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samusonさんの恋神 ‐ラブカミ‐の長文感想

ユーザー
samuson
ゲーム
恋神 ‐ラブカミ‐
ブランド
PULLTOP
得点
81
参照数
2652

一言コメント

面白かった。しかしツクヨミ√はもっと賛否両論あってもいいような・・・

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想



人間界に降りてきた八百万の神様達と共に学生生活をしていく・・・
というお話なのですが、体験版をプレイするまでは、ぶっちゃけ地雷臭しかしませんでした。
しかもここのメーカーの作品は4本目なのですが、今までプレイした3本の内2本(守銭奴の神様が出てくるのと、サンタが出てくるやつ)が自分には合いませんでした。
そのためそれほど期待はしてませんでしたが、予想以上の出来で満足です。
キャラはこのメーカーの作品らしくメインキャラはもちろん、サブキャラ達も影が薄くならず物語を盛り上げてくれますし、なによりみんな魅力的でした。特にタケミカズチ、エロジジイ、担任の先生などとても面白かったです。(声だけとはいえ守銭奴の神様とかも居たしw)
シナリオは√によって出来がばらついています。
ツクヨミ√とサクヤ√はお勧め。両方ともに賛否両論ありそうな話だけど自分は面白かったと思う。
特にツクヨミ√は若干超展開があるので、驚くかも・・・
逆にイナリとかは、最初にプレイしていたらきっと積んでいたでしょう。(キャラは良かったのだけど・・・)

主人公について。
テンション上がるとべらんめぇ口調になります。
正直ウザいです。しかもエロゲの主人公にありがちな鈍感野郎です。
でも、俺は嫌いじゃないタイプです。行動力はありますし、熱い男なので。
自分が嫌いなウジウジ悩んでなにも決められないタイプでないのでそこは評価しています。

その他。
使われているボーカル曲が結構いい感じです。
特に二藍-あいいろ-、彩-にじいろ-はいい場面で使われていることもあってすごく良かったです。
あと各EDの入り方が良かった。曲の使い方がうまいと感じた。
エロに関しては、各キャラ4回ずつと萌えげーにしては多目かな?
ま、抜けるかどうかは別だけどw

まとめ
全体の感想としては、非常に丁寧に作りこまれていますし、ここのメーカーの過去作品より日常パートで、退屈させられないので自分的には高評価につながった。












※ここから下はネタバレ全開の個別√の感想となっていますので、未プレイの方は回避推奨。






































いつき√
主人公を弟と呼び、神様を嫌っている。
嫉妬がかわいくてキャラは結構好きな部類だった。シナリオは4章と後半2章が少しシリアスな話で、4章ではいつきの過去、いつきが神様を嫌う本当の理由が分かるのだけど、スセリがまじめに神様していたのがビックリさせれた。(まぁ、その後に結局黄泉の世界に連れていったことが判明したのだけど・・・)
それに蛇神のエピソードも少しホロりとさせられたし、この辺りのシナリオは自分好みだった。
その後の思ったことが頭の上に浮かぶ2度目のタグ事件の話は笑かしてくれた。「自然と一体となるのよ」とか、「私は路傍の石」とか、主人公に自分の本当の思いを知られないように必死にブツブツ言ってる姿が面白かったw
正直、この√のピークはここまでだった。
後半からエピローグの流れは悪くはないのだが、自分としてはイマイチに感じた。
いつきの魂が半分になったのも結局は自業自得で、最初に黄泉の世界に行ったときに勝手な行動をしたからであって、決してイザナミが悪かったわけではないと思う。
そのため、感動風味に仕立てられていても、違和感しか残らなかった。
EDの入り方と、エピローグはよかっただけにそこだけが気になった。




サクヤ√
人間とは、ある理由から相容れないと思っている神様。弱ツンデレ。
人間と生活していく中で、颯太に惹かれていくサクヤ。しかしとある理由でもう一度距離を置こうとする。
しかし納得のいかない颯太は、カミサマと人間の交流を深めるために行われる天岩戸の劇を利用して引きこもるサクヤを引きずりだそうと企てる。
そこで思いを伝えあって結ばれるのだが、根本的な問題は残ったまま。その問題とは・・・
とまぁ、話は続いていくのですがその前にひとつ言っておきたいことがある。


