カルシウム フソク シテイマセンカ？
その昔、巨チン軍の投手が牛乳普及委員会のCMでそう投げ掛けていたが、母乳はそんな牛乳などとうに超越した、素晴らしき栄養食である。詳しくは『瑞本つかさ先生の【エッチ】を覚える大人の性教育レッスン！！(SQUEEZ)』にて学んでいただくとして、ともかく本作はそんな母乳にスポットを当てた作品。
物語はブランドの前々作『中出し以外は校則違反！』にて中出し学園祭を主催した主人公・中出精多が海で遭難し、名も無き島に漂着した挙句、記憶喪失になってしまうところから始まる。窮地の彼を救ったのは、島民である見目麗しき女の子たち。聞くところによると、この島は母乳を出荷することで生計を立てていたが、乳を搾ることが可能だった島で唯一の男性、一発名人が姿を消してしまったと言う。差当たり島を脱出する手立ても見つからないので、今暫くの間は命の恩人でもある彼女たちを助けるため、精多は｢中出しして妊娠させて母乳を搾る｣ことを決意するのであった…。
…という、実にリアリティーに富んだストーリー展開となっている。
さて、本作を語る上でのポイントはＯＨＰのストーリー紹介等にもあるように｢中出し・妊娠・母乳｣の３つ。
①中出し ☆☆☆
正直なところ、現在の業界において｢中出し｣を売りにするのは難しくなってきているといえるだろう。というのは、近年のエロゲーには｢中外｣選択肢が結構な割合で搭載されており、所謂抜きゲーだろうがシナリオゲーだろうがその気になれば中出しまくり可能だからである。全国の中田さんにはいい迷惑、エロゲ的には概ね良い傾向であると思われるが、同時に中出しが当たり前になった今日び、それだけをメインテーマに据えるのは些かインパクトに欠けるというもの。
故に、本作における中出しはテキスト描写もＣＧも決して悪くないが、さして目新しい興奮を得られるものでもない。また、アニメーションの出来は今一つというのも付け加えておく。
②妊娠 ☆
エロゲにおいて妊娠といえば何だろうか。やはり腹ボテだろうか。もしここに期する人がいるのならば、間違いなく本作は避けるべき。妊婦Ｈはたった一回である。ＣＧも一枚。
ちなみに、『妻しぼり』や『姉×2、オレ、妹』にあった妊娠確定ゲージ等のシュールなシステムが採用されている訳でもなく、ヒロインたちも妊娠に対する意識が全く無いため(危険日だろうがなんだろうが中出しを嫌がったり喜んだりしない)、孕ませ的シチュエーションを期待してもかなり肩透かしを食らうだろう。
③母乳 ☆☆☆☆
…ということで、①と②が共倒れた今、本作の命運は双乳にかかることとなった。…結果から言えば、流石にメイン中のメインに据えているだけあって、その収穫量は半端ではなかった。約５０Ｈシーンのうち、８割以上でミルクを確認することが出来る。しかし、真面目な話、母乳のクオリティーがどうとかは些か判断に困るので、ここはＯＨＰ等で確認していただきたい。
以上の３点から、当作品のウリの内、母乳以外はやや弱いと言っていいだろう。
ただ、Ｈシーンにおけるテキストはねちっこく、相応に尺は長め。卑語を多用した描写が卑猥なので、台詞よりも地の文を重視する人には良いかもしれない。
ところで、エロゲをプレイしていて｢妊娠もしていないのに母乳が出る訳ねぇー｣などと思ったことは無いだろうか。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%AF%8D%E4%B9%B3 (ページ下部｢妊娠を伴わない乳汁分泌｣参照のこと)
…どうやら出るらしい。
また、島から出る手段が無いのにどうやって母乳を売りさばいているのかという疑問に対しては、母乳パイプライン輸送が考えられる。
他、そもそもこんなシチュエーションがありえないといった点に関しては、海で溺れた少年が藍蘭島に漂着した例、瀬戸内人魚に助けられた事例等を考慮すれば、近年においては決してありえないとは言えないだろう。
人が空想できる全ての出来事は起こりうる現実である ――――ウィリー・ガロン
かの人物が残した言葉を正しいとするならば、この『南国さく乳アイランド』も絶対に非現実的とは言えまい。…でも俺は無いと思う。
そして、声優の頭数が足らない(メインヒロインの中での使い回し)と嘆くのも、フルプライスで差分無しＣＧ数７３枚は足りないと憤るのも、何より私のおつむが足りていないと貴方がイラつくのも、当然カルシウム不足が原因なのである。
本作はそんなストレスに苛まれる現代人(≒エロゲーマー)に、母乳が如何に大切かを問う、母乳リスペクトな一作であったと言えよう。
だから｢カルシウムを採るとイライラが収まるという説は医学的に見て間違いである｣というのは、諸説に違いない。…違いない筈だ。