ErogameScape -エロゲー批評空間-

s0meokさんの九十九の奏 ~欠け月の夜想曲~の長文感想

ユーザー
s0meok
ゲーム
九十九の奏 ~欠け月の夜想曲~
ブランド
SkyFish
得点
75
参照数
1238

一言コメント

プロットと設定は完璧だった。しかし、エロが薄く、仕上げも悪く、製作期間が足りなかったんだろうなという作品でした。期待していただけに残念です。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

コンプしたので、レビューを。

まず、最初に言っておくべきこととして、ほぼ1本道でした。

9月は激戦区でしたが地味にダークホース的に一番期待だったので残念です。



1→2[A,B,C]→3→4[A,B,C]→…→エンド→エピローグ
という感じに、選択肢で細々とした分岐はあるものの各ルート8割がた同じと考えていいと思います。
1ルートクリアすれば物語の全貌もすべてわかるかと。

そして、攻略ヒロインについてですが、なんで玉ちゃんが攻略できない!?、という少数意見?は無視するにしても、
公式での紹介やサンプルの扱いから、鳴(紹介は2番目ですよ)、聖月の2名が攻略できず、
伏、愛那、花蓮の3名のみというのが詐欺くさいです。

エンディングの配分は全17個で、
BAD:11個(1~11)
花蓮:1(12)
愛那:1(13)
伏:1(14)
花蓮(伏が消滅):1(15)
愛那(伏が消滅):1(16)
伏(True?):1(17)
のようになっていました。

伏Trueエンドでは、伏エンドの後、葛折町で事件を解決した一行が今度は東京で
九十九神絡みの事件を解決するぜ、まあ要するに、俺たちの戦いはこれからだ!
とよくわからないエピローグが付きます。
ぶっちゃけこれはいらないだろ。
しかも最初に公開されたキービジュアルで伏が和服を着ているのですが、作中で和服は一切登場せず(四君子伊織が着ているくらい)、
なぜか、この謎のエピローグでは使いまわし的に「お護りするであります」の台詞と一緒に出てきてエンドでした。
ほんとになぜ初期のキービジュアルに和服使ったのでしょうか?謎です。


また、シナリオはほぼ一本道で、細々とした分岐だけと書いたのですが、
この細々した部分もちゃんと管理できていないようで、例えば、馬頭琴関連で、
2-Aは、学園で花蓮が馬頭琴の頭を持っていたりや、鼎が馬頭琴や龍馬の昔話を解説するシーン、
2-Bは、四君子の蔵の整理に行くシーン
と分かれる場合、2-Bを選んでも、3で2-Aの情報が既知になっていたりして、
馬頭琴関連のシナリオを1週目にプレイした時、花蓮が頭を持っていたとか、龍馬と少女の話が突如出てきて驚きました。

また、初回で花蓮ルートだったのですが、花蓮に好きだと告白した後に、
聖月とのエロシーンに突入した際には目をむきました。
しかも他ヒロインルートでも発生するかもしれないので、完全に管理ミスではないかと思います。

これは、推測ですが、8月に1度延期した段階で、ばらばらに書き上げられていたシナリオを突貫作業で組み立てた結果、
ほぼ一本道、情報の管理が出来ていないという有様になってしまったのではないかと思います。
要するに製作期間が足りなかったのだろうなと。


続いてバトルシーンですが、盛り上がるのは最初の白蛇精とラストのドロウだけではないかと思います。
龍馬、山立姫とのバトルについては、疾走感や緊迫感に欠けました。
原因としては、テキストはもちろんのこと、BGMとCGも1つではないかと思います。
龍馬とのバトルでは、BGMは無音が基本でパカラパカラと足音のみ聞こえるという演出は失笑物でしたし、
山立姫も1枚絵なしで、立ち絵のみあるのですが、羽を広げて火がゴウゴウとかされてもいまいち緊迫感がありませんでした。
あと、炎のエフェクトが重いのも難点です。展開が鈍くなってしまっています
立ち絵と立ち絵差分、エフェクトで誤魔化していますが、1枚絵もないと迫力がないんですよね。
五反田?の人は基本勝手に死ぬのでバトルにはカウントしません。
それなりのスペックのPCを使っているのですが、ムーンストーンやSKYFISHで使われているこのエンジンは
どうにも重いので、普通の萌えゲーならともかく、スピード感が必要なホラーやバトルを含むゲームには向かない気がします。
もうちょっとエンジンの改良が必要ではないかと。
虹翼のソレイユの時も思ったのですが、このメーカーさんバトル演出については、
ニトロとかlightとか既存メーカーさんを参考にするなりして、もうちょっと勉強したほうがいいんじゃないかと思います。


以上、シナリオ関係で難点を挙げていったのですが、設定とプロットはほぼ完璧だったと断言できます。
伏が八房声を聞けない、聖月の「絶交」発言、四君子伊織の2人の子供、玉梓の正体などなど、
散りばめれた伏線は見事に回収されていました。
最近は散りばめるだけ散りばめて回収しないゲームも多いので、逆にここまで完成図が出来上がっていて、
仕上げに失敗してしまうパターンというのは、そこが1番難しいところとはいえ、非常にもったいないと思います。
七つのふしぎの終わるとき といいなぜか期待した作品はこのパターンが多かったりするので悔しいです。

おそらくテンポの悪さも難点でしょう。
正直1ルート攻略すればすべてわかるようになってしまっているのですが、
地味に情報量が多いので、だんだんこんがらがってくるんですね。
せっかく複数ヒロインというエロゲーの利点があるのですから、各ヒロインごとに情報を小出しにしていけば、
1つわかって、また謎が出て気になる、みたいな効果も出て、ユーザーにしてもわかりやすくなると思います。

