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rkawai3さんのシェル・クレイル ~愛しあう逃避の中で~の長文感想

ユーザー
rkawai3
ゲーム
シェル・クレイル ~愛しあう逃避の中で~
ブランド
ALICESOFT
得点
95
参照数
360

一言コメント

ありそうでなかったメロドラマ調エロゲ

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

このゲームの凄いところは、エロゲ、ギャルゲにありがちな類型的人格者がいないこと、
ヒロインのリズはさすがに少々美化されている感はあるが、全ての登場人物から
「居てもおかしくない」人格を感じる、それはこの業界では珍しいことだと思う。
なにより凄いのは登場人物の「社会的背景」がちゃんとあることで、これも
大抵のギャルゲ、エロゲの登場人物というのは「アナタこれからどうやって生きていくの?」
と突っ込みたくなる行動様式だが、そういう部分でもこのゲームはつじつまが合っている。
というよりそのつじつまが合わないので主人公とヒロインの逃避が始まるのだが・・・
登場人物全員に破綻のない人格があって、社会的背景やそれらとの葛藤がある上で、激しい
恋愛をするという形式はようするに「メロドラマ」であって、濡れ場につながっても
おかしくないのだが、何故だかこの業界にはこの形式のシナリオがなかった。
エロシーンを描きやすいのにかかわらずメロドラマ調エロゲがこれまでなかったのは、
「美少女」「学園」「純粋無垢」という業界の様式の呪縛であって、構造的問題のような気がする。
それらに囚われずにこのシナリオを書いた上田庄吾氏を賞賛したい。
僕はこのゲームのようなメロドラマ調エロゲというシナリオ様式でのエロゲをもっと作ってほしい、
ぶっちゃけ「学園or異世界」から離れてくれないか?という気がするので。
未プレイの人は新たな世界が開けると思うので是非。隠れた名作。