ErogameScape -エロゲー批評空間-

sakura2002さんのパルフェ ~chocolat second brew Re-order~の長文感想

ユーザー
sakura2002
ゲーム
パルフェ ~chocolat second brew Re-order~
ブランド
戯画
得点
90
参照数
923

一言コメント

点と線。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

欧風喫茶店ウエイトレス殺人事件などは起きませんが、
この作品を一言で表すと「点と線」の作品なんだなぁと感じました。

この感想はネタバレ多めです。
ネタバレを見たくない方はご注意下さい。





このゲームを前情報無しでプレイすると、ある1つの大きな疑問を抱くことになります。
それは、「なぜ里伽子はこんな行動をとるんだろう?」という疑問です。

主人公の友人であり、実は想い人でもある里伽子。
主人公とは非常に仲の良い間柄であり、困った事があると何かと手を差し伸べて助けてくれます。

例えば、物語序盤において
主人公が何度説得しても姉である恵麻の協力が得られず、
商品の質も、サービスの内容もライバル店に負けてしまい、
苦戦を強いられる状況に陥ってしまいます。
そんなある日、恵麻はとつぜん自ら協力を申し出てきます。
恵麻の協力により、何とかライバル店と太刀打ち出来るようになる主人公ですが、
実はその裏には、ライバル店の店長による卑劣な嫌がらせにより
最愛の弟である主人公が困っている、と事実とは異なるウソを恵麻に吹き込んだ黒幕がいます。
それが里伽子です。

里伽子は当初、主人公が店を出店するに当たって
ウエイトレスとして働くよう要請されるも拒絶し、
出店そのものにも反対の立場をとっていました。
しかし、主人公が反対を押し切っていざ出店すると、
頼まれずともこのような策略を立ててまで陰から主人公を助け、支えてくれるようになります。
ですが、主人公が再度ウエイトレスとして働くようにお願いしても
適当な理由をつけ固辞されてしまいますし
姉を説得してくれたお礼に食事へ誘っても断られてしまいます。
でも、店で出すメニューの試食には付き合ってくれたり、
だけど主人公がいる前では食事する姿を頑なに見せなかったり、
大学の講義で主人公が隣に座るとメガネを外してノートも一切とらなくなったりと、
実に意味深で不可解な行動をとります。
また、物語の終盤になると実は里伽子と主人公は過去にキスをしており、
その時の里伽子の反応もまんざらでは無かったりしますが、
後に主人公が告白しても「そんな気は無かった、勘違いさせて申し訳無い」などと
告白を断っている事が判明し、里伽子の行動には一貫性の無い矛盾した点が多く感じられます。

が、しかし。
そんな数多くの疑問点は、ある事実が発覚する事により
全て一本の線となってつながるようになります。
それは、半年前の事故により里伽子の左腕が動かなくなってしまった事です。

主人公を助けるのは、主人公の事が好きだから。
キスをした時にまんざらでなかったのも、主人公が好きだったから。
でも、告白を断ったのは、その時には左腕が動かなくなってしまっていたから。
ウエイトレスにならないのも、食事姿を見せないのも、左腕が動かないから。
そして、その事を隠していたり、相談しなかったのは、怪我の原因が主人公にあるから…。

新たな事実が判明しながらも、今までの疑問点が氷解し、一本の線で結ばれていく様は
思わずやられたなぁと言いたくなるような意外性と納得感があります。
その上で、里伽子がいかに主人公の事が好きだったのか、いかに耐え忍んで来たかが判明し、
キャラクターの魅力につなげることにも成功しており、
丸戸さんは狙ってこういう事が出来るから商売になるんだろうなぁ、と感じました。


実は、今回通算で3回目くらいのプレイを終えて感想を書いていたりします。
初回では気付かない細かな描写も、程よく内容を覚えている今だからこそ気付く部分もあり、
やっぱ名作なんだなぁと感じたりしました。
例えば恵麻ルートの最後の場面など、
恵麻と左手で握手をする里伽子が、
「左手の握手は戦いの握手、恋のライバルとしてこれからスタートラインに立つ」
などと宣言しており、恵麻とのハッピーエンドをコミカルに描きつつも
里伽子が人知れず努力してスタートラインに立つような芯の強い女性、という人物描写もしており
こういった部分でも点と点が結ばれて線になっているなぁと感じました。


話は変わりますが、この作品において
シナリオ面でのメインヒロインは里伽子ですが、
それとは別に、高い人気を誇るヒロインがいます。
カトレアこと花鳥玲愛です。
未だに戯画の公式ツイッターアイコンのキャラクターに選ばれているくらい
根強い人気があり、尚且つ有名なヒロインですが、
街並みの中、夕日をバックに主人公と手をつなぎながら笑顔で歩いているCGも特に有名だと思います。

恋人であるカトレアを自分の店に引き抜くためにライバル店へ行き、
店長へ挨拶しようと意気込む主人公。
しかし緊張のあまり、思わず「玲愛を俺にください」
と言い間違えるという、お約束のポカをやってしまいます。
それを笑いながら、手をつないで一緒に帰るというシーンがあのCGですが、
よく見ると夕日が光っている部分はカトレアの左手薬指の辺りです。
直前の言動とこのCG、2つの点をつなぎ合わせて考えると
「約束の証である指輪こそまだ渡していないが、2人の絆の証は夕日のように輝いて存在している」
という事を表しているように思われます。
元々このCGは綺麗で素晴らしいなーとは思っていましたが
今回のプレイで今更ながらこういう事も表していたんだと気付いた次第だったので
思わず感想を書いてしまいました。

いやぁ、やられたなぁ。