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samusonさんのマブラヴ オルタネイティヴの長文感想

ユーザー
samuson
ゲーム
マブラヴ オルタネイティヴ
ブランド
âge(age)
得点
99
参照数
1018

一言コメント

武ちゃんはよく頑張った。自分なら逃げ出した挙句、帰ってこないw

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

まずは全体の感想。

これが出た時は最初、敬遠していた。
理由は一つ。ロボット物が嫌いだったからだ。
しかし世間の評価が異常なほど高く、少しづつ興味を惹かれるようになった。
だがこれをプレイするにはまずマブラヴをプレイしないといけないらしくプレイしてみたのだが、そちらはお世辞にも素晴らしいとは言えない出来であった。(しかも長い・・・)
しかし本作をプレイして世間の評価の高さに納得がいった。
なんといっても半端なく作りこんでいる。
キャラは動きまくるし、演出も現在出ている作品と比べてもトップレベルで、シナリオも泣きゲー、燃えゲー両方の側面を持ちしかもそのどちらも非常に高いレベルで両立していた。
とくにすごいと思ったのは本作をプレイした後に無印版をプレイしてみるとなんでもない日常シーン、日常会話ですら泣けてくるところだ。特にオルタをプレイした後だと純夏の武への想いの深さが分かっているだけに、再プレイでエクストラ編の純夏√をプレイすると凡ゲーの1√がとても感動できた。

ただ個人的な不満点も。
それはこの作品のラストに関してだ。
この作品は一本まるまる純夏√と言ってもいい。
それなら色々な理由があるにせよ、元の世界に帰った後も純夏と結ばれるところを描いて欲しかった。








ここから下は各エピソードの感想を書いていますが、所々ネタバレがあるので
未プレイの方は回避推奨。(ほぼプレイ日記みたいなもの)



























シナリオは一本道でepisode4までは前作とほぼ同じだった。自分はオルタが出てからプレイしたので、2度も同じシナリオを読ませられるのは非常にだるかったが、無印が出てからほぼ3年の延期があったため無印からのプレイヤーのためのおさらいのようなものだと割り切った。多少違ったのは、武がアンリミテッドでの記憶と体力を引き継いでいるため、前作では部隊のお荷物だったのが、本作では非常に優秀な訓練兵として部隊の面々から尊敬されていることくらいだろうか?


話はepisode4の後半~episode5からオルタの本筋へと入っていくのだが、
ここからは一気に話に引き込まれクリックが止まらなくなった。夕呼先生の理論を取りに元の世界に戻ったりするのだが、そこでも無印ではなんのことはないエピソードがオルタでの伏線になって驚かされたり、
episode6では普段考えもしないようなことを色々と考えさせられた。日本のあり方、立脚点、仲間たちのそれぞれ複雑な立場。こういうものが絡んできて話として非常に面白かった。特に冥夜の殿下への想いと狭霧大尉と月詠中尉との一騎打ちのシーンには泣かされた。



そしてepisode6までは武の思い通りに事が進み、少しづつ世界を救うという目標に手ごたえを感じ始める

だが、オルタが欝ゲーと言われる所以ともなった問題のepisode7は本気で気分を滅入らせてくれた。
クーデター編が終わり、夕呼先生の理論の核を回収し、自分の発案した戦術機の新OSも先任たちから評価され順風満帆に事が進んでいくのだが、OSのトライアルで"事件"が起きる。
ここからの展開は、本気で製作陣の悪意を感じた。何度も何度も"あの"フラッシュバックを見せられ、ここでもかと言うくらい、主人公・武を地獄の底へと突き落とす所業は本気で悪意を感じた。

・・・勿論、主人公に感情移入させると言う点においては成功だったと思うけど。
そら誰であってもあの状況であんなことが起きれば逃げ出したくもなるって・・・
しかも逃げ出した先でもさらなる地獄が待っていて、途中から正直見ていて武が気の毒になった。
自分がもしあの境遇に立たされたら間違いなく自殺していたと思う。
それくらい、あの状況はきつい。

そしてこの章では本気で泣かされた。
純夏の武へのあまりに一途な思いに涙し、その後の日記のエピソードでは体中の水分がなくなったのでは?と勘違いするほど泣いた。
ここまでは冥夜に感情移入していたため、気持ちもそちらに行っていたのだが、純夏の気持ちを知ってからは、純夏以外見られなくなった。


episode8からは再びオルタの世界に戻ってきて、改めて人類を救うために戦うことを決意する武だけど、帰ってきてすぐにやっぱりかという展開が待っていた。予想はしていたけど"00ユニット"の出番は後ろに回して欲しかった。欝展開の連続でさすがに嫌気が差してくる。

episode9は久しぶりに燃えた。6章からずーーーと欝展開の連続で嫌になりかけたがここからの展開はとても楽しめた。佐渡島ハイヴを攻撃する。言葉にすると簡単だが燃えた。
ここでは武が面目躍如という活躍も見せるし、とても良かった。
だが若干この辺りから、一つ一つのキャラ同士の会話が長くてダルかった。
そして多分このepisode9がこの作品で一番長かったんじゃないだろうか。
佐渡島戦が終わって連戦での横浜基地襲撃。息のつかない展開は非常に楽しかったが、佐渡島でもそうだったが、若干キャラが死に過ぎではないだろうか?
なんか次々死亡フラグを立てて死んでいく・・・
そんなのが目に付いた。

episode10
この章ではいきなり若本さんが魅せてくれた。あの演説で心震えない人はそうはいないんじゃないだろうか?
宇宙に出てからも、ヴァルキリーズを守るために自らの命を放り出す駆逐艦の艦長達が輝いていてすごく良かった。しかし不満点もある。全年齢版ではオリジナルハイヴ突入シーンがあるのだが、オリジナル版ではいきなりオリジナルハイブの中からシーンが始まる。ここは不満点だった。
全年齢版ではあるとはいえ駆逐艦乗り達の熱い所を見せられたいう直後で、ハイヴ突入という一番燃える所を飛ばしたのはやっぱり製作時間が足りなかったのだろうか・・・

そしてラスト。
ここも賛否両論ある展開。まずはハイヴ戦闘でのヒロインの扱い。次に武が元の世界に帰ってからのこと。
まずはヒロインについて。ネタばれとなりますが、前作のヒロイン達を全員死亡させたのには驚いた。
なんだかんだ言いつつも生き残るのかなと思っていましたが、ライター容赦ねぇ。
これに関しては自分は不満はありませんが、この展開が無理な人もいるのではないでしょうか?

それと武が元の世界に戻ってからオルタの世界での記憶が残っていないのは残念だった。
あれではせっかく苦労して、成長していった意味がないのではないだろうか?
そりゃ、色々な理由はあるにせよ、嫌なこと忘れて元の世界で生きていくってのもいいかも知れませんが、オルタでは純夏を選んだのだからあのまま元の世界でも記憶を持ち続け、純夏の気持ちに気付いた武と結ばれる結末があっても良かったのではないだろうか?

最後に。
批判ばかりしているような気がするが、全体としてはとても楽しめた。
演出良し、シナリオ良し、音楽良しとこれだけの作品はそうは見つからない。
ほぼ完璧だったと思う。またいつかプレイしたいと思う・・・


あと夕呼先生の声優の方ご苦労様でしたw