良質の連作。特に時間軸を初めとする、物語の精密な構成には圧巻。が、各章の関連性が弱いことは否めない。ここはそれぞれを独立したストーリーとして楽しむのがいいのかもしれない。死を以って生を謳ってくれる、優しい物語。
とにかく驚くのが綿密に練られたスケジュール。恐らく各キャラの行動を年表風にしても矛盾が生まれないはず。
ここがしっかりしているため、時間的に無理が無くアナザーストーリーがプラスされている。
これがあるからこそ残念なのは、各章の関連性の弱さ。最後で若干の意味を持つが、やはりもっと作中でそういう驚きというか感動が欲しい。
…が、それがこの作品のポイントかといえば違うので、もうそれぞれを単品として味わうのが正解なのかもしれない。
その各章については、個人的には3章における怖さが際立った。
また、4章は終盤の駆け足が物語を不明瞭にしがちなので、少しだけ残念ではある。
しかし、各章とも死と恋愛を上手く取り入れており、また、才知に長けたテキストは、ミスリードを誘うのを初めとした幾つもの罠を仕掛けてくるので、非常に読み応えがある。基本的には理解もし易いので、読み物として上等。
ともかく、異質ともいえる3章を除いた各章が、若干メッセージ性は弱いものの、死を以って生を謳ってくれるので、優しい物語ではある。
タイトルと舞台は夏だが、儚いストーリーと繊細なBGMは、どちらかといえば秋の夜長に合うような気もする。良作。
以下、少しネタバレ
余談
バッド以外のエンディングがどれも大団円に近いものを迎えていたので、それは少し残念です。私は基本的にハッピーエンド至上主義なんですが、この物語なら悲恋ぽくしても構わなかったかと。その方が自然ですし。寂しげなエンディングで「夏の終わりに…」なんかを流してくれたら、評価はもっと高かったかもしれませんね。得てしてそういう方が記憶に残るものです。
私は今回初のサーカス作品でしたが、今だこのメーカーに期待する人が多いのに納得。ダ・カーポやってみようかな…。
いい作品でした。