この二人のイチャラブがあまりにも激甘すぎて精神的ダメージが・・・
えぇ、確かに付き合いだす前から兆候は見られましたよ?
こちらも途中からずっとニヤニヤしっぱなしだったし。
・・・だけどな、いくらなんでもバカップル過ぎるわーーーー
見ているこっちが恥ずかしくなるわ・・・

とまぁ、かなりの激甘展開にこちらに精神的ダメージを負わせつつ、話は進んでいくのですが、
なるほど。あれだけサクヤが人間を避けようとした理由も、サクヤと付き合うまえに「諦めて下さい」と言った
イワナの言葉の意味も、あの「呪い」が原因なら仕方ない。
その呪いをどうにかするために、話の着地点をあのように持っていったことも理解できる。
確かに終わった直後はさわやかな気持ちにさせてくれるし、いいシナリオだった。

・・・でも納得がいかない。あの終わり方にするなら、きちんとイワナのエロシーンも入れるべきだと思う。
そうでなければ二人とも愛すると言った意味がない。


ま、少々の不満はありますが自分はこのシナリオ好きです。
特に話の終盤での颯太の啖呵。少しだけ下に抜粋します。

・・・颯太が呪いに蝕まれた体で、懸命に二人を消すまいと踏ん張ってるときに現世から消えようとするサクヤから言われた「これは運命です」の一言。暗に大好きな人間達と別れなければならないのは自分の宿命なのだと言われます。しかしその後サクヤの離れたくないうという"本音"を聞いた颯太はこう言います。

「神の大ボス、どこかで聞いてるか?」

「偉くなくてもいい。この呪いのシステムを作ったやつ!!」

そしてよく聞きやがれと、

「北里颯太、並びに周りの人間、カミサマは・・・」

「サクヤとイワナを等しく、隔てなく愛して愛して愛し尽くしてやる」

「だからそれを邪魔するんじゃねぇ!!」

「聞こえたかぁ!!俺たちはな!!一人だけ仲間外れにするようなやつたぁ違うんだよ!!」

「だから呪いなんてモン、今ここで仕舞いだ」

と神様に啖呵を切ります。自分はこの流れと啖呵が非常に好きです。
そんなことをしても意味はないかもしれないけど、それでも諦めないという姿勢に好感を持ちました。
それと颯太は色んな意味で、二人を愛することを誓います。見方よっては二人と関係を持つので、こういうのが嫌だと思う人もいると思いますが自分の考えは少し違います。
あの場面、いくつか選択肢がありました。

①サクヤとイワナを見送り自分の呪いを解く。
②サクヤを選び、そのまま呪いを受け入れて死ぬ。
③そしてサクヤとイワナ二人を平等に愛することを誓い、自身の呪いを解き、かつ二人も不幸にならない。

①は論外です。だれも幸福にはなりません。もしそんな選択肢を選ぶような主人公なら、ゲームのディスクごと叩き割ります。②は、見方によってはアリかもしれません。サクヤへの愛を貫き死ぬ。綺麗で切ない終わり方になるかもしれません。しかし呪いによって颯太は死ねば、イワナは幸福にはなれません。
そして颯太は③を選びました。誰かが幸せになれないより、みんなが幸せになれる方を選びました。
これはあくまで私見ですが、③がベストだと思います。、
呪いの発動条件(木花咲耶姫が"愛する"ものに対する嫉妬)があって、呪い自体がイワナの存在条件である以上、
①~③以外の選択肢を選ぶことは不可能となります。そしてすでに呪いがかかっていて、かつ時間の余裕がない状態では別の可能性を考える時間もありません。結局は二人が人間となることで、呪いを解きましたが、③を選ばなければあの仲のいい姉妹が人間になるということを選ぶこともなかったでしょう。そして根本から呪いを消すということも出来ません。ですからあの時あった選択肢の中でみんなが幸せになれる選択肢は③だけだったと自分は考えます。
で、最初に戻るのですがこの場合の彼の行動は非難されることなのでしょうか?
ヒロイン達も3人で暮らしていくことをよしとして、かつ誰も不幸になっていません。
それならこの選択が一番の幸せになれる選択だったのではないでしょうか?









