最後に意図して空を見上げたのは何時だろうか。
面白い。
ポジティブで強くて優しい、でも時に弱さも見せるコニー。明るく元気、けれど生まれが影を落とすシェラ。
二人が未知世界と帝国を相手に、知恵と勇気を以って対峙してゆく様は、確かにハラハラドキドキさせてくれる。冒険活劇としての楽しさは十分。
また、その脇を固めるキャラクターたちも魅力溢れる。カルベルティ、マタイオスを初めとする男性陣も非常に良い味を出している為、ボイスが無いのは悔やまれる。
久しぶりにSF・ファンタジーの世界にどっぷり浸かることが出来た。
偏に主人公、コニー・イル・リクールに魅せられた所為である。また、これは本作の重要な評価基準の一つだとも思われる。
しかし、残念なのは結局一番の興奮と感動を覚えたのが第1章であったということ。
兎に角流れるような、スピードと緊迫感溢れるBGM『act on!(作品内表記「アクション!」)』をそのまま物語に書き出したような、第1章のストーリー展開は素晴らしかった。
その後も手に汗握るようなシーンが幾度登場するが、及ばない。
何故なら、それは未知へのワクワク感ではなく、見える敵との対峙に拠るものだからである。
本作の魅力は、OHPの「ストーリー・世界観紹介」にあるような、未知世界への冒険、探検にあると思っていた。
しかし、実際のそれは作業的なSLGに取って代わられる。
折角魅力的な未知世界を用意したのだから、子どもに戻った冒険心を満たして欲しいものだ。
まだ見ぬ土地と街への旅路、古代遺物が残る遺跡の探索。そして、仲間と語らう野営。
こういったものを空想してしまうのは、SFC時代のRPGをやり過ぎたせいか、冒険物の小説に偏り過ぎた所為か。
帝国の影が濃過ぎて、コニーたちが今回の冒険を心から堪能出来なかったのは残念である。
ともあれ、娯楽性が非常に強い本作。語られなかった伏線はいっそコニーたちの新たな冒険に任せてしまった方がいいのかもしれない。
結局、私は夢想することしかできない。しかし、それも読み物の楽しみであると思う。
いや、そう思わせる作品だった。
最後に意図して空を見たのは何時だろうか。ふと、顔をあげたくなる。
抜けるような青空の中、ウルメンシュが飛んでいる気がする。