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samusonさんのWHITE ALBUM2 ~closing chapter~の長文感想

ユーザー
samuson
ゲーム
WHITE ALBUM2 ~closing chapter~
ブランド
Leaf
得点
97
参照数
1726

一言コメント

2011年度の傑作

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想


結局、誰に感情移入するかで大きく評価が変わる作品だと思う。
自分はintroductory chapterをプレイしてから1年経っており、それから再プレイしていなかったのでclosing chapterの共通が終わった段階で、どうしようもなく雪菜に感情移入してしまった。

そのためcodaのかずさ√は許容できるものではなかった。1週目はまだ許容できた。最後は雪菜とくっ付いたから。でも2週目(ture?)はない。自分が今まで築いてきたものをすべて壊した上で5年ぶりに現れた初恋の女を選ぶとか自分には出来ないとか以前に人としてやってはいけないことだと思う。

雪菜は下手をすれば完全に壊れていたかもしれない。それどころか死んでいたかもしれない。
人を一人壊してまで得る幸せとはどういうものなんだろう?最後は無理やりハッピーエンドに持っていっていたけどあんなのあり得ない。

「物語だから」と言われればそこまでなのだが、普通ならあり得ない。事情を知っている春樹の周囲に居た人間には最低に胸糞悪い思い出が刻まれ、雪菜に至っては家族の仲をもバラバラにされ、二度と恋出来ないようなトラウマが出来てもおかしくなかった。

そしてその選択を選んだかずさと春樹にも心に深い傷を負わせていただろう。普通の感性なら海外に逃げ出したところであんなラブラブなままでは居られないだろう。どこかしら無理が出てきたはずだ。


だから、あの終わり方には納得出来ない。
もっと最低最悪の終わらせ方のほうがしっくりくる。最後のシーンなんてああいうキャラたちなんだとしてもあんなに人が良いのは不気味に感じた。こんな終わらせ方をするくらいならclosing chapterの真理√でちらっと出てきた「コンサートに行く」という選択肢から話を作って欲しかった。そこからであれば「まだ」かずさ√も納得できる話になったかもしれない。


と、まぁここまでは貶してばかりなのですが、それ以外はさすがとしか言えない出来でした。
現代を舞台に普通の「恋愛」をテーマにした作品でここまで深く感情移入出来るとは思いもしなかった。サブも含めてヒロインを攻略するたびに胃が痛くなるほどの切なさと、悲しみを与えられ、プレイヤーの心をこれほど揺さぶることが出来るのは数居るシナリオライターの中でも一握り、いやもしかしたらこの人くらいなのかもしれない。そして、だからこそこういう辛く苦しい話を続けたからcoda雪菜√(2週目)の大円団であれだけ感動でき、一際輝いたのであろう。

特にエンドロール前の雪菜の慟哭、独白は良かった。あれで初めて「雪菜」というキャラが理解出来た気がする。最後まで聖母のような菩薩のような"キャラ"であったなら、こんな感想にならなかったかもしれない。ひとつの幸せを手に入れるために途轍もなく苦労させられて、それなのにどんなにひどい仕打ちをされてもそれでも春樹と一緒に居たいと思うそんな痛い女の"本当の気持ち"に。