合わなかったです。残念。
ネガティブな感想なので閲覧ご注意ください。
合わなかった理由は大きく分けて二点。
一つ目は主人公の精神的変化が感じ取れないこと。個別、グランドを通じて各ヒロイン達の成長は見て取れますが、主人公は何が変わったんでしょうか。
震災で両親を亡くして、病で妹の一人を亡くしかけてて、事故でもう一人の妹を亡くしかけてる。これ相当重い生い立ちですよ。トラウマで記憶を封印してしまうほどの、です。そんな主人公がトラウマを克服して現実で生きようって思い直す為の動機付けってもっと重々しくないとダメじゃないですか。
過去の記憶がないから深い思考が出来ず、感情が言葉にそのまま出るって設定で通してますが、終盤に記憶をすべて取り戻してからもENDまであっさり話が進みますし、モノローグがほとんど無いせいで千隼が心の奥底で一体何を考えてるのか伝わってこないのが終始モヤモヤしました。
結局、千隼が最後の選択肢で一羽と二葉どちらも選んで生きる事を選択出来たのは『移植手術で一羽の命が助かる可能性が高いことがわかった』からであって、『アライブを通じて生きる力を得たから』ではないような気がしてならないです。
もう一つは設定の説得力が不足していること。
たとえば、一羽の仮退院のシーンで、千隼が一羽の抱えてる病状を知らず、快方に向かってると勘違いしていたことですが、同居する唯一の肉親である千隼がそれを知らないなんてありえません。最近のインフォームドコンセントはくどいぐらい徹底されてますから、治療開始前に同意書に家族のサインが必要ですし、そこには治療方針が延命目的か治癒目的かはっきり書かれてるはずです。
そもそも長年共に過ごしてきた最愛の妹が、余命幾許で手術以外では手の施しようがないほどの難病であることを知らないという設定は無理があるでしょう。フィクションに細かいツッコミ入れるのは野暮だとわかってますが、もう少し全般的に説得力が欲しかったです。
アライブの造りについてもですが、天才の妹達がノートPCを使って便利な仮想現実を作り上げました、のみで済ますのは…うーん、エロゲに関わらずVRを題材にした作り込みの深い作品が他にもっとたくさんあるだけに、それらと比べて物足りなさを感じますね。
絵と声優さんは概ね好印象でした。咲月の顔だけ苦手でしたが、克さんの単独原画じゃいけないんでしょうか。複数原画にするならもう少し絵柄を寄せて欲しいかなと思います。Hシーンは前二作(アマツツミ・アオイトリ)に比べるとやや印象は薄かったです。
「きらーん☆」と「親指の指紋を見て。自分にグッジョブだよ」が好きでした。