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sakanayasanさんのRe:birth colony -Lost azurite-の長文感想

ユーザー
sakanayasan
ゲーム
Re:birth colony -Lost azurite-
ブランド
あっぷりけ
得点
80
参照数
415

一言コメント

好きな色は何色ですか?

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

とりあえず青が好きです、はい

世界を知る為の少年少女の群像劇とメインテーマがはっきりしていて、キャラクターもよく動いていました
仕舞いの部分の開放感はエンターテイメントとして類を見ない出来だったと思います、ただし前作プレイが必要になります
全体的に良く出来ていて満足のいく仕上がりになっていました

前作の”フェイクアズールアーコロジー”と比較すると
テキスト面では会話文以外の地の文がきちんと情景描写として働くようになっていたり、描写の取捨選択を行い過剰描写を感じない様になっていたりと文体自体のレベルの向上が見られました
グラフィック面では塗りが進歩しておりエロゲー的な厚みを持ち艶を感じるCGになっていました
演出面では立ち絵にアニメーションがついていたり、小物類を動かしたりと大分進化していました
エロ面はほぼ同等です、残念なシーンが多かったです
人物面は前作では非現実的なメイン級に対する現実的なサブ級がサブ級を魅力的な人物として引き立てていましたが、本作はメイン、サブ共に平均的で一様な描写であり特に魅力的に思えた人物がいませんでした、全員がそれなりの魅力を備えていましたと言い換えられます
作品単体で評価するならば、掛けるべき予算を掛け出来る中での手間を十分掛けて作った作品、という感じですかね

登場人物の立ち位置が明確で分かりやすく、またキャラクターの表と裏も上手に描写できている為
表の部分では微妙な距離感に基づいて繰り広げられるお茶目な日常パート
裏の部分ではAlphaComplexという別のディストピアモノの読み合い騙し合いプレイを思い出したりと、楽しめました

ヒロインの描写も立ち位置がはっきりしている分、その立ち位置からギャップが見えたときの雰囲気で可愛く見える様に演出されていたり、女の子っぽいめんどくさい会話を持ってきたりと物語の登場人物として好ましく思えました

主人公に関して言うと彼の感情の鍵の部分の描写が後回しにされすぎている為、理解しづらかったです
構成的な倒置法を何に対しても使いすぎており、重要部分の描写はすべて後半に回すというのはライターの悪癖かなと思いました
あとは主人公のブレイクスルーのポイントも良くわからなかったですね、今までの心情描写がしっかりしていた分不満に感じました
また前作同様に個別ルートの事件の根源の部分は4キャラ共ほぼ同じ出来事で
シナリオもこの辺まで来てしまうと新たな情報提示も少なくなり、プレイヤーのテンションは続きません
共通ルートの盛り上がりに比べると物足りなく、グランドエピローグへの消化試合をしてる風な印象です

しかし最後の後片付けの部分はすばらしいかったと思いました
青い世界という単語が持つ意味が隔離され閉鎖されたアクアリウスという世界を表すだけのものにすぎなかったのですが
世界が拡張される事に伴い、それが地球そのものを示す単語として持つ意味を変化させます、この部分はまさに爽快の一言です
特に前作をプレイ済みであれば閉鎖状況に対する思い入れもより強く、地球に対する思い入れもより強く、このシーンで得る爽快感は倍増するでしょう
そしてサービスキャラが出てきたり、群像劇の最後として相応しい登場人物のその後の紹介があったり、アズライトの真の名前(マリンちゃんだと思ったけど全く違いました)が解放されたりと満たされた気分になりました

最初にも書きましたがHシーンは残念仕様です
テキスト描写では一晩中サルの様にやってるはずなのですが、読めるのは一発でその後は省略されていたり、仮想ヒロインを相手にプレイ
さらに主人公は所謂セックス巧者のはずでしたが、プレイ内容は童貞かサルのそれ
アズライトにいたっては良さそうな陵辱もあったのにシーン自体カット
CGは見た時に抜きたくなる位出来が良かったんです、でもテキストが全く抜けないのでした非常に残念です

小説版はSAと出会わなかった場合一体どうなっていたのだろうかというIFストーリー
BADENDでしたが実はアズライトの見る夢の話だったという本作の前日譚です
一本ルートの為早々にキャラが退場したりそれに伴い早々に吹っ切れる行動力のある主人公はゲーム内とは違って見えてなかなかに魅力的でした