ErogameScape -エロゲー批評空間-

rutiaさんの恋神 ‐ラブカミ‐の長文感想

ユーザー
rutia
ゲーム
恋神 ‐ラブカミ‐
ブランド
PULLTOP
得点
77
参照数
2423

一言コメント

設定的には新しい切り口。成功してるかどうかは微妙なところか。お勧めはいつきとツクヨミ

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

まず最初に、このゲームの大本の趣旨を一言で説明すると。
ある日、日本に古来より伝わる八百万の神々が降臨するところから始まるドタバタコメディー、というのはOHPでわかるはず。
そんな中、主人公は幼少のころ出会っていた一人の女の子…神であるツクヨミと再会する。

とまぁ要するに、異世界から突如やってきたヒロインと仲間たちの日常を描くタイプのゲームです。
このゲームが、そういった使い古された設定のゲームと違うところは、降臨した神がメインヒロインの一人であるツクヨミだけでなく、八百万の神すべてであるということ。
その中で、現在の人間界の常識を学ぶために、神にも教養の場が必要と最高神であるアマテラスが国会で討論した結果、神に対する法律や、学び舎が設立されることが決定。
後者は、いきなり全員を学校に、というのは難しいので神の一部をモニターテストとして主人公たちが通う学校に通わせることに。
そこから、主人公はさまざまな神と関係を築いていくことになる。

八百万の神全てが降臨する、というのは確かに斬新な切り口で、いい視点だとは感じました。
が、それにより「神」というものにたいする神秘性や、触れてはいけないものならではの禁忌性など、その他様々ことが軽んじられているところが、私が感じた世界観のマイナスポイントです。
ヒロイン比率も、人間1・神3という割合なので、むしろ人間のほうが少ない・・・じゃあ巷で崇められているべき神様ってそもそも何さ、という気持ちになる。
他の方のレビューで読みましたが、神っぽい女の子との恋愛、というのは大変いい表現だと感じました。
ただ、世界観的に人間界に降臨している神は、神そのものではなく、その神の分霊(わけみたま)という自我を持った分身のようなものでる、ということになっています。見た目はイメージで変更可能な様子。
その中で分霊でないのは、校長の席に(無理やり)収まりながら、神の世界での会議だと姿を消すアマテラスと、主人公と幼少時出会っていたツクヨミの二人くらいでしょうか。




つづいて。全体的な感想。
こういった突発異世界ヒロイン登場ものだと、幼心に恋に落ちたヒロインが主人公と再会し、べったり。まんざらでもない主人公と、突然現れた異分子であるヒロインに嫉妬の炎を燃やす幼馴染系ヒロイン。
その二人のヒロインが主人公とりあってやーのやーの……。という展開だったら私はこのゲームをクソゲーと呼んだでしょう。というかそもそも買わないか。
このゲームはそんな展開は無く、むしろヒロインですらないサブキャラの嫉妬の炎というか、ルートによってはそのサブキャラの存在がかなり鬱陶しいことを除けばキャラたちは非常によいです。
むしろそういう、過去に出会った神秘であるヒロインが、ニート同然で神としてもほとんど無能で自堕落な底抜けに明るいおばか(いい意味で)というのはこれまた斬新な切り口。
・・・だから神としての神秘性や威厳、手が届くはずが無いものに手を伸ばす胸熱とかはこのゲームに期待してはいけません。ツクヨミ√といつき√はそれなりに熱がこもっていると思いますけど。

まぁ、プルトップさんはこういうのほほん、ほんわかした世界観が好きな人が多いでしょうから、強く拘らなければ問題ないはずです。
ただ、神話をモチーフにしているのにそこはどうなの、と思うところがある人もいるでしょう。私も思うところはありますが、ゲームを投げるほどのやっつけ設定や矛盾は一部を除いて無かったです。

