「妹」を主題にしておきながら、「妹」の扱いが軽い。
主人公には生き別れになった妹がおり、
その妹を探すために施設を出て、生まれ故郷へ辿り着いた所から本作は始まります。
しかし、物語が進むと、主人公は施設にいる妹分の千毬には一言も告げずに
妹探しを始めてしまった事が判明します。
この時点で既に、妹って何だろう?という疑問が浮かび上がってきます。
同じ施設で育ち、同じ姓を与えられた年下の女の子。
共に過ごした年月も長く、そこには絆が生まれているはずです。
それなのに、一言も告げず施設を出た挙句、その理由を
「衝動的につい」で済ませられるほど軽い存在なのでしょうか。
不思議でなりません。
結局、千毬は主人公を追いかけてきて一緒に過ごす事になりますが、
妹が兄を思う気持ちほど、兄は妹を思っておらず軽薄に感じられます。
その軽薄な感じは、主人公の妹探しにおいても同様です。
年下の女の子を見ると、ことあるごとに
「キミ、かわウィーねー!キミが妹だったら嬉しいよ!」と暴走し、
ヒロイン達から
「雪人がお兄ちゃんだったら嬉しい」「お兄ちゃんって呼ぶね」と言われればすぐに兄貴面。
兄妹の関係ってそんなに軽いんでしょうか。
「お兄ちゃんだといいねとキミが言ったら今日から俺はお兄ちゃん記念日」のノリですか?
血縁をあまりにも軽視しすぎているように感じられます。
しかし残念な事に、その流れは実妹を見つけた後にも続きます。
やっと見つけた血のつながった妹。
しかし、その再会を素直に喜ぶだけの状況にはなりません。
苦労が報われて、後はハッピーエンドへ向かう流れにすれば良いのに、
別の問題をチラつかせ、妹一直線へは絶対にさせてくれません。
この「問題」というのが、実妹と結ばれる事により発生する問題ならば良いのですが、
実際には違う方向性の「問題」なのでたちが悪い。
具体的に言うと
結ばれた実妹をとるか、他の女をとるか、という状況になります。
そして、前者だけをとる事はありません。
結局、血縁も軽視されてしまっているのが本作です。
絆でもない、血縁でもない、一体何が妹なのだろう。
Sphereにとってのイモウトノカタチって何なの?と問いたくなる、そんな内容でした。
…個人的にはあやかがヒットだったのと、CG等は良いので70点にしていますが、
妹に期待している人にとっては微妙な作品でしょう。
シナリオも伏線張りっぱなしで回収していませんし…。