最終感想:今年最後の良作だったと思う。出来れば12月31日までにプレイして欲しい。時期を外すと感動が薄くなるので・・・
まさかの良作だった。
事前情報ゼロで、設定やあらすじすら知らずに衝動買いで買った作品だったのですが、
メチャメチャ面白かった。このライターの前作「スマガ」もプレイしましたが、そちらはあまりに長すぎて途中でダレてしまいましたが、アザナエルではそんなこともなくテンポよく読み進めることが出来ました。けど不満点も結構あったので、まずはそのことから・・・
アザナエル。撃たれた者の心から願う事をを6分の5で叶えるという銃。
まぁ、簡単に言えばロシアンルーレットをして成功したものの願いを叶えてくれるというものです。
自分は物語内でアザナエルのルールが分かったときに考えていたことがあります。
”心から叶えたい願いとは?”
このことを自分のことに置き換えて考え出してみると案外答えが出てきません。
例えば金、女、地位、名誉みたいなありきたりなことは直ぐ思いつきました。
しかし自分の命を賭けた極限の状況で心の底からそんなことが考えられるでしょうか?
自分は割と賭け事が好きなのでギャンブルで負けているときに考える人間の思考もよく知っています。
ギャンブルで負けていると、ほとんどの人間が「勝つ」ことよりもいかに「負け」を減らせるかに意識が向いていきます。それは自分のお金や物を失うという恐怖から、攻めるより守るほうへと自然に思うようになるからです。
これをアザナエルに置き換えると、自分の頭にアザナエルを突きつけている状況に置き換えることが出来ます。そしてその時考えるのは「願いを叶えたい」ということよりも「死にたくない」と”心の底”から考えるようになるはずです。そうなると”アザナエル”が受け取る願いは「死にたくない」という願いを受け取るはずです。
こう考えてみると、意外にアザナエルを使える人間は限られてきます。大した望みを持っていない者はそれだけで淘汰され、アザナエルの力を引き出せる人間は限られてくると思うのです。
・・・結局、自分は答えが出ませんでした。
一体どんな願い事を持っていれば自分の命を賭けれるのだろう?
真剣に考えれば考えるほど結局、自分の「命」を選択するという結論に辿り着き、命を賭けても叶えたい願いというものが分かりませんでした。
ですから、この作品内のキャラたちがどのような願いを持ち、どのような心境で引き金を引くのかとても楽しみでした。
それが悪かった点の一つに繋がるのですが、作品内のキャラたちは意外なほどあっけなく自分の願いを叶えるために、引き金を引きます。その”願い”がしょーもないかどうかは置いといて、もう少し死の淵に立たされた人間が感じる恐怖や狂気と言った心理描写をもう少しうまく描いてほしかったです。
次に悪かった点。
バグ、動作不良、重いといった製品自体の欠陥について。
まず「インストールが出来ない」、「ある場面から先に進めなくなる」、「スキップを行うと落ちる」、「動作が重い」。この四つがプレイ中主に起きた不具合です。
これは自分の環境だけで起きた不具合かもしれません。
でもいくらなんでも不具合が多すぎる。一つだけならまだしも、いくつも同時に起きるのはデバッグが足りていないのではないでしょうか?
確かに時事的な作品であるので、延期するという選択肢がなかったのは分かりますが、もう少し頑張ってほしかった。
良かった点
この作品は死生観について語られた作品ではないと思います。
どちらかというと、主人公達の成長を描いた作品だと自分は思いました。
自分は主人公達の成長モノが好きなので、それがしっかり描かれていたのは良かった。
特にノーコと似鳥はそれが如実に表れていたと思う。
現実から目を逸らし自堕落に生きる似鳥。そんな彼の妄想が生み出した脳内彼女ノーコ。
この二人は向き合ってるようで、本当の意味で相手を見ていなかった。
そんな二人がアザナエルがきっかけとなり本当の意味で向き合い、少しづつ成長していく姿は本当に良かった。
特に、自分のそれまでを振り返り、本当の気持ちに気付いた似鳥が、ノーコに告白するところはグッと来た。
これがあったから最後の独白に繋がったのだと思う。
「100人に笑われたって、1000人に指さされたって、1万人にけなされたって、いい」
「良くないけど、いやだけど、しょうがない」
「何回も傷つくだろうし」
「何度も何度も、死にたくなるけど」
「描きたいから!!」
「描き続けなきゃ、やっぱり、俺が死ぬから!」
「描いて!描いて!描いて!」
「そのありったけを、ぶちまけてやる!」
「んで、そのありったけが──」
「きっと、誰かに届くから」
「誰かに届けば、俺は、それで満足なんだよ──!!!」
弱い自分を認めながら、今まで目を逸らし続けた現実に向き合う覚悟がこの独白にあった。
現実に向き合ったからこそ、あの絵が完成したのだと思うし、ノーコの笑顔を手に入れることが出来たのだと思う。
他にも名シーン、名台詞はたくさんあったし、他の主人公達の核となるエピソードも面白かったけど、やっぱり自分はノーコと似鳥の二人の話が良かったと思う。プレイしていて元気を貰ったしこの作品を今年最後にプレイできて本当に良かったとも思えた。
最初、不具合で先に進めなくなったときは、プレイせずに売り払ってやろうかと思ったけど、そんなことをしなくて良かった。これだけ気合入った作品は今年プレイした中でもトップクラスだと思うし、変わったことを題材にしているのも良かったし,また来年のこの時期にこの作品をプレイしたいと思う。
ではでは皆さん良いお年を。