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sandersoniaさんのいろとりどりのセカイの長文感想

ユーザー
sandersonia
ゲーム
いろとりどりのセカイ
ブランド
FAVORITE
得点
85
参照数
725

一言コメント

主人公が贖罪のために恋を諦めるところがとてもいい。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

主人公の犯した「罪」と「贖罪」に焦点が当てられたお話。FDの『いろとりどりのヒカリ』はどちらかというと「罰」あるいは「贖罪」寄りの話で、本偏である本作はどちらかというと「罪」寄りの話。愛を学ぶことができなかった主人公が、恋に生きる少年少女を見て恋を知りたいと思う物語。サブヒロイン4人を攻略した後に始まるメインヒロインルートでは主人公が犯した罪の詳細が語られる。恋を知りたいという完全な私利私欲のために、どんな結果が引き起こるか承知の上で、メインヒロインに会いにいくところが個人的に好み。結局、主人公はメインヒロインへの贖罪の場として偽物のセカイを作り出し、その果てにこれまた贖罪のためにヒロインと別れることを選択する。この別れのシーンで、通常は主人公をサポートする聡明理知なヒロインが超論理を振りかざして主人公との別れを拒むシーンは涙なしでは鑑賞できない。最終的にあるべき場所に戻って落とし前をつけた主人公は、メインヒロインの妹の説得もあって新しい偽物のセカイを作り出し、メインヒロインと結ばれる。はじめてプレイした時はこの展開がかなりの超展開に思えたが、そもそも主人公にとって贖罪が「たった一つの大切なもの」だった理由は、自分の行動でメインヒロインを不幸にしてしまったからであって、その落とし前のためにまたメインヒロインを不幸にしてしまっては元も子もないというのも尤もな話。結果的にメインヒロインのためにサブヒロイン4人を雁首そろえて捨て駒にしてしまっているが、それに関する言及はFDにて語られる。