明暗を使い分けた良質の雰囲気作りと、無理に壮大にせず、物語の焦点を廃校舎に絞り纏めた点。そして濃厚なエロス。他、必要と思われる要素が上手く噛み合った。これぞ、フルプライス作品。
エロゲーに物語とエロの両方を求めている人にとって、久々に溜飲が下がる良作ではないだろうか。前半はシナリオ、後半はエロ中心と、そのバランスには若干傾きがあるものの、中盤以降のエロが序盤における些か長いと思われる日常描写を土台にして、その淫猥さをより増幅させていると考えれば、これはむしろ絶妙なアンバランスなのかもしれない。
また、舞台を廃校舎を中心とした学院内部のみに絞ったことが展開を小さな世界に留めているが、同時に枝が広がり過ぎるのを防ぐ効果にもなっており、結果的に物語の完成度を高めているといえる。
さて、その物語はというと、驚愕の真相があったり、二転三転と事態が移ってゆく訳ではない。また、特別緻密な構成という事もなく、舞台が狭いからといって、そこの歴史を深く掘り下げるタイプでもない。これは先に述べた、ストーリーを破綻から遠ざけている要因の一つでもあるのだが、やはりシナリオ単体としてみた場合、平凡~及第程度の枠を超えることはないだろう。
しかし、確かに深みはないが、転校生である主人公が学院においてヒロイン及び友人との仲を深めてゆく様は微笑ましく、楽しい。また、廃校舎を中心とした不気味さ、陰鬱さの描写は、日常の明るさに対して文字通りの好対照となっており、落差が効いている。テキストに明と暗がはっきりと見て取れ、アクセントになっているのは間違いない。
そして、これに画と音が加わることにより、妙が生まれている。
先ずは画。人物画は表情が生きており、時にコミカル過ぎると感じるものも、最早演出の一つだろう。また、一枚画におけるヒロインの挑発的な視線は、妖しさ、淫靡さを見事に表現しており、ぞくり、とする思いだ。
一役以上買ったのが背景。細部まで書き込まれた、という訳ではないにしろ、十分以上に綺麗で、何よりも「夜」の色彩が美しい。テキストと同様、明暗の区別が功を奏している。
そして音。実績申し分ないLittle Wing謹製の音楽は流石と言うべきか、磐石。テキスト、画に違うことなく、場を盛上げることに成功している。ボーカルに関しては、OPは緊迫感のあるものに、EDは作中の緊張感を維持しつつも余韻の残るような仕上がりをみせる。
要するに、雰囲気。この構築が見事だった。
この作品の最も優れた点は、ゲームにおける重要な三要素に調和が取れていることだろう。文と画と音が三位一体となっているが故に、互いが引き立てられている。そして、それを支えるシステムに不自由が見られない以上、高評価を与えざるを得ないだろう。
何故なら、肝心のエロも高水準だからである。
(以下、Hシーンに関するデータ等の開示あり)
シーン数は32と抜きゲーとみるならばやや少なめか。が、差分なしHCG数が70近くあり、使い回しが殆ど無い為、毎回新規CG2枚以上が投入された、濃厚なHシーンを堪能できる。テキストもそれに追随して尺は長め、ボイスも良好。
が、多くが和姦ではあるが、互いが想い合うような純愛系シーンは少なく、快楽の虜となった主人公やヒロインの、自らの意志とはかけ離れたHシーンが中心となるので、その点注意。ちなみにメインヒロイン3人には主人公以外との性的接触がほぼ無いと言っていいので、その点気になる人も手を出して大丈夫だろう。男性側が主人公のみの3Pといった複数人プレイが多いのも特徴。
しかし同時に凌辱、輪姦といった鬼畜要素は少なく、そういった方向を好む人にとっては不満の残る傾向であることは間違いない。個人的にはこちらの方によりエロさが感じられた為、少々残念ではある。また、雛姫そのものにシーンが無かったのは悔やまれる。
広がりと深みが少ないシナリオ、効果音の不足、濃いといえどやはり若干足りないと思われるCGとHシーン数等々、不満が無い訳ではない。が、良質の雰囲気がもたらす箱庭的物語と匂い立つようなエロに、満足ゆく作品であるのも事実。
キャラクター造形もしっかりしており、主人公も若干の無力感が漂っているものの、「後悔だって自分のうち」と言えるあたり前向きで、主役を任せられる。
また、ロード時や一枚画表示時などに見られる演出も努力の跡が伺え、好印象。他、後味が悪くない為、ハッピーエンド好きとして納得がいくのも個人的にありがたい。
難しいと思われる物語とエロの和合。ここががっちりと噛み合った、これぞエロゲー。
フルプライスに十二分、値する。
余談
早くもGageの次回作を期待したいところですが、純愛なのか鬼畜なのか。中心は和姦なのか輪姦なのか等のジャンルをきちんと公開して欲しいところ。パケ絵や作品タイトル、OHPにおける紹介だと、絶対想像する内容と実際のものに齟齬が生まれると思うのですが…。しかし、こんなことが本作の最大の欠点と思えるくらいですから、やはりいい作品です。久々にいい「エロ」ゲーがプレイ出来たなと思いました。
62…これは流石に解らないですよねぇ(笑)。こういった小ネタがまた楽しかったりします。これからプレイする方は、由衣→奈緒→柚流のプレイ順をおすすめしたいところです。