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ryushaswさんのCARNIVALの長文感想

ユーザー
ryushasw
ゲーム
CARNIVAL
ブランド
S.M.L
得点
90
参照数
631

一言コメント

自身を見失った少年と普通でない者に救いを求めた少女の物語

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

前々から興味はあったもののやるタイミングが掴めず、DL版でやるか製品版でやるかも決められないまま、
この作品を知ってから4年ほど経った今年になってからプレイした。
相変わらず曲だけは知っていて、ネタバレ気にしない性格だったのでこんな作品なんだろうな~と過ごしていたが、
この作品をやろうと決断した出来事が2つあった。


1つはノベル版を格安で手に入れたこと。
後述するが、他のユーザーも口を酸っぱくして言ってるがこの作品はノベル版を経て完結する。
しかし市場は20k前後が当たり前+DL販売してない+そもそもの数が少ないなどで、
見つけること自体が少し珍しいし、見つけたタイミングに限ってお金がない+定価10kにそんなに払えるかとなり、
購入してない人もいると思うし、実際自分もそうだった。
国立図書館に1冊置いてあるらしいので、そこで読むしかないか~と思っていたら、
とあるエロゲを扱っている中古屋でまさかの11k税抜きで置いてあるではないか!
フルプラ1本分なら新作1つ我慢ずれば良いし、見つけて速攻で購入してしまった。
まだ本編購入していなかったのに・・・。

2つ目はライブでカーニバルを聞けてしまったこと。
参加した方もいるだろうが、BGMライブでまさかのNANAさんが歌唱してしまうという場面に遭遇してしまった。
フェスだしソロライブあまり行ってない人のアンセム拾えればいいやと思っていたら、
まさか拾えるとは思わず、その日一番盛り上がってしまいました。
ただバックで流していたOPのムービーが超画質verじゃなかったのが残念だったが。
ちなみに隣で一緒に高まって自分と二人で有頂天になっていたオタクが、
結構絡んでいる顔合わせしたことないツイのフォロワーだったらしいと、
ライブ後にそのオタクと確認が取れて笑ってしまった。

そんな偶然が重なることもあり、これはもうやらないとダメじゃね?ってなったのでとうとうやることにしました。

この作品三部構成だが、個人的にはそれぞれ独立しているわけではなく、全て繋がってる構成であった。
それらをまとめて軽く感想を。どうせ考察とかは他の人とだいたい同じだろうし。
ノベル版のネタバレあるので、今後購入予定または国立図書館等で読むつもりでネタバレ回避したい方は回れ右で。







本作品は木村学が殺人を犯してから始まる逃避行ですが、
論点となるのは登場人物たちが幸せであったのかと捉えました。
結論から言うと木村学は幸せだった、九条理紗は共犯したことには満足感を得て、
自信の生い立ちには後悔していると捉えました。というかこの考えに至ったのもノベル版読んでからだし、
それほど重要な話だったと思います。早くDL販売をしろ。逃げるなフラシャ社長。
木村学の結論とも取れる行動が自殺となって描かれ、時系列は飛んでるけど、
そこまでに至る過程も説明されているし、やはりノベル版は必須です。
木村学は満足とは言い切れないが抵抗無く最期を迎えたし、
九条理紗もようやく過去と決別しかけるところまで自らの意思で持ってこれたし、
志村詠美も人生を狂わされたのかもしれませんが、葬儀に来られた辺り、
何かしら自身の中で踏ん切りがついたのでしょうか。何も語らないで去ったので答えは分かりませんが・・・。

皆どうすれば良かったのかなんて分からないし、起こるべくして起きてしまったのかもしれないし、
誰か一人でも違うことをしていたら変わってたかもしれないし、
全員が違うことをしてなかったら変えられないことだったのかもしれないし、
学自信がしっかりと武と向き合わないといけなかったのかもしれないし・・・。
九条理紗√で七年後を描いた辺り、彼女の行動次第で大きく変われた気がしますが、
彼女自身の問題を解決するのが遅すぎたか・・・。
とはいえ渡会泉との未来がそれほど多く語られていないのでなんとも言えないですが・・・。

多重人格ものと言ったら、”幽遊白書の仙水忍”や”空の境界の式と識”などが思い浮かびますが、
一人一人クセがあるキャラたちで、多重人格というだけでなくても印象に残るキャラが多いように思われます。


やはり”全員”が幸せにというか悔いが無いようにするってとても大変。
人の感性は移り行き数年も経てばまるで別人のようになってしまい、求めてゆく答えすらも変えてしまう。
それが例え死ぬことになろうとも・・・。

だからこそ学はノベル版での遺書に"どんなに苦しくても、心が死んだようになって、
痛みも喜びも何も感じることが出来なくなってしまって、何をしても無意味に感じられて、
もう駄目だと思っても、諦めないで、自分に耐えて、もう少しだけ頑張って欲しい。"などと言うことは無いだろう。
彼が何も心に残るものがなく七年も過ごしたのならこのタイミングで自殺はしないし、
こんな遺書を書くこともないだろう。
理紗と過ごして父の会社で働いて、人情に触れていくうちに学の空っぽの心が満たされたのであろう。
けれど皮肉かな。学の最期を後押しする一端には”自分たち”で殺した母の幻影によるものだということは。
結局学は愛され足りず、愛されることに恐れを抱いてそれを払拭出来ずに終わらせてしまった。
一度壊れてしまうと"心は乱れ 雨は続く 激しく咳き込む現実 ずれてくリズム くるったシーケンスは戻らない"
のだと言っているようだった。

幸せの形は生きているうちに見つけることが幸せなんだなって。