全体的に良かったんだけど、不満点がいくつか。
本作は、祖父から霊視や鬼を使役する力を受け継いだ主人公が
町にさまよう幽霊達を成仏させていくお話です。
このあらすじからわかるように、ゲームの内容としては
不本意な死を強制させられた人たちの悲しみを共有し、
現世に残る未練を晴らし、
最後には輪廻転生を期待し、別れを告げる、
そういった感じになっています。
ですので、完全なハッピーエンドというわけにはいきませんが、
全く救いの無いお話、というわけではないので
「悲しいお話だったけど、せめて少しの救いはあったのかなぁ…」
っていうあの虚無感というか寂寥感というか、
ああいう気分が味わいたい人には良い作品なのではないかと思います。
また、本作ではそうしたマイナスな感情だけでなく
個性的なキャラクター達が交わす日常会話でくすっと笑えるコメディー的な側面や、
鬼のもつサイコメトリーやテレパシーなどといった特殊能力を使って
謎を解き明かしていく推理モノのような側面も持っており、
笑いあり涙ありの良く出来た内容だと思います。
シーン数は22、内訳は
桔梗:1
芙蓉:2
葵:2
アイリス:3
鬼4P:1
伊予:2
梓:3
由美:4
琴莉:3
琴莉&由美:1
尺は少し短めで、量もそんなに多くないので
絵は良いんですがシーン目的ではちょっと厳しいかなという感じです。
ちなみに通常シーンも回想登録されているので、数え方で多少数は前後します。
総評としては、全体的には楽しめた部分が多く、
なかなかよく出来た作品だと思います。
一方で、不満に思う点もいくつかあり、ちょっと勿体無いなという感じもあります。
以下、個人的に感じた不満点をいくつか書きますが、
ネタバレも込みですので未プレイ者はご注意下さい。
不満点その①
本筋と関係無いお話が無い。
これはコンパクトにまとまっている、と言えなくも無いんですが
せっかく1話完結型で色々と出来そうな設定なのに、
結局は本筋と関係のある幽霊しか出てこないので物足りなく感じます。
あんな幽霊やこんな幽霊も登場させて、色々と話を膨らませて
もっとキャラクター達の活躍を見たいと思わせるような内容なのに、
そういった遊びの部分が無いのが少し寂しい。
不満点その②
設定以上の掘り下げが無い。
例えば、伊予は長年主人公の家に住み着いた座敷わらしという設定ですが、
じゃあなんで主人公の家に住み着いたのか、長年居座り続けるのはなぜなのか、
そのきっかけは何か、といったユーザ側が期待するような掘り下げがありません。
主人公の元カノの由美となぜ疎遠になったのかとか、軽く触れられた以上の説明が無く、
えーなんか納得いかないっすわーみたいな、消化不良感が所々に感じられます。
不満点①とちょっとかぶりますが、もうちょい色々膨らませて欲しかったなぁ。
そして、個人的には最大の不満点その③(多分重大ネタバレ)
琴莉が幽霊って分かりやすすぎィ!
本作の重大であろうネタバレシーンに入る前に
琴莉は幽霊なんだろうなーって分かってしまったので
生首が置かれているシーンを見ても「ですよねー」くらいにしか思えませんでした。
なかなか匙加減が難しいのは分かりますが、あまりにも分かりやすいヒントを
出しすぎているので、分からなければもっと楽しめたのかなぁという気分になってしまい
勿体無さを感じてしまいます。
だってねぇ…どこで分かるかって言うと、初対面のシーンで分かっちゃうでしょ、あれ。
「よかった……。親切にしてくれたの、あなた方が初めてです。」
とか言っちゃうんだよ?
まさに
あっ…(察し)
って感じです。
街で出会った自分が死んだと気付いていない幽霊が言いそうなセリフの
ベスト3に入るセリフでしょこれ…。
ウソつきには2種類のウソつきがいます。
意味のあるウソしかつかない人と、意味のないウソもつく人。
もうちょっと意味のない文章を入れるか、一見して意味のない文章に意味を持たせるとか、
そういう工夫をして欲しかったです。
というわけで、本作の不満点を一言であらわすならば、
もうちょっと遊びの部分を増やしたほうが良かったんじゃないかなぁ、という感じです。
ですが、全体的に見てなかなか楽しめる作品であったのは間違いないので
買って良かったと思います。