他にいい点は、BGMの構成と流すタイミング・絵の丁寧さは相変わらず高水準を保っています。
やや日常の中だるみや、カットを多用する継ぎ接ぎ感がありますが、時折織り込まれるネタに気付けたりするとクスリ、とできるところも多々ありました。(ツイッター、女神転生、ゲームセンターあらしなどなど)
強いて不満をあげれば、学園物であるのに学園の雰囲気がいまいち出ていないことでしょうか。
たとえば登下校が連続でカットされたり、授業風景や体育などがまるで行われていなかったり、文化祭や体育祭は単語さえ出てこない。まぁ様々な神がいる中体育祭など開いても独壇場になるのは目に見えているが。
そういった様々な要素の欠落により、学園物であるのに学生生活を送っている雰囲気がほとんど伝わってこないのは残念なところです。
全体的な雰囲気も明るく、仲間内のテンションも全体的に高めのキャラと見守っているキャラがしっかり分かれていて、見ていてプルトップさんの安定感を感じ、安心できます。




キャラごとのシナリオや設定で気になったことや良かった点、悪かった点。ネタバレ多。「個人的にシナリオが面白くなかったor納得できなかった」順。

イナリ
サクヤ√とどっちが微妙かで悩みますがひとまずイナリさんのルートが一番見せ場も少なく、終始「だらー」っとした感じだったので。
名前のとおり彼女はお稲荷様……豊穣神なのですが、稲荷は白狐とされることが多いとか細かいことは気にしてはいけません。
なんというか、終始イナリ可愛いよイナリ、ってルートでした。このゲームを、OHP見ただけでもイナリすごく可愛い・イナリだけでいいから攻略したいという人以外は退屈なのではないかと思います。
私はイナリは結構気に入っていたのですが、さすがにここまでシナリオがぺらっぺらだとどうもなぁ……。キャラ萌え的には及第点。
というより、このルートが好きになれない最大の理由は主人公の態度とサブキャラである園芸部部長の存在。むしろイナリは可愛かった、がんばったよ。
神様として神様らしい(人に感謝されることをして幸魂集めたり)行動をしていたのは恐らくこのイナリ以外いないと思います。※幸魂(さきみたま)とは、この世界観において神様の最高の栄養になるもの。

主人公の態度で気に入らなかった点は大きく分けて二つ。
まず一つ目はどのルートでもいえる鈍感さ。イナリルートでは輪をかけて酷い。他人の気持ちどころか自分の気持ちさえ人に指摘してもらわないと気付けない鈍感さとは、一体今までどんな人生を歩んできたんだと。
もう一つ特に気に入らないのは、このシナリオで園芸部部長は主人公に告白>失恋>諦めません!という不遇なキャラなのだが、クライマックスで大人数の前で主人公に告白まがいの台詞(本人は独り言のつもり)
で、告白されることは確かに嬉しいが、恋人にイナリがいること。イナリはこの部長とだったら3人一緒でもいいといっているので、部長の気持ちも汲むべきなのか、いやしかしイナリが~の板ばさみにあってあうあう。
この部長については、シナリオ中で散々嫌悪感を抱いていたのですが、このエピローグを読んだ瞬間に私はこのライターさんとは仲良く出来ないな、と感じた。
あちらを立てればこちらが角が立つ、そんなの人間関係では当たり前のことです。こと色恋において、どこにも角が立たない関係はまず存在しないでしょう。
そこをこの主人公は2人のどっちかに角が立たないように、と迷走を始めるとは。とりあえず最後にやったシナリオでやっぱりこいつは最低な男だと感じました。
男だったらイナリを愛しているから部長(名前忘れてる)の気持ちは受け取れない、とイナリの前できっぱりといってやるべき。何、今後2人を愛する予防線を張ってるんですか、このライターさんは。

