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saint19さんのヒマワリと恋の記憶の長文感想

ユーザー
saint19
ゲーム
ヒマワリと恋の記憶
ブランド
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得点
95
参照数
2094

一言コメント

離した手を再び繋ぐのは天使の奇跡

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

一度手放してしまえば、二度とその手を繋ぐことはない。だからこそ、それを可能にするには人ならざる者の介入が必要なのだというメッセージが伝わってくる作品である。本当に手を取り続けなければならないものは何か、このメッセージにはどれだけ年齢を重ねていたとしても向き合わなければならないものだと考える。

歌茜とでも言うべきか、夢乃氏は良い仕事を見つけられたものだと思う。EDがこの物語を余すところなく表現しているだけあり、歌いこなすには相応の技量が求められるものだが、見事に彼女の作品として紡ぎ上げているのだ。男性向け18禁ゲームのEDというのがある意味とても惜しい。大人の事情もあってなかなか表で歌えるものでもないだろう。

さて、この作品では主人公の一人である元倉優が主人公の一人である月浦亜依と天使の助力を経て最後の主人公である荻浜茜との愛情を取り戻す物語なのだが、天使の奇跡の範疇から漏れていたために救われなかった男がいる。門脇隼人だ。この物語では描かれなかったが、彼にも救いがあったことを見せて欲しいと心より願うものである。カナルートでは過去を克服していたが、それは優の「もしも」であり、現実の彼が克服できていたわけではないのだから。trueルートで実家に戻った優、そしてカナと改めて辛さを乗り越えられたらとも。
それとは別に、鶴岡君は別のクラスの三つ編み眼鏡の子を好きだと言っていたが、彼の恋も成就していればとは思う。気の多いお調子者に見えて、実は彼も根っこでは一途であるように思われるのだ。その意味では、イレギュラーな要素であった汐里が目覚めたとき、「元倉優」という本編の主人公とは別の人物と頑張って生きていく姿が少しでも見られたのは嬉しいことだ。彼女がいわば混線したのは自分にとって大事な人と同姓同名だったからかもしれないと思うと、なかなか乙なものがある。
それにしても、自らを不良と名乗る亜依の謎は物語が進むにつれて解答が明示されるわけだが、それ自体も物語の真理に繋がっているというのもまた…。

いずれにしても、この作品の直接の前作とも言える契約彼女からここまで良くなっているとは思わなかった。大化けした良作。


攻略順は
カナ→汐里→亜依→茜
この順番以外は勧められないので注意されたい。ここまでtrueルートを強調するならば、攻略はこの順番で固定しても良かったのではないかと思うほどだ。