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saint19さんの少女マイノリティ -慰めの愛-の長文感想

ユーザー
saint19
ゲーム
少女マイノリティ -慰めの愛-
ブランド
pure more
得点
95
参照数
4334

一言コメント

一度離した手を再び掴むことは出来ないというテーマを上手く描いた物語

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

本作のテーマは「一度離した手を再び掴むことは出来ない。本当に大切ならどんなことがあってもその手を掴み続けなければならない。」というものである。衝撃的な出会いを果たした秋人と凪咲が慰め合うことで築かれていく愛を育む純愛ストーリーである今作において、抜きゲーならではの演出を絡める手腕には思わず息をついてしまう。本作はバッドエンドを経てやり直しの果てにハッピーエンドへと繋がる形式を採用しているが、そこでも先に挙げたテーマが貫かれているのは見事としか言いようがない。振られ役に甘んじてしまう結もまたギミックであると同時にもう一方の主人公でもあるのだ。
男性キャラクターはクラスメイトだけではなくキャラが立っていて徹頭徹尾格好良く描かれているはずの梵戸さんまで空気である。これは主人公二人の関係にスポットを絞るために意図的に行われて演出だろうと考えている。
このブランドは姉妹ブランドも含めてシナリオでメインとなるヒロインは一人だけで、他はサブと言ってもよい手法(それも、近年はpure moreを除けば、キャラクター紹介欄の二人目がメイン)を大半の作品で貫いているが、今回はシナリオロックを掛けたことで作り手が意図しているであろう演出にユーザーを誘導できていると言って良いだろうか。

個人的に好きなシーンは自転車二人乗り。学生の純愛ものには欠かせないと思っているだけに、入れてくれて嬉しい限り。

原画はこのブランドの看板イラストレーターである南浜氏とメインキャラクターは初めてという北風氏。注目したいのは北風氏で、メインの先輩絵師の画風に寄り添いながらも、メインキャラの中で一人立ち位置がやや離れている綾子を描くための独自路線を上手く創りあげている。これからが楽しみなイラストレーターである。

余談だが、主要登場人物は東北地方の戦国武将(片倉、伊達、最上、相馬)から採られており、山口県(長州)を発祥とする大手衣料品メーカーに屈しなければならないというストーリーをなぞっていてなかなか面白い。