で、この部長。
最初のほうにかいた、やーのやーのする幼馴染っぽい行動をしてくれる(共通・イナリ個別共)のがこのキャラです。
正直嫌いです、そういうキャラ。他のシナリオでは、焼きもちは焼いているが影が薄いことと相俟ってそこまで気にならなかったのですが、このシナリオの彼女は文章にすると相当数になるほどに私を苛々させてくれました。
というより、イナリルートをやってる私にとって彼女は可愛くないんですよ。何度でしゃばんな、と思ったことか。
後述するいつきも、このイナリ√では他の√より焼きもち焼いている面を強く描かれているように感じましたが、いつきは心象穏やかでないながらもすっごいさっぱりしていて、距離感の取り方がうまく出来ている。
なんでこの部長はイナリに対する主人公の気持ちや、イナリの気持ちを知り、二人が恋人関係になった後でもセックスアピールを続けているのか。
略奪愛?それも大いに結構。だが、このゲームの方向性においてイチャラブしてる2人の間に無理やり入り込むのは見ていて不快以外の何物でもない。
そもそも略奪愛ってのはそんな大っぴらにやって伝わる魅力じゃないんですよ。巧妙に意中の相手と2人の時間を作り出し、そこでさりげないアピールを積み重ね、相手が弱ったときに自分のほうへ引き寄せてそのまま絡め取る、その駆け引きが略奪愛独特の魅力で(ry

イナリ1人で見ればキャラ75点、シナリオ45点で平均60点くらい。けど主人公と部長の態度や立ち振る舞いが私の嫌いなところを直撃したので45点。

ところで、イナリは豊穣の神ではありますが、子宝というのはちょっと微妙だったような。場所によっては子宝などの信仰もあるから、間違いではないですけど。どっちかっていうと商業関係の神なんですよねぇ。
後術のコノハナサクヤヒメのほうが、火中出産などの伝承があり安産や子育ての神としても有名だったりするのですけど……まぁキャラ性をダブらせてもしかたないか。




サクヤ
二番目は、サクヤシナリオ。彼女はコノハナサクヤヒメですね。P4とかにメインキャラのペルソナで出ましたし、富士山に祭られていたりと結構有名なので知っている人も多いはず。
神話では醜いから、という理由で1人親元に送り返され、それを理由に妊娠中のコノハナサクヤヒメを呪い、人間が短命である理由を作り出したとされるイワナガヒメも姉として登場します。
分霊として記憶を受け継ぎ、仲直りをしている、という設定で2人の仲は大変良好。
恥ずかしがりやでツンデレ、お嬢様言葉なのに一線を越えるといろいろな意味で暴走、酒乱などの属性もち。
お酒がすきなのは、コノハナサクヤヒメが出産の際だったかに、父親が今でいう甘酒を使ったことにより、その父親と娘のコノハナサクヤヒメは酒造の神とされることがある伝承からかな。

まぁサクヤ√はイナリシナリオと大差ないです。基本的に分岐後はサクヤ可愛いよサクヤ、で話が進むのですが。
こちらのルートは日本神話をモチーフにしたシナリオ…とある理由で家に引きこもるサクヤを、みんなで演劇を行うのを機に彼女を岩戸隠れしたアマテラスに見立てみんなで呼びかけ外に連れ出したり。
彼女の姉であるイワナ(分霊ではない本体のほう)が残した呪いの話であったり、とが盛り込まれていて、イナリルートより練り込んであると感じます。まぁ、稲荷様は浸透しすぎて大きな伝承を書き起こしにくいのもあったでしょう。
一言でいえばツンデレヒロインポジションです。全ルートでみると、結構暗い雰囲気も多いかな、と思います。分岐後はツンなんて微塵も無いので少し食傷気味になる恐れあり。

いまいち他のルートでキャラが安定しないこの子。
いつきルートでは最後までいつきや主人公とは互いにいい口喧嘩相手。イナリルートではみんな…特にいつきといつの間にか仲が良くなっている。ツクヨミ√はあんまり覚えてないんですけど・・・。
あと、他のクラスメイトとも経過をスキップしていつの間にか仲良くなっていたり。メインヒロインにしては掘り下げ方の足りなさが顕著に出ている感じでした。
キャラ萌え的には同じく良く出来てますよ。波長が合えばかなり可愛い…はず。私の好みとは微妙に違いますけど、可愛かったところも多いですし。

