ErogameScape -エロゲー批評空間-

saberaltoriaさんのキミとボクとエデンの林檎の長文感想

ユーザー
saberaltoria
ゲーム
キミとボクとエデンの林檎
ブランド
ALMA
得点
40
参照数
578

一言コメント

何書きたいのかよく分からない、中途半端な作品

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

購入理由の1つだし、絵の質は良い感じ。ただ、差分が無さ過ぎる。基本、Hシーンで外に出す場合以外は無い。もう少し、表情差分だけでもあっても良いんじゃないか。

琉奈の身代わりに女子校に通うって設定は別に問題無いんだけど、あまりに身代わりが上手く行き過ぎている。身代わりをしろと言われた次の日から、全く新しい環境で3年会ってなかった異性の真似とか無理だろ。人間関係の理解だけでも時間足りないし、それ以上に立ち居振る舞いが絶望的。姿勢や歩き方、何気ない仕草1つでも、変われば相当違和感がある。それに、普段の声の違いは無視するとしても歌声は流石にばれるだろ。声だけでなく歌い方とかもあるし、そんな違いを声楽教師が見逃すとは思えない。
せめて数日準備期間あってから身代わり開始っていうなら分かるが、他人の真似なんて見た目が似てるだけじゃとても出来ない。
また、逆に主人公が身代わりをする上で意図してリスキーな行動を取るのも不自然。かれんに見つかった事を何故琉奈に隠したのか。何故雪乃を宝生さんと呼ぶのか(琉奈本人は雪乃と呼ぶので、身代わりする上では雪乃と呼ぶのが普通)。

あと、智哉が無理。琉星は声無しだから気にならなかったが、智哉は女学生と言うよりオカマやオネエっぽい。それを意図して演じてるならまだしも、失敗してそうなってしまった感じで見苦しい。また、初登場時に琉奈(琉星)の態度に対してつれないと言ってたが、あれは一体何だったのか。見知った間柄なら分かるが、琉奈は智哉の事を全く知らない。まさか、自分は初対面の女の子からも気さくに接してもらえるとか思ってる痛い子なの?



序~中盤で琉奈・琴音√と雪乃√・七海√(一応、後半2人も共通部分あるけど、感想述べる程の長さじゃないので略)に分岐。以下√等感想。

①琉奈・琴音√共通
カナリ不満有。上記の序~中盤での分岐後の流れが完全に琉奈に向いている。琴音に目を向ける様な選択肢もあるが、琉奈との件から目を逸らす為の逃げ口の様に見えて仕方が無い。本番までは行かないが、琉奈とのHシーンまであるし。
逆に、琉奈に目を向ける様な選択肢を選んだ場合はしっかり琉奈に向き合うのかと言えば、そうじゃない。何だかんだで目を逸らして逃げの姿勢。『王子様』としての凛々しさを強調するイベントもあるが、恋愛面では情けな過ぎる。


②琉奈
ずるいって印象。琴音の許婚って立場や好意を知ってて、それでも琉星が好きって所までは良い。琉星を惑わせる様な言動を取って、かと言って自分からははっきり気持ちを伝えようともせずに、あわよくば琉星に一線を越えさせようって姿勢はいただけない。同意の上とは言え、琉星にも相当迷惑掛けてるのに、やってる行動が中途半端。もっとストレートに気持ちぶつけてたら寧ろ良かったのに。

智哉の退場も呆気無さ過ぎる。女装して女学院に通うまでして近付いたのに、琉星に殴られ一喝されただけで退場とか。上記の通り女装が気持ち悪かったが、最後に琉奈に散々に汚物毒物扱いされてちょっと可哀想になったw

ストーリー面も微妙。大きな節目だったクリスマス公演が全く描かれないってのはびっくりした。勿論悪い意味で。
付き合い始めて以降も、イチャラブというより唯の堕落。お互い今一緒に居る事しか見てない。一緒に居る為に学校辞めて2人でニューヨークへって所でEND。現実から逃げただけで、私にとってはBADENDに近い。


