ErogameScape -エロゲー批評空間-

sai。さんのAliveZの長文感想

ユーザー
sai。
ゲーム
AliveZ
ブランド
ALICESOFT
得点
87
参照数
461

一言コメント

やっぱりとりさんはいい。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

このゲームをプレイ中は批評空間には殆ど来ることはなく、コンシューマ版にたまに寄るぐらいしかなかった自分には今現在アライヴズの点数を見て驚き。

「なんでこんなに批判されてるの???」

かなり昔にやったアンビバレンツよりも個人的にはかなり面白かったと思うんですけど。

他のレビュアーさんの感想を一通り拝見させて頂きました。それで低評価している皆さんのアライヴズのここが悪いと感じた部分を箇条書きにしてみると?

・主人公がよくわからない
・回想シーンが多い

この二つがどうやら指摘されているようです。特に回想に関しての比重が高いみたい。

・主人公がよくわからない
これは確かに思いました。というかプレイしながら自分もあまり好きになれずきっと批評空間でも叩かれているだろうなぁと思ってたぐらいなんで。

・回想シーンが多い
これが物語の流れ、テンポを悪く冗長にしているということらしいですが、自分にはあまりそうは思わなかった。
最初がいきなり芙蓉と骸が一騎打ちしているシーンから入ります、そこからMelting pot、黒と白の存在等このゲームの核みたいな言葉が一気に来ます。
一騎打ちしながら骸の「どうしてお前が普通の人を殺しているんだ」「お前の妹のいばらが悲しむだろうが!!」
ああ、この芙蓉という男は普段はこんな奴ではなくいばらという妹がいるのか。
スンヤ、ドリーの名前も出てきたりしますが最初のこの時点ではわけわかめ。
なんだかたくさん登場人物が出てきますが一体誰でどういうやつらなんだこいつらは?みたいな感じで始まりかっこいいオープニングに突入。
とまぁ最初で色んな疑問を残して後々明かされる手法なんだろうなとわかっていたので気にせず。初めの掴みとしてはばっちしでした。
回想が多いことでその分、色んなキャラクターの過去ストーリーがかいま観れるので自分は得な感じがしましたけどね。芙蓉がこんなに陽気なやつだったとか実験体にされていたドリーを救出したり、そんなドリーと一緒に山で遭難したときいばらが一生懸命になって膝をボロボロにしてまで助けに来てくれたなどそんな細かいエピソードが詰め込まれていたのでどんなキャラクターにも感情移入しやすかった。回想シーンが多かったことで。
個人的には、リコリス「・・・・・・」銑鉄「さ、紗夜鳴なのか?」

回想
この流れが秀逸でした。
まさかリコリスがあのとき行方不明になっていた銑鉄の娘だったのかということで身震い。リコリスは何で無口で喋らないのかということもようやくここで分かって気持ちのいいカタルシスを感じました。
さっきも書きましたが回想が多いことでキャラクターの一人一人の関係性が明らかになっていきキャラクターの魅力を出来るだけ引き出したかったであろうとりさんの手法は見事であったといえます。。
簡潔に言うと回想がくどくて頻繁だと感じる人は、あまり一気にやらないで2週間ぐらいかけてたまにちょくちょく遊ぶ程度にやればさほど気にならないと思います。

しかし最後までプレイして悲しい話だと思いました。
芙蓉は自分がほれたスンヤを救いたかっただけ。ただそれだけ。そんな単純明快でとても純粋で大切な事が芙蓉の行動原理であった。
骸はかなり物語に関わってはいたけどそれはただ身近にいた大切な人を、芙蓉たちを助けたかっただけでそうでなければ関わることはなかった。
ただ巻き込まれていただけなのだ。骸は。
そういう意味では骸も被害者。芙蓉も被害者。悪いのはあの水晶宮である。
その事に関して骸も綺羅に当たり散らしていた。
誰も悪くはないんだ!悪いのはあんなものが地上に出てきたてめぇの前世のせいじゃねーか!と。
そんな綺羅もそのことに関しては悪いとは思っていた。
だからこそ自分が次の裏、姫になり、あの中に入って少しでも償いがしたかったのだ。
そんな綺羅を責める人は誰もいるわけがない、しかしすべてを変えてしまった15年前の出来事。
あの水晶宮がなければ「ジジババになって死ぬまで一緒にいよう」そのプロポーズどおり幸せになれたであろう芙蓉やスンヤ、暖かな家庭のまま過ごせたであろう銑鉄親子。
そんな楽しい事もあったかもしれない。
でも起きた。これが正史。
ばっちゃがいったようにそれは必然であった。運命は変えられず
芙蓉が黒になったことも必然であったのだ。

どうでもいいですが終盤の天使の翼をつけた芙蓉との対決のビジュアルや戦闘エフェクトがRPGのラスボス戦みたいな感じで面白かった。それをRPGではなくアドベンチャーでやるというのがちょっと不思議な感覚。
このゲームが楽しめた方には同社のデアボリカもお勧めします。
デアボリカは最後以外はなかなか面白いですよ。とりさんもエンディングは、本当は別のものを考えていたのだけれど一般ウケするようにあのエンディングにしたとか。
自分的には、あのエンディングは納得いかないんで最後までとりさんのやりたいようにやって欲しかったなぁというのがデアボリカで残念に感じた部分。ですがマイナーだけど面白いですよデアボリカ。
やっぱりとりさんはいいですね。