ただ、やっぱり納得行かないのはクライマックスでのオチにあたる部分ですよ。どこまで書いていいのか謎なのですが、大雑把に書くと。
イワナガ(本体)が残した呪いにより倒れる主人公>苦しめないために現世に存在する分霊の消滅で解決しようとする姉妹>1人だけ現世で愛された妹への嫉妬が原因の呪いなら2人一緒に愛してやる!>颯太(主人公の名前)さん!>FIN

はいどっかーん……。

まぁね。イワナガヒメの呪いが話に出てきた辺りでこのオチに行き着くんだろうなぁとは思ったんですよ。けど素人さんである私に思いつくオチとは違うオチを踏んでくれたら私としては嬉しかったなぁ……。
あれですよね、マク○スF的なオチなわけです。そういえば見た目もマク○スFのヒロインに似て(彼女は非常に良いものだ)
お兄さん好きじゃないなぁ、そういうの……。

むしろこの姉妹をもっとみんなの輪の中に加えて楽しく過ごして、妹と遜色なしの愛情をもってみんなイワナと接してくれてるんだ。
サクヤもイワナも、どっちかが消えるだけでも泣いちまうくらい悲しいことだから、みんなで2人を引き止めに来たんだ~、みたいな話でよかったんじゃないんですか。
このシナリオは結果的には2人と肉体関係を築くのも時間の問題の関係でエンディング。けどイワナのHシーンは無いんだ、すまない。
私苦手なんですよねぇ……こういう普通の恋愛ゲームで複数の相手と肉体関係を持って、それが当然とされる空気って。互いの間で揺れるのは構わない…けど最後、ちゃんとけじめをつけたうえでどっちかを選択してほしい。
というかこの主人公江戸っ子目指してんだ、謳ってるのにこのジゴロっぷりは如何なんですかね、ライターさん。
まぁ、いつきやツクヨミシナリオほど江戸っ子っぽい口調が登場しませんけど。むしろあの口調で話す主人公とか気持ち悪いんで止めてほしかった。

で、もう一つ謎なのが。
イワナが1人送り返された理由ってなんなのか、ということです。
神話のイワナガヒメは醜いため、1人送り返されてしまうわけですが、このゲームのイワナは醜いところなど一つもなく、園芸部部長と違って心にも汚れがほとんどない。
最初のころしてた仮面に外せない理由が~と書いておきながらあっさり外して以降そのまま……え、なにそれって感じです。私何か見逃したかな…。
ありがちでいいから、仮面の下に大きな火傷とか傷とか、それをコンプレックスにして云々、サクヤのことで云々含めてでイワナ√つくってあげればよかったのに。むしろ作ってほしかったよ!
けどFDで3Pやるようなら買わない。

キャラ的には70点、シナリオ50点で平均して60点。


これは推測ですが、上2つとこれ以降の2つはライターさんが別です。メインが3人?のライターさんがいるので恐らく大本が2:2の本数振り分けで書かれていると私は考えます。
理由は出来の差が大きいからです。上2つがキャラ萌え以外にとくに目立つことが無いのに対して、以下の二つは全体的に見せ場が多く、√分岐後の退屈やマンネリがなかったです。
つまりシナリオ含めてしっかり読み込むことが出来て面白かったということなのですが。
というより特に不満がないと感想が短くなるりますねー、仕方ないね。

ツクヨミ
とか上で書きつつ、ツクヨミルートについてはあまり書きたくないんですよねぇ。
えーと、キャラの特徴は。ろりーで基本役立たずで半ニートでドジッ子でいい意味でおバカで……あれ、魅力どこだ…?うん、おバカのところが可愛い、たぶん。
シナリオについてなにか書くとそれだけでもネタバレ含めて説明が必要になったりするので、上2つのネタバレの非じゃなくなる……。
シナリオ的にはこのゲームでトップクラスに良く出来ています。あとはキャラの好みですが・・・これが私の好みを結構大きく外しているので私はいつきシナリオのほうが読んでて楽しかったです。
うん、最初のほうに書いたようにニート同然で~、という切り口は斬新なヒロインでした。
他ルートでも誰よりも盛り上げ役として主人公の妹と一緒に頑張っていました。むしろそこが定位置でルート無くても私は満足できるくらいツクヨミは生き生きとサブキャラっぽいことをしていたね!
個人的に彼女の呟きネタがいちいちツボに入ったのですが。ツイッターなんてサイト見たことすらないのに・・・。

