が雄二を救おうと立ち上がるお話。
そして笑いと感動から燃えへと変わりましたね。そういった意味では前2作の方が私好みですが
今作は純粋に楽しめる作品でした。物語へと引き込むシナリオは相変わらず素晴らしく
最後は清々しい読了感で満たされる今季1番の作品だと思います。
本編、After、prologue、おまけと内容も盛りだくさんでした。



<ブランエールの種>
テロ行為を働いたというテレビを見て驚愕する一同。そんな一同は千鶴の元へ。
そこで分かったのは雄二は拘束されているのではないかという情報。オース・オスロへの
取引材料として知らせるためにあえて偽の報道を流すなんて想像もしませんでしたね。
雄二のために何かできないかと考える一同は雄二の部屋のクローゼットへ。そこには雄二の胸の内が
一面に書きなぐられていていつも毅然とした態度の雄二の弱みが垣間見えて切なくなりますね。
そんな中雄二の情報を集めるために由美子があったのはロビー。相変わらずのオタクっぷりですが
技術力はすごいですね。オスロの目的、国の思惑。なかなかに難しいです。
そして雄司の査問官として再会した一姫。バスの事故で肉体的には失ったけれど脳だけは生きていたと。
相変わらず一姫と雄二の掛け合いは絶妙ですね。オスロへの交渉材料としての雄二とタナトスシステムの
20%の譲渡。なんか壮大な話になってきました。由美子が寮へと帰る道。ふと視線を感じても
周りの様子から気のせいだったと思ってもそんな由美子の姿を追う監視カメラ。少しずつ追い詰められて
行くような感じがして緊張感がありますね。
状況が明らかになるにつれて難しさが分かっていく。由美子も歯がゆいでしょうね。天音も天音で
一番落ち着いているようでその実熱い思いを持っているだけに母親役も大変ですね。
蒔菜と幸の友情もいいですね。蒔菜が世界を敵にしてでも立ち向かう時には自分も一緒に立ち向かうと。
自分には帰る場所があるのに一緒に行くという幸の言葉には胸が打たれます。
いよいよ閉校の日。部屋を出る由美子。通路で立つ天音。この2人の関係はいいですね。
お互いが思慮深く考えたうえで無謀にも立ち向かう。その勇気がすごいです。
校門には蒔菜と幸。2人の関係も別のタイプですがいいですね。何かと無茶しようとする蒔菜と
それを止めるために冷静になれる幸。バランスがとれた2人です。そして最後にやってくるミチル。
ミチルは1人で2人ですがもう一人の自分は弱い自分が作り出したということをわかっているからこそ
その言葉に素直に従えない面もあるのでしょうね。それでも結局は自分自身で結論を出せたミチルも
かっこいいですね。反逆生活が始まって結局手詰まりの一同にかかってきたタナトスからの電話。
どういう理由かは分かりかねますが何かしら動きがありそうですね。
「サイモン曰く」といろいろ課題を出されますが順調にクリアしていってますね。
結局携帯を渡すためでしたが一姫はいろいろと分析してるのでしょうね。雄二を「ひったくる」。
そんなこと果たしてできるんでしょうかね。
一姫と天音が別れた後の出来事は悲惨としか言いようがありませんがやはり引き込まれますね。
緊張感があってこそ物語は面白いです。幸か不幸か一姫はタナトスとして生き続けることができました。
一姫とロビーの掛け合いも絶妙です。
タナトスとの会話の中で感じていた疑問をぶつける天音。一姫は天音の神ですか。まったくその通りですが
それを自分で言えるところが一姫らしいですね。頑固な銃の職人は麻子の父。意外なつながりがあったものです。
いよいよ作戦前日。作戦の内容が明らかになりますがとてもただの女子高生ができるようなことではありませんね。
もちろんみんな只者ではありませんが。実行にむけて迷いが出るみちる。そんなみちるに命令をだし
迷いをなくした蒔菜。蒔菜の役割を自分も果たすべきだと感じていた天音と由美子。本当にいい仲間たちですね。
オスロの言葉はたとえが難しくてよくわかりませんね。とりあえず雄二はオスロの成功作であり
これからの計画のためにタナトスと雄二が必要だってことですかね。
作戦が始まってからは圧巻ですね。始まって早々の仕組まれた襲撃。それにもかかわらず的確に射抜く蒔菜。
そして煙幕に身を隠して雄二を奪い返す幸。軽トラで敵を撒く天音。全ての命令を出す由美子。
そういえばみちるがホントに何にもやってないですね。雄二のためにヘリを強奪して駆けつけたミリエラも
かっこいいですね。ロビーもいい仕事してます。JBはJBでタナトス救助の大役を務めました。
タナトスと再会した時の天音は可愛かったですね。雄二が殺した人の娘との出会い。
雄二は気軽に死ねないほどには人を殺しすぎましたね。一姫と再会するもなかなか締まりませんね。
小さいころは姉についてきた弟が自分に牙をむくだなんて想像もしなかったでしょうね。
オスロとの決着をつけるために島へと向かう雄二。そんな雄二にお守りと言ってキスするみちるは可愛いですね。
残った面々は後始末。タナトスシステムを停止させるために電源ケーブルを切ってしまうと。
