共通ルートが最高潮、個別ルートで失速。竜頭蛇尾。
共通ルートは非常に面白い。キャラ同士が、多対多のごちゃまぜでバカバカしい会話を繰り広げていて、テキストを送る手が止まらない。体育祭編で主人公が覚醒するシーンは、ある種王道のスポコンもののような雰囲気を醸していて熱くなる。そして、一目惚れのめぐりせんぱいに告白するシーン──出てくる選択肢。このあたりの流れはもう完璧。
続く生徒会選挙編はやや中だるみというか、体育祭編の反動か面白みは鳴りを潜めている印象。
そして修学旅行編、これも良かった。幼馴染の意地を見せる千依。そしてここで覚醒するこころ。両者の魅力が存分に描かれ、どちらのヒロインを選ぶか非常に悩まされる。
と、共通ルートだけなら、間違いなく良作。傑作と言っても差し支えない。
しかしながら個別ルートが弱い。
まず第一に、メインヒロイン間の格差。
常夜とめぐりがとにかく不遇。途中下車方式の分岐であるがゆえか、十分なキャラクターの掘り下げが行われないまま......ヒロインに対する愛着が湧かないまま個別ルートに突入し、かつ個別ルートの分量も少なめ。両者の個別ルート分岐の選択肢後の共通ルートでの出番も少ないため、まるでサブヒロインのような立ち位置になっている。
また、これは全メインヒロインに共通だが、個別ルートはただヒロインとHしまくるといった具合でシナリオ要素、恋愛要素はほぼ皆無。メインヒロインとの恋愛模様は、恋愛ADVの花形とも言える箇所にも関わらずそのあたりが及んでいないように見受けられた。
続いてサブヒロイン・サブカップルについて。
第一に、私は本作でのサブカップルの取り組み自体を否定するつもりは毛頭ない。事前に公式からのアナウンスもあったわけだし、そこに文句をつけるなら最初から買うなよ、という話なので。
しかしながら......これは先述のメインヒロイン間格差や個別ルートの内容に関わるのだが......サブキャラの描写に注力して、肝心のメインヒロインの個別ルートが薄まってしまっていては本末転倒だと思う。
その上、サブカップルの描写も本作で完結しきっているとは言い難く、メインヒロインの描写もサブカップル・サブヒロインの描写もどちらも中途半端で終わってしまっていると評さざるを得ない。
FD前提の作品という声が散見されるが、仮にもフルプライスのゲームでこれはいかがなものか。
ゆえに誤解を恐れずに言えば、このコイバナ恋愛という作品の単体での完成度は、お世辞にも高いとは言えないと思います。