はい、ライターさんが頑張ったのか、熱が入っていることがテキストからも伝わってきます。けど私としては彼女は他ルートでの盛り上げ役が一番輝いて(ry

キャラ60。シナリオ95で平均して78点。


いつき
幼馴染……けど姉(違
なんていうか書き出すととまらないくらいいいキャラだったなぁ……メインシナリオでも他のキャラのルートでも。
彼女みたいな幼馴染キャラなら大歓迎なんだけど、どうして世には私の苦手なタイプが多いのか……マイナー乙ってことですねわかります。
神様嫌いなはずなのに一方的な嫌悪感を示したりはしない、距離感の図り方がよくできる子。ツクヨミとかを普通に抱きしめているあたり、可愛いもの好き。
むしろそこまで神様嫌い、という面は気にならない。いつきが精神的に弱っていたりする際にたまに表に出てくる。

メインシナリオでは彼女の過去について、神々が降臨する前から神を見ることが出来る能力の謎、祭神であるスセリ(スサノオノミコトの分霊)とのしがらみなどなど、すべて解決されている……はず。
たぶん一番いろいろ詰め込んだはずなのに、ちゃんと回収、補完されているあたりライターさんのレベルが高いことが伺えます。
他のルートでは主人公に知られることなく失恋したにも関わらず、いつもどおりの笑顔でいざという時にはいの一番に力を貸してくれて、恋煩いに気付いてない主人公の背中さえ押してくれる。
なんというか、いつき以外をヒロインにしたくないなぁ、というのが私がこのゲームをプレイして、各々に分岐する辺りまで進んだときに思った感想です。
たまに、この子以外をヒロインにするのは納得いかない、そんなゲームにめぐり合います。恋愛ゲームのシナリオの極みはたぶんそこなんじゃないか、と最近思います。シナリオの完成度がついてくるかはまた別ですが。

スセリとの兼ね合いも面白かったし、スセリも他のシナリオだとどうしようもないやつ、という感想しか抱けないけどいつきルートやるとだいぶ見方が変わると思います。
というよりいつきルートだとスセリ普通に可愛いですね。ヒロインになっても攻略する気にはあまりなりませんが、サブキャラゆえの魅力か。

ツクヨミに負けず劣らず(好みの贔屓目ありますけど)私好みの熱い展開もありましたし、基本的にいつきとそのシナリオにおける不満は特にありませんね。
尺的に最後の戦いというか、山場のところをもう少し長くしっかり書いてもらえたらシナリオ90くらいあげられたけど、厳しかったかなぁ…。

まぁ彼女以外のことで不満を言うとすれば。
カムイ(いつきの飼い犬)をああいった形で使うのであればもう少し、ヤトノカミ前に絡みがあったほうがよかったですかねぇ。
あと、そのヤトノカミの問題が解決した後の登場回数についても若干不満。もう少しいつきに絡んでくれて、それはそれで少し嫉妬が芽生える主人公とか書いてもらえてたら嬉しかったなぁ。
私の感性だと、ああいった形で問題が解決したなら学校でいつきに会いにこないヤトノカミというのはおかしい……。むしろ今まで一緒に過ごしていたツクヨミや主人公の妹並みかそれ以上に懐いているはず。
などのサブキャラの扱いがややおざなりと言うか、掘り下げ方が甘いことですかねぇ。あと、なぜ最後のCGでスセリの制服姿を描かなかったんだ……。

こう書いてみると、カムイ・スセリ・ヤトノカミ・ツクヨミ・妹・サクヤといつきさんは主人公がいない場所での会話を書く相手に困らない人気者。サクヤは喧嘩相手の側面もあるでしょうけど。

