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sagamiharaさんのリトルバスターズ!エクスタシー 全年齢対象版の長文感想

ユーザー
sagamihara
ゲーム
リトルバスターズ!エクスタシー 全年齢対象版
ブランド
Key
得点
95
参照数
302

一言コメント

良い友情もの。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

長いシナリオだけど、緩急がしっかりしていて中だるみしないのは素晴らしい。日常シーンも面白いし、その日常シーンを背景にしてシリアスシーンを盛り上げるストーリーの軸も素晴らしい。

朱鷺戸沙耶の存在が、安っぽくなりがちな奇跡の重みを救っているように思う。無論、沙耶がいなくても、奇跡に至るまでの直枝理樹と棗鈴の努力が、プレイヤーが追体験するように描かれているので、その奇跡は決して軽くはないのだが、ストーリーの中で一発逆転の奇跡が決定打としてあると、どうしてもご都合展開のように感じられてしまう。その点、奇跡の無かった第三者の亡霊である沙耶の存在を描くことで、奇跡の貴重さが、本作では維持されている。

とはいえ、沙耶の設定にベタ過ぎる特殊さを持ち込んだのが玉に瑕。あのキャラ造形と孤独を描くのに、あんな大風呂敷を広げたような設定はいらなかった。主人公達と住んでいる世界が違っていたというのは必要な設定だが、その世界は主人公達と表裏の関係にあるべきだった。沙耶を特殊すぎる人間にしてしまっては、彼女の孤独な状況が主人公達の情に溢れた状況と決定的にかけ離れたものとされてしまう。奇跡が起こらないのもその特殊性に回収されてしまう。沙耶の存在が主人公達の奇跡に重みを持たせているのは確かだが、その奇跡こそが特殊であるべきで、沙耶の過剰な特殊さが奇跡の特殊さを消してしまっている。あれほどの奇跡は貴重であると同時に特殊でもあるべきであったと思う。