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samurai_xさんのリトルバスターズ!の長文感想

ユーザー
samurai_x
ゲーム
リトルバスターズ!
ブランド
Key
得点
80
参照数
1105

一言コメント

ヒットメーカーであるが故のある意味不幸な作品。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

どんな作家や芸術家でもそうだが、ヒット作を生み続けるのは相当な苦労が有ることだろう。
過剰な期待が低評価につながっている今作は、リリースする順序さえ違えばここまで酷評
されなかったのかもしれない。
ただ、酷評される理由もわかるので、まずはマイナス面から触れていくと、相変わらず
要素がラストに集約してしまっているため各キャラシナリオのウェイトが低くなっている。
そして最後に山場が来るのが予想できてしまうので、どうしても途中での作業感が否めない。
また、ライターごとに技術のバラツキがあり、メインルートとの明らかな温度差が
感じられてしまうのも低評価につながる理由だと思う。
ぶっちゃけて言ってしまえば、鈴以外の女性キャラクターを排除し、CG枚数を減らして
\4,800程度で売り出した方がよほど評価されたのではないだろうか。

あまり悪い点ばかりをあげつらってもレビューにはならないので、良かった点を。
個人的には以下の二点を特に評価したい。
まず一点目は、過去の作品がいずれも家族愛をテーマとしたもの(Air、CLANNAD、麻枝氏担当のKANON)
だったのに対して、今作は初めて友情をメインテーマとしたものであったこと。
流石に家族ネタが続くのは食傷気味だったので、キャラクターの親や子供まで風呂敷を
広げなかったのは良かったと思う。
続いて二点目は安易に人を殺すことで暴力的な感動を無理矢理引き出す手段から一応は脱却したこと。
確かにご都合主義的なエンディングといえばそうだし、結果的に死ななかっただけで
人の喪失によって感動させようとする手法は同じかもしれないが、「死んだぞ、さあ泣け」
というパターンをとりあえずはストップさせたので、そこは評価したい。
全体を見ると良くも悪くもKEY作品なのだが、マンネリ化を避けようとするそのチャレンジ精神を買って
比較的高得点の評価になった。
もちろん言うまでもないが、数多リリースされる凡作よりはよほど完成度は高い。
特にギャグにおいては過去最高の笑いを提供してくれたと思う。

最後に各キャラクターを演じた声優諸氏の演技が実に素晴らしい。
特に葉留佳、佳奈多の二役を演じたすずきけいこ氏、これでもかというくらいの馬鹿を
好演した神奈延年氏、多様なシーンを見事に表現してくれた緑川光氏の演技は秀逸だった。
声だけでもプレイする価値があるかも?