あぁ、最後に残念なのはいつきは巫女なのですが、その設定がまるで意味を成していなかったに近いことも。
最後○○の国に飛び込んでいくときくらい、着ていっても良かったんじゃないかい?
いろいろ巫女として神道の知識を披露してくれるのですが、巫女服とか折角なんだし書いてくれても良かったのに、と思うわけです。つまり巫女服でのエッチは無いんだ、残念だったね。

キャラ95。シナリオ80で平均して88。

主人公(颯太)
この作品で唯一好きになれなかったメインキャラ。(園芸部部長はサブ)
悪い意味での馬鹿・無鉄砲・鈍感通り越して愚鈍・単細胞などなど、悪い要素を大量に詰め込んだキャラ。
いいほうに働くときはその行動力でそれなりの成果を挙げるが、全体的に悪いほうへの成果が大きい。
とくにいつきに心配されて「心配してくれる人がいることは幸せなことだな」といっておきつつまた何も考えなしで危険に身を曝す。
いつきも想い人がこれでは日々気苦労が絶えなかっただろうに……。

合わない人はきっととことん合わない。ヒロインが嫌いだとか、世界観に納得いかない、よりもこの主人公が嫌い・気持ち悪いという理由でゲームを投げる人が多そうだと予想。

主に共通~ツクヨミ・いつき√において、江戸っ子っぽい口調が非常に浮いている。水と油並みに私の中に受け入れられない。しかもCGみるとそういう口調が似合わない顔をしている。
そしてテンションの上がり方がおかしい。常軌を逸しているといってもいい。
「スイッチが入っちまったからさ~~」などといって1人だけ読者も回りも置いてけぼりで熱くなって突っ走り始める。そして受け入れがたい江戸っ子口調。
なんていうか、見てて白けます。後半になればなるほどどのシナリオでも江戸っ子口調が減るのは、ライターさんたちも途中で気付いたのでしょうか?




サブキャラにおいてもまぁいろいろ。
全体的に掘り下げが足りない気がしますね。というか主人公っていつきと連次郎?以外に友達いないんでしょうか。あぁ、園芸部部長もいたか。
もう少し神様がクラスに編入した際、みんなで遊びに連れて行ったりとかすれば学園生らしさを描くいい切欠になったと思うんですけどねぇ。

後はまぁスサノオを女神化とかもあるのですが、それはいつきが女の子なので、女神のほうが会話とか付き合いを成立させやすかったのかもしれませんね。
ツクヨミは一応女神説もあった……はずですし。

亜紀先生が可哀想なので救済がほしいとか、アマテラスが最高神なのに存在とか軽すぎてなんだかなぁ、とかまぁ世界観的に厳かな神というのも合わないのかもしれませんが……。
たしかいつき√でいつきが口にするのですが、「人の心に土足で入り込んで」という言葉がアマテラスに完璧に当てはまっている。
個人的に嫌いではないんですけど、やたらと人の人間関係にズカズカ足を踏み入れてくる感じは、あまり好きではありませんね、このゲームのアマテラスは。
まぁ神に人間の心の機微を考えろ、というのも無茶な話なのか……?助力していることに満足気な感じですし。

細かいことを言うと、神が自分たちのことを神様、と呼ぶのも変だろう、とか斑が見つかりますがその辺は全体的な完成度の高さに水に流しましょう。

丁寧に作られているので、前作のしろくま~、といい今後も安定して楽しめそうなメーカーさんですね、プルトップさんは。

イナリ 45
サクヤ 60
うさぎ 78
いつき 88 で、平均して67。

ただ、私はそもそもいつきに期待してこのゲームを購入したので、期待にこたえてくれた出来に端数おまけしてキャラ・シナリオ点は70点。
バグの少なさ、システム周りの細かさ、声優様の演技のうまさなどの細かい点も特に問題なし。丁寧に作られているのがわかるのでシステム周り80点
BGM・ボーカルBGMも丁寧で、相変わらずのEDでの茶太さんの起用もファンとしては嬉しい。OP・EDの曲調は少し好みと違うけど、十分高水準でしょう。80点。

で、総合を平均して77。

長ったらしい感想・偏見に満ちた批評で失礼しました。