伏を真ルートにして、愛那、花蓮にもエピローグだけでなく、個別のシナリオ、エンディングを用意して、
徐々に伏線を回収していけば、一本道で情報が多すぎてグダグダすることもなくすっきりしますし、
その上でドロウとのラストバトルで綺麗に締めるみたいな形にできれば多少バトルがもっさりしていても、
名作認定できたのになあと思います。
ほんとうに設定とプロットは完璧だったのに。




CGについては、1枚1枚の質は、本家?さえき北斗(暁ワークス)に劣らないどころか、
個人的には圧倒しているのではないかと思わされる出来で、
関係ないブランドですがクロシェットと同レベルのパンツの仕上げには感動しました。
全枚数が60枚程度とやや少なめな気はしましたが、質を考えれば納得できなくもなかったものの、
せめて差分はしっかりと作成して欲しかったです。
ゲーム開始初っ端の愛那とのエッチシーンでもパンツの染みとか、バックの陰茎や中出しの精液を始めとして、
全体的にエロシーンCGの差分の少なさが目立ち、やはり開発期間の不足がうかがえます。
あと、エクストラに収録するほどでもなく、標準的なものなので、
背景とかを入れて水増しするのはやめて欲しかったです。

CGに関連してエロシーンですね、内分けは
伏:3回(1回は前戯のみ)
美琴:1回
鳴:1回(オナニーのみ)
愛那:4回(1回は前戯のみ)
花蓮:4回(3回は前戯のみ、本番は1回かよ!)
聖月:3回(李砂との百合2回)
というわけで、回想は全16個で本番は半分の8回だけ、たったの8回です。
しかもどのエロシーンも短いんですよね。挿入後10クリック程度で終わってしまうのとかばかりです。
サンプルCGから最低でもエロシーンには期待できると思っていて、
花蓮のバックで縞パン丸出しCGとかすごく好みだったし、
聖月は、事故パイ揉みCGの黒ストの出来はすごく良かったので、素敵な黒ストエッチに期待していたのですが、
本当に残念な結果でした。

ほんとうにCG1枚1枚の質は激戦区9月の中でも随一と言っても良いレベルだと思うのですが、
如何せん差分の少なさ、エロシーンテキストの短さが足を引っ張ります。
繰り返しますがCGのむっちり感の素晴らしさもあって、エロには期待していました。
ソレイユシリーズやポチとご主人様のシナリオの人たちが書いているので、
最低限は大丈夫だと思っていたのですが、どうしてこうなってしまったのか不思議でなりません。
シナリオでこけても許すので、エロシーンだけは満足のいくものに仕上げて欲しいです。
20個満足のいくエロシーンさえあれば、1エロシーンに500円払ったと思えば、なんとか納得できるので。
頼むよ!!



BGMと歌について、ゲーム自体が九十九神を題材にしているだけあって、
楽曲は全て和風テイストに仕上げられていてどれも上質でした。
ただ「闇が来る」だけは音が弱くてゲームプレイ中に流れているのかわからないのが難点ではありましたが。
あと、ゲーム中でのBGMの割り当てもやはり突貫作業の影響なのか、
バトルシーンなどでの無音が目立ったり、シリアスシーンやエロシーンで日常やコミカルなBGMが流れたり(切り替えがなくそのままだったり)
と作りこみの甘さが目立ちます。
中でも、オープニング主題歌の「欠け月の夜に」は、このゲーム自体が仕上がりはともかくプロットと設定は完璧だったので、
それをまとめあげた歌詞は鳥肌もので、ゲーム主題歌の醍醐味をしっかりと踏襲していて、手放しに褒めたいです。
marinaという初めて聞いた方のなんですが、いとうかなこの声を少し高くしたような歌声でアップテンポな中、しっとりと歌い上げていらっしゃいます。
EDもRitaでポップな楽曲になっていました。


以上、全体的にだいたいレビューできたと思います。
設定とプロットは完璧なのに、エロの薄さと仕上げの悪さで名作になり損ねたもったいない作品でした。
詳しい内容については今回は触れません。(未プレイの場合、設定とプロットが唯一の楽しみどころになりそうなので。)


残りは雑記です。
ねずみ愛那がべらぼうに可愛かったです。
体験版プレイ時に結構、ヤンデレ臭がしたり、なにやら訳知りな感じだったりと
いったいどういう本性を隠しているのかと気になっていたのですが、割と普通?でした。
とはいえ、カッターで切り刻まれる五反田もドロウもさぞ怖かったでしょう。
でも可愛かったです。
伏、花蓮、愛那、聖月のいずれもビジュアルが好みだったので、やっぱりエロ薄は残念でした。

2点だけよくわからなかったことがあります。
1つは旧校舎で口が裂けた?少女が出てくるのですが、あれって誰だったのでしょうか?玉梓?
もう1つは月の門の「恩恵」って具体的にはなんだったのか?
個人的には、恩恵使って、美琴や円が蘇生のご都合主義とかあっても別に良かった気もします。
(実際にそうなったら叩くかもしれないので難しいところですが。)


NGボイスが1個ありました。
過去回想のところで、明日、美琴を連れてくると聖月が言うシーンのラストで
「一二三様…」の台詞の後に、2秒くらいすると「ん、んん」と咳払いが入っています。
チェックしろよ、、、。

伏tureはなにやら、俺たちの戦いはこれからだENDでしたが、まあ、残念ながら続編はないでしょう。
あるならせめてエロはもうちょっとなんとかして欲しい。