③琴音
自分は人形だって言ってるが、ホントその通り。全く意思が無いって訳じゃないが、家からの指示に対して従順過ぎる。家から琉星との婚約を破棄する方針だと伝えられた途端琉星から距離を取ろうとするし。伝えられて、迷って、それでもやっぱり距離を取るって言うなら分かるが、迷う様な描写も無い。琴音自身に好きだという感情があるのなら、もう少し迷うだろ。好きだ好きだと言っても、迷わず家を選ぶ様では、言葉に重みが全く無い。
で、きっちり諦めるのかと思いきや、琉星に好きだと言われればほいほいと流れる始末。あれほど厳守していた家からの指示をあっさり反故にするとか、キャラぶれ過ぎ。或いは、家に対してだけでなく、それ以外の人間にも人形状態なの?
そもそも、好きになった要因は琉奈から琉星の話を聞かされた事。琉星に恋をしたと言うより、琉奈の語る琉星像に恋したって感じ。
見た目も可愛いし声も桐谷さんとの事で購入理由の1つだったが、期待外れだった。

あと、婚約破棄の件も不自然。いくら琉星が鏑木の本家ではなく分家とは言え、本家も関与した婚約だった筈。名家同士、破棄する事は相手の家に泥を塗る結果になるので、曖昧な理由で破棄するとは思えない。琉星が病気で学校を長期間休んでるらしいって情報が理由らしいが、長期間って言っても1ヵ月以下。それに、『らしい』って言葉の通りはっきりと把握は出来てない。こんな状態で婚約破棄なんてしないだろ。

更に、琉奈に関する感想になるが、あっさり身を引いちゃうのもしっくり来ない。琉星には琴音がお似合いだと思ってるのなら、何故手を出す様な真似をしたのか。双子かもって事も前々から考えていた節があるし、今更になって強い想いを諦める要因になるとは思えない。
前の琉奈√は婚約破棄が理由で琴音が離れ、琴音√では琉奈が気持ちを諦めて離れ、琉星はそれぞれ残ったヒロインとくっ付いたって感じ。少なくとも、琉星が自分で選んだ様には全く見えない。普通に、琉奈が好きだから琴音を振る、琴音が好きだから琉奈を振るって分岐の仕方でいいのに。

ストーリーも変わらず微妙。人形な状態から成長する訳でもなく、付き合って以降はデートシーンとHシーンと智哉の(気持ち悪い)見せ場があるだけ。


④雪乃
キャラが弱い。一応、個性が無い訳では無いが・・・共通部分でふと耳にした音楽に執着するから音楽が大きな要素なのかと思いきや、そうでもない。父親の職業ネタも何かに絡めてくるのかと思いきや、これもまたそうじゃない。天然ボケ(と言うよりは知障っぽい?)なのか数時間自分がノーパンなのに気付かなかったり、やたら味音痴だったりと個性を詰め込んだ結果、キャラにまとまりが無く逆に個性が弱く感じる。

琉星が雪乃に惹かれるのが早過ぎる。名前でなく敢えて苗字で呼ぶ様な相手なのに・・・。Hシーンもムラムラしたからやりましたってパターンばかりだし、恋愛って言うより性欲って感じが強い。

ストーリーも微妙。雪乃自身が殆ど成長しない。音楽講師から雪乃の音楽に対するスタンスや自身の曲を守る事について指摘を貰ってたにも関わらず、いざ音楽講師の反対を押し切っての音楽事務所の人間との打ち合わせで、どうすれば良いのか分からないと言い出す始末。しかも、自分が答えを出すのではなく琉星が助けてくれると思ってた様だ。一応、琉星の助勢もあって自身の意見を出し押し通しはしたが、とても成長とは言い難い。
学園から追い出される事覚悟でデビューしようとしたのに、失敗したら別に誰かに聞いてもらえればそれで良いとか言い始める。デビューに関してはそんなに弱い希望だったの? 琉星まで巻き込んでおきながら? 無いわ~。


⑤七海
七海が琉星に惚れるのが早過ぎる。つい最近まで自分とは全然違う憧れの人で友達とは恐れ多くて言えないって状態だったのに。仲良くなり始めた近日の出来事についても、別段惚れてしまう様な強烈なイベントは無かった。そんな状態で好きだとか言っても、イマイチ中身が伴っていない様に感じる。恋愛じゃなくて憧憬なんじゃないか。
おまけに、憧れていた琉奈像って言うのが『自分を作ることなく、自然に振舞ってて・・・それなのに、あんなに格好良くて優しくて。~』。後半部分の格好良いや優しいはまぁ否定しないが、前半は完全に外れてる。琉奈本人は琉星の真似をして振舞ってたし、琉星も琉奈の身代わりとして振舞っている。どっちに対しての評価なのかは分からないが、どちらも自分偽りまくってるよ。

主人公も相当酷い。七海が勘違いしての告白後に七海のと関係がギクシャクした事に対して、告白は勘違いという事で解決したはずだ、いつも通りの2人に戻りたいとか考えてる。いやいや、それでも告白した事に変わり無いし、全然解決してねーよ。その告白に対して向き合おうともせずにいつも通りの2人に戻りたいとか・・・無いわ。で、曖昧な関係のまま気持ちも伝えずキスしちゃうし。好きなら好きと伝えろよ。琉奈の身代わりだから自重するって言うなら、未練がましく近寄ろうとするなよ。いつまでも『恋人ごっこ』って言葉に逃げて、七海にはっきり好きだって告白された事は忘れてるの?

