ErogameScape -エロゲー批評空間-

samusonさんの群青の空を越えての長文感想

ユーザー
samuson
ゲーム
群青の空を越えて
ブランド
light
得点
95
参照数
806

一言コメント

戦争についていろいろ考えさせられた。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

この作品は、他のエロゲーとは少し違う。
大体どの作品でも笑いがあったり、泣きがあったり萌えがあったりするものだが、
この作品にはそういった要素はあまりない。自分は最初、この作品は戦闘機による
ドンパチ物だと思っていた。しかしこれは派手な戦争物ではなくどちらかというと
戦争の裏の部分がさまざまな角度から描かれたものだったような気がする。
この作品で起こった戦争は「円経済圏理論」を発端としそのなかで唱えられていた
政治・経済の分散により起こる関東の企業や行政の経済的な既得権益を失うことを
恐れた関東政府が自分たちのいいようにこの理論を捻じ曲げ、関東の独立を宣言
したことから始まる。そしてそのなかで中心となったのが理論の発案者・萩野憲二
を崇拝する学生達だった。彼らは軍事クーデターを起こしたことにより、内戦を
終わらせようとしていた関西の自衛隊を敗走させる。それにより関東は独立を守り
関西との休戦協定を結ぶことに成功させる。
しかし次第に関東は押され、戦況は悪化してそろそろ終戦というところから始まる。
萩野社は萩野憲二の一人息子として、この戦争を始めた父親の後始末を、
するつもりで予備生徒に志願した。そして一種予備生徒としてグリペン乗りとして
この戦争に参加する。√によって、墜落しても復帰してエースとして活躍したり、
墜落によって生じた怪我によって、グリペンに乗れなくなるなど√によって違う。
しかし先にも書いたがこれは戦闘機に乗ってドンパチするのが目的の作品ではない。
この戦争の意味、自分が戦う理由、人を殺すということに対しての葛藤。
そういったものがしっかり描かれた作品だった。特にその面が強かったのが、
若菜√加奈子√美樹√だった。こちらの√はあまり経済がどうとか、各国の思惑が
どうとかの話よりヒロインと接することにより、そのヒロインがが抱える問題や
予備生徒の考え方などが良く分かる√となっていた。
しかし夕紀√と圭子√は少し毛色が違い、予備生徒からみた戦争ではなく
「外」から見た戦争が描かれていた。この二つの√は社が戦争に疑問を持ち、
この戦争を外からみた視点がよく描かれていて良かった。
そしてこの5つの√を終わらした後に出来るグランドルート。
ここでは円経済圏理論の真の意味や、関西からみたこの戦争の姿がわかる。
そしてこの戦争を終わらせ、本当の意味でのアジア統一経済圏を実現をさせる。
というのがこのルートでの話だった。終わり方は賛否両論あると思うが、
自分はこの終わり方でも良かったと思っている。社がやろうとしたことは成功
したのだろうし、それは話を進めているときに断片的に分かる。

最後に。
終わり方に賛否両論はあっても自分はとても良かったと思う。
絵は微妙だったけど、音楽・シナリオ・グリペンwは本当にレベルが高いので
ぜひやってみてください。