タナトスシステムがオスロの手に渡ってしまった今となっては脅威でしかありませんが宝ともいうべき装置を
破壊してしまうのはいささかもったいない気もしますね。
オスロの元へと向かうヘリの中での雄二の「星がきれいだ」という言葉。その言葉が雄二の体の異常を
告げていて死へと結びつくとわかっていても引き返さずに死地へと送るミリエラはやはり軍人ですね。
雄二の命よりも誇りを守ったということでしょうか。タナトスの指示により爆弾を発見したものの
タナトスシステムの介入で撤去はできなかった日本。そんな尻拭いをするためにJBは再び会社へ。
一方一人オスロの船に侵入した雄二は鬼神のごとき強さを誇って着々と進んでいきます。
そして自分のクローンとの戦い。どちらも狂気に染まってますね。もはや人間の戦いではないです。
弟を倒しオスロの元へ。オスロが手にするのは麻子が残した刀。それを腹に受けながらもオスロを
倒す雄二。あまりにも化け物じみていておいてかれそうです。オスロを倒したと思ったら現れる
本物のオスロ。「ヒース・オスロ」という戦争管理人ですか。適度な痛みを伴うことで大きな痛みを
避けられるのもまた事実。オスロも必要な存在ではあったのですね。
<BAD END>
3代目のオスロとなった雄二は世界の敵となり世界が平和であるために争いを作る。世界に楽園などなく
ただ走り続ける日々に疑問を抱きつつも姉と共に進む。島で待つ少女たちを置き去りにして。
前に進めば後悔はしないという想いがあっても自分が進んだ道が正しかったのかは分からないですもんね。
<TRUE END>
オスロを手にかける雄二。ただの爆弾ならともかく言ってみれば核兵器を使うのにはいささか疑問。
というか雄二はどうやって生き延びたのでしょうね。少女たちは島で雄二の帰りを待つ。
島の名は「グリザイア島」何もなくゆっくりとした時間が流れるこの島はまさに楽園。
その楽園で学園を再建する一同。日本から遠い地で楽しく穏やかな日々を過ごす彼らにとって
この島はまさに楽園ですね。



<Prologue>
由美子が美浜学園で一人で過ごしていたころからのお話。まだカッターを持ち歩いていた由美子の部屋の
斜め前に引っ越してきたのは天音。自分を問題児だと自覚しつつ何かを変えるためにこの学園に転入した
天音を煙たがる由美子。引っ越しそばのくだりはよかったですね。単なる仲良しごっこで終わらず
それぞれの胸の内が分かるのがいいです。由美子と天音で程よい距離感を保ちながら生活していると
やってくる新入生。1週間遅れで登場の仕方もおかしく馬鹿さを感じさせるみちる。
そんなみちるが鉛筆を貸してくれたお礼にとPCを「きれいに」して由美子は激怒。由美子とみちるの
上下関係が築かれた瞬間ですね。そんなみちるにも慣れた頃に新しい転校生。その子は何かと怯えていて
偏食家、ひどく生活力に欠けた蒔菜でした。蒔菜がいなくなったと思ったら工事の穴に落ちていた。
そんな蒔菜を助けて「ダメなところを見せてもいい」という天音は本当にお母さんのようですね。
それからというもの蒔菜も素を見せるようになりましたがいくらなんでも変わりすぎですね。
そして次にやってきたのは優等生の幸でした。学園長が何となしに言った「きれいになるまで」という言葉が
幸を一晩中掃除をさせるという結果になりました。人に言われたことを盲目的に遂行するということが
幸の生き方であり「いい子」でいるために幸が望んだことでした。そんな幸に「自分がご主人様になる」という
みちる。一見突拍子もない言葉ですが人から言われたことを守ることで自分の生き方ができる幸にとっては
自分に命令してくれる存在は少なからず必要でしょうね。
5人で平和に過ごしていたある日。東浜グループがビルの建設をやめるという決定を下したことで
学生への風当たりが強くなることに。総帥の一人娘として責任を感じた由美子は学園長に直談判。
それが功を奏してビル建設続行が表明されました。しかし住民とのわだかまりは消えず、ゴミ拾いの
狙いも見え見えでかえって反感を買うことに。誹謗中傷に心が折れかけた由美子の前に現れたクラスメイト。
辛い環境でも寮の中のように笑顔があふれるゴミ拾い。その帰り道、4人が並んで歩いている姿に
どうしようもなくいとおしい感情を感じる由美子。そんな由美子に1人の老人がゴミ拾いのお礼にと
梨をくれます。心遣いに感動する由美子、老人からの言葉で気付く「友達」の存在。
友達の元へ走る由美子の目には涙が。過去の自分に笑われても、未来の自分にだから言っただろうと
あきれられてももう一度顔をあげて信じてみようと思わせてくれる友達。
由美子自身の問題が解決したわけではありませんが心強い仲間を手に入れた由美子はどんな困難にも
立ち向かっていけるでしょうね。そして学園長から知らされる転入生。その情報の怪しさに
仲間を守るという決意を新たにする由美子。だから雄二に対してカッターを向けるなど過剰に抵抗
していたのですね。
最初は問題を抱えながらも少しずつ仲良くなっていき最後は仲間を守ろうという決意までする由美子。
その過程が丁寧に描かれていていい話でしたね。