ErogameScape -エロゲー批評空間-

ritz_fawcettさんの乙女理論とその後の周辺 -Belle Epoque-の長文感想

ユーザー
ritz_fawcett
ゲーム
乙女理論とその後の周辺 -Belle Epoque-
ブランド
Navel
得点
91
参照数
596

一言コメント

前作の感想で名作に少し届かないと言ったが、シリーズを総合して名作であると訂正。エッテアナザーは正史にしてほしいぐらい完成度、満足度共に高かった。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

一か月間かけて、つり乙→乙女理論→つり乙アフター→乙女理論アフター(本作)と一気にクリア。最高に熱中できた一か月でした。Navelさん楽しい日々をありがとうございました。



本作がこの中で最も中央値が低いので、出来が悪いのかと思いつつプレイしたが全くそんなことはなかった。ただ分量的には微妙で、もし乙女理論から3年待って発売日に購入していたら少しがっかりの評価になるのも理解は出来る。自分は前作から続けてプレイした分、一連の作品として見なすことが出来たため価格や尺の部分での不満を持つことがなく済んだのかなと思う。

シリーズを通して得られた楽しさや感動はとても大きかった。人の死や病気、極度の不幸といった要素をはらまずに感動させてくれる作品はそう多くない。

特にCGの使い方が非常に上手かった。つり乙でのルナルート、ユーシェルートの衣装、乙りろではメリルルート、エッテアナザーでのエッテの衣装はデザインに疎い自分が見ても一目で凄いと鳥肌が立つものだったし、また他の衣装との差がわざとらしくなりすぎていないのもよかった。
りそなアフターで言えば、グランプリのりそなのデザインはセミグランプリのルナの物に劣るが技巧で勝ったという描写だが、CGを見ればそれがわかるように演出されている。ルナ同様才能があるメリルは、衣装の出来がモチベーションに左右されているのがルート毎のそれぞれの衣装を比べればわかるようになっている。

このような一枚絵を用いた視覚的に訴えかける演出はビジュアルノベルならではのものであり、服飾というモチーフを最大限に生かしていたことを高く評価したい。


以下個別ルートの短評


【攻略順】 メリルアフター→エッテアナザー→りそなアフター→エッテアフター



■メリルアフター

相変わらず心理描写が上手く、このキャラならここではこう考えるだろうというのが違和感なく表現されていて、読んでてストレスを一切感じさせない。
ただシナリオ的には本編同様尻切れトンボになっていたかなと思う。衣遠が懸念した、家庭的な衣服を作ることを好むことでメリルの創造性が失われていくという問題が根本的に解決されたわけではないから。
現実的な壁にぶち当たって、葛藤しつつもそれを朝日と2人で乗り越えていくという話が読みたかったのだけど、そこまで掘り下げることなくあっさりと終わってしまったことが残念。
あと結局キスしてないよねこの二人?


■エッテアナザー

最高に面白かった。つり乙のルナユーシェルートに勝るとも劣らない。なんでこれを前作でやらなかったのか。
アンソニーにスポットを当てて、従兄弟同士で力を合わせて兄に立ち向かうという構図にしつつ、エッテもしっかりと不可欠な存在として話に絡んできていて、文句のつけようがない。
特にエッテはこれまで能天気で奔放なキャラとして描かれてたところがあったけれど、朝日の今後を考えるときに、朝日の今と未来両方を応援したいから、朝日として学園に残すか遊星として生活すべきかで悩んでみたりと、要所で気の利く存在になっていた。
クライマックスのウォーキングシーンから家族投票を覆す場面が最も興奮した。
安易に大団円とならない終わり方もよかったし、この終わり方が3人のルートの中で一番自然じゃないかなあと思う。


■りそなアフター

唯一アフターらしいアフター。りそなが作った服が売れたと聞いて、兄の手を引いて走るシーンが、前作の公園での対比になっていてとても好き。
桜屋敷組も出てきたし、冒頭にも書いたようにフィリアコレクションではCGの妙味を味わわせてもらった。
わほぅー!わほぅー!勝ーった勝ったー!ルナちょむに勝ったー!いやっほぅー!うぷぷぷぷぷぷかわいそうでちゅねー。悔あしいいでちゅうかあー?


■エッテアフター

短っ!しかもこれほぼりそなの話でしょ。衣遠に才能を見せて信を得るためにエッテをモデルにゴスロリ衣装をデザインするりそなだったが、エッテに思う所があって素直に描けず。私のためじゃなくて好きに描けよとアドバイスするエッテのおかげで和解し無事衣装を作り上げることができた。
うん…どう考えてもエッテアフターではない(笑)けどまあアナザー本編が面白かったからこれはオマケと考えていいかな。





シリーズを通して、所々物足りない部分もあったけれど、それを補って余りある面白さがあった。この作品に出会えて本当に良かった…。


つり乙2も少し時間を空けてからやろうと、七愛は思った。