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s15100223zさんのさかしき人にみるこころの長文感想

ユーザー
s15100223z
ゲーム
さかしき人にみるこころ
ブランド
light
得点
90
参照数
488

一言コメント

メインヒロインに癖あり。後半の流れは今一つか。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

○ストーリー
 特に奇をてらった要素もない学園もの。そのぶん、登場キャラが非常に個性的です(後述)。
 お話としては初対面でもあるにもかかわらずヒロインの亜利美に毛嫌いされてしまった主人公の一重がなんとか彼女に振り向いてもらおうといろいろ努力するお話。
 本作の最大の売りは「一重と亜利美による軽妙洒脱な言葉のやり取り」にあるといえます。歴史、経済、生物学など様々な分野の知識を駆使しながら舌戦を交わす二人をどう受け取るかで評価が分かれると思います。
 「衒学的(知識をひけらかすさま)」という言葉がある通り、二人とも難解な言葉や薀蓄を使って相手をうならせてやろうと躍起です。特に序盤はこうしたやり取りが多く、等身大?の高校生のコミュニケーションを見たい方にとっては少々ストレスになるかもしれません。逆に、普通の高校生では行われないような学術チックなやりとりがお好きであれば二人のかけあいにはまること請け合いです。
実際、会話のテンポはとても良くてさながら夫婦漫才をみているよう。その中で吐露される、二人の心情。好感度マイナスから始まった二人の関係が互いに愛し合う関係に至るまでの過程がとても細やかに描かれており、亜利奈が徐々に一重に対して心を開いていくさまが伝わったのがよかったです。
ストーリーに苦言を呈するのであれば結ばれてからの後半戦の流れが少々お粗末に感じました。Hシーンが後半に集中することはよくあるのですが、本作ではそれしかなかった感が(笑)。とにかくHの繰り返しであり、まあこの中で二人の関係がちゃんと醸成されていたのでいいのかな、とも思いました。ですが、もう少し日常シーンの中での親密なやり取りがあってもよかったのではないでしょうか。
そしてEDに向けての収束具合もやや物足りなかったです。きっかけとなるイベントが急に始まり、しかもすぐに解決してしまった感があり、それまでの過程を考えるとやや急ぎ足であった感が否めません。

○登場人物
 メインヒロインの亜利美は「クールビューティー」を地で行く人物。あまり人を近づけない冷たさを持っていますが、一重を「ぶっとんだ理由」で毛嫌いしちゃったり、趣味の話になると暴走しがちになったりとはちゃめちゃな一面もあり、とても好感が持てる人物でした。
 医者の倫理に縛られがちであるがために、無闇に他者とコミュニケーションをとることができないなか、一重と出会い、彼に愛されることで感情いっぱいに行動するようになる彼女は、とても可愛らしくて「成長したなぁ」と実感しました。
 同じことは主人公の一重にも言えます。亜利美とは逆で人に嫌われたくないためにとかく均一的なコミュニケーションをとることを身上としてきた彼でしたが、彼女と出会うことで、他者を気にせず自分の想いに素直になっていくような人物へと変わっていくさまはなんだかかっこよかったです。「偽善も善なり」というかつてのモットーと向き合う描写がお気に入り。
 自分の世界に閉じこもりがちだった二人でしたが、同じような境遇を持つ者と出会い、互いに共鳴することで新しい世界が広がった。しかも二人手を取ってその世界を歩んでいくEDの描写はとても素晴らしかったです。

○Hシーン
 後半に集中しすぎな感が否めず、シナリオのバランスをやや欠いているようにも思えましたが、一つ一つのシーンに込められた二人の甘やかな感情にはほんとにあてられました。もう、ね。ほんとにお互いのことが好きなんだな、と実感できるくらいに愛し合っています。実用度の面でも悪くありませんし、お腹いっぱいです。

後半のシナリオの疑問点を除けばほんとに完璧です。衒学的ないちゃラブストーリー、ぜひ皆さん楽しんでいただきたいです。