イナリ√
豊穣の神様。初心なくせしてなぜかエロに走ろうとする。
体験版の段階では一番魅力的なキャラで、期待していたので攻略順も後ろに回しました。
・・・正直期待ハズレだった。共通では輝いていたのに個別に入ると一気に魅力ダウン。
変にシリアス入れるなら、もういっそのことイチャラブだけで良かったんじゃないでしょうか?
なんていってもシナリオがつまらない。山場はあることはあるのだが、ほかの√に比べ盛り上がらない。
サクヤ√では擁護した主人公もこの√ではしっかりせいよ!!(あまりの鈍感に)と言いたくなるし、
正直、見るべきところのないシナリオとなってしまった。



ツクヨミ√
「三貴子」の偉い神様。能力:月がいつでも見られることw
別名:「ニート」「ダメな子」「ダメ神」等。
ゲーム開始5秒でほとんどの人が「あぁ、こいつがメインヒロインだな・・・」と気付くと思われる。

シナリオ展開としては、序盤はやたらハイテンションなツクヨミと颯太がカミサマ委員で、色んな問題を解決したりしながら、親交を深めていくという感じ。だけど、あることがきっかけで仲違いしてしてツクヨミは家出してしまう。そこでなんとか家に帰ってきてもらおうとするのだが、そこでツクヨミの気持ちを知ることになる。

神様なのに何の力を持たない。でもみんなの力になりたい。
・・・颯太の力になりたい。あの時の恩返しがしたい。

だからカミサマ委員でも頑張ってきた。
でもうまく行かない。結局足を引っ張ってしまう自分に嫌気がさす。

そして颯太の一言「お前は力がないんだから、もっと周りに頼れ」

颯太としては失敗したツクヨミを励ますつもりだったその一言がツクヨミを落ち込ませる。
その後、家出したツクヨミを連れ戻すために颯太は考える。自分の気持ちを。ツクヨミの思いを。
スセリに迷惑だからと追い出され逃げ出したツクヨミ。それを追いかけ、捕まえた颯太に思いを伝えられる。

お前が必要だと。お前が好きだと。

・・・自分としてはこの後の展開が好きです。二人でプレイできるRPGを一緒にプレイする所。

ゲームの主人公と自分を重ねて語りだすシーン。


「このゲームの主人公・・・バカなんだよ」

「力もないのに頑張っちゃってさ。相棒のキャラに迷惑かけてばっかりで」

「ほんとバカなんだよ・・・」

それに対しての颯太の言葉は、

「そうか?いいじゃねぇか」

「俺は好きだぜ、そういう奴」

「頑張ってる姿を見て、俺も頑張ろうって思える」

ここでの颯太の答えが好きです。
暗に特別な力がなくても頑張ってるツクヨミが好きなんだって伝えるところがいいなと思いました。


ここまでが大体6章くらいの話なのですが、ここまでだけでも自分としてはかなり楽しめました。
そこからはプロポーズした颯太とツクヨミの結婚式にまつわる話なのですが・・・・

ここから超展開。
いやーマジで驚きの展開。
「・・・え?w」となること請け合い。
結婚式でツクヨミの親父さんに言われた試練。
1つ目の試練と、2つ目の試練は半分ギャグなのであっさりクリア。
しかし3つ目の試練であるツクヨミの母であるイザナミに許しをもらって来いという試練にて、
まさかの超展開。
ここからは自分でプレイして判断してほしい。突然始まる超展開を許容できるかどうかは、各プレイヤーの判断によって変わるかも・・・

超展開さえ受け入れられれば、ラストは綺麗に纏まっているので、悪くないと思う。


最後に。
微妙な√もあるにはあったが、十分良作だと思う。ただ気になったこともある。
ツクヨミの父ちゃん母ちゃんの最後の扱い適当じゃね?あんだけ反対したのにあっさりすぎません?