琉星がたるるの飼い主として名乗り出る場面も、『自分の身を呈してでも~』とか言ってるがダメージを受けたのは琉奈だよね。そんな行為で七海の信頼を取り戻そうとかね・・・。しかも、結果的には助かったが下手すりゃ琉奈が学園辞める羽目になってた。一応実行時には本人の同意は得ているが、よくもこんな身勝手な提案が出来たな。それに、七海も琉星(実際には琉奈がだけど)1人が責任被って助けてもらっても喜べないだろう。
あと、たるるを取り戻して事情を説明した後のCGがね・・・七海が琉奈ではなく琉星が好きと告白する場面なのだが、たるるの表情がシリアスさをぶち壊しにしてる。まぁ大したシリアスでもないし結構笑ったから、楽しめたかどうかで言えば寧ろプラスかもしれないw


⑥かれん
前4人の√とは全く異なる内容。
他の√が基本的に琉奈のフリをして好感度稼ぐのに対して、この√は琉星が自分自身で勝負してる分良かった。まぁ、勝負してるって言う程何か働きかけてる訳じゃないし、正体を偽らない程度だが。

優等生って設定の割に漢字に弱過ぎる。いや、日本語自体も問題有か。ハイレベルな物を求められると難しいって程度ならまだしも、小学生レベルの間違いすらやってしまうとか・・・そんな状態の人間が日本語で書かれた問題に対して正しく日本語で、かつ優等生と言われる程の正答率で解答出来るとは思えない。別に物語上必要な設定でもないし、何でこんな設定付けたのか。

英語で話してるってシチュエーションが幾つかあるのだけど、ここは英語で話してますって明示されない。会話の途中で訛りが~って地の文が出てきてようやく英語で話してたんだって気が付く。英語で話す部分は『』を使うとか英文も並べて表記するとかさ、分かる様にテキスト書いてくれよ。

そして何より、終盤のトンデモ展開。何だこれ・・・。





女装して女学園にってネタも、名家って設定も、イマイチ使い切れてない。
そもそも作品自体、何を描きたいのかが全く伝わって来ない。別に、ストーリー勝負の作品でも良いし、ストーリーの中身が無いキャラゲーやエロ重視な作品でも別に良い。でも、これはどれも中途半端。ストーリーは薄く、主人公もヒロインも成長しないのでそういう面白さも無い。キャラ魅力を推す描写も少ないのでキャラゲーとしても力不足。Hシーンも大して多くなくて内容も特筆する程濃くない為、エロ重視とも言い難い。ギャグ要素も薄い。おまけに、ストーリーが薄いだけでなく余計な描写や設定でヒロインの魅力を落としてしまってる。ぶっちゃけ、公式HPで絵と声だけ確認した状態の時が一番魅力を感じてた。

で、ヒロイン以上に琉星の株が大暴落した。どうでも良い場面では格好良く振舞うが、要所要素ではダメダメ。琉奈や琴音の√では残ったヒロインとくっ付いただけ、雪乃や七海の√では琉奈として振舞いつつ距離を縮めてる。一応、付き合う前には琉星だと説明してはいるが、タイミング的に遅過ぎる。悪い言い方をすれば、琉奈の立場や評価を利用して近付いて好感度稼いで、好きになってもらってる。騙してる様なものだ。そんな状態で実は琉星なんだと明かすのはなぁ・・・それでもやっぱり好きってなってもそれはそれで卑怯だし、やっぱり駄目ってなったら相手を傷付ける結果になる。
結局、雪乃は琉奈と琉星は同一人物(琉奈自体が実は男で正体は琉星)って勘違いし続けてるっぽいし、七海も最後の最後には理解するが同様の勘違いをしてた。
他にも、相手が自分に好意を持ってると分かった時の最後の一押しや、余程そうせざるを得ない状況では積極的に行動するが、それ以外はひたすら自分からは動かない。相手の動き待ち。兎に角、恋愛面でせこ過ぎる。