セオリー通りともいえる構成に+αが施されている。これが見事高評価に繋がった。オフィシャルサイトのあらすじなどを読んだ限りでは、本作はバイオレンスな作風と見て取れるかもしれないが、本質はどこまでもドラマチックでハートフルな物語。事の結末に、思わず拍手を送りたくなった。
荒削り、という言葉がしっくりくる。
シナリオ(テキスト)・原画・音楽ともに、手放しで褒めることは出来ない。
テキストには笑わせる力。
原画には迫力。
音楽にはゲーム音楽としての技術。
それぞれの重要な要素において、現時点では発展途上と言え、洗練とは程遠い。
しかし、そのどれもにおいて、途方も無いパワーを感じる。
シナリオライターは圧倒的な筆力・構成力を以って、物語へ引きずり込む。
原画家はその淡い基調の中で、ありったけの心情を瞳に込めた。
作曲家は風景を旋律で表現し、心情をハーモニーに置き換え、リズムによって読み手を乗せた。
それはさながら、劇中にて主人公たちが見せたような、見事なチームワークであった。
仲間を失い、闇に囚われた、うらぶれた一人の男を救ったのは歌声だった。
ある者にとっては夢であり、ある者にとっては希望である、奇跡の歌姫。
そんな宝物のような彼女を狙う悪夢ともいうべき殺し屋。
その凶弾から彼女を守るべく、男は女の盾となる。
しかし、王道ともいえるストーリーは、王道のままで終わらない。
+αというべき展開が、この作品を更に磨き上げた。
小さな積み重ねの伏線、その全てが回収し終わったトキ、物語はようやく幕を閉じる。
見事な構成に、拍手を送るしかない。
男と仲間の笑顔に、心を震わせることしか敵わない。
パッケージに描かれたような、たくさんの向日葵に囲まれた彼女を見つめることしか出来ない。
ラウンド・ブリリアントカットと呼ばれる、ダイヤモンドの研磨方法がある。
それは、計算し尽くされた、ダイヤを最も美しく輝かせる究極のカットであり、万人を魅了し続けている。
しかし、その為には貴重なダイヤの原石を半分まで削らなくてはならない。
サークル「れいんどっぐ」が今後いかなる輝きを放つか。
荒削りでいいのかもしれない。