リアリスティックな三角関係物として途中までは物凄く楽しかったです。その後ファンタジー寄りに展開したので望んだシナリオとは違いましたが充分に満足出来ました。
うーーーん、もったいない作品!!普通に三角関係メインで描き切ればよかったのでは?
はっきり言って一周目めちゃくちゃ面白かったです。ひよとアララギ、どっちの心情も事細やかに描かれてて、WA2ccよりも好きな展開でした。
ひよが笹丸の布団を隅では無く自分とアララギの間に置いたのは、笹丸を隅に追いやることが出来ないという理由だけでなく、学校の席と同様に笹丸の居場所を作ったこと、それからアララギへの配慮もあったのでしょうね。
春告が笹丸と再会した時の辛辣な態度ですが、ひよとアララギの恋、どちらにも味方しないと決めていた春告にとっては笹丸にどれだけ想いを伝えても気付かれないひよと、心を押し殺したまま笹丸と接していたアララギの辛い姿をずっと見ていたわけですから、年を重ねても尚幼いころと変わりない関係を求めてくる笹丸に対する苛立ちのようなものもあったのだと感じました。
(実際は実の弟だって知ってどう接すればいいかわからなかったってことですが、一周目じゃそれは読み取れないですしね、というか実姉弟設定は、やりすぎだったように思います・・・。容姿が似ている等の伏線も皆無でしたし。)
おままごとの指輪を「慰謝料」として渡すシーンなんかもよかったですよね。
で、結局アララギと結ばれかけるわけですが、そのシーンでのアララギのセリフもとても印象的でした。
「あたしの好きはあの子の好きよりも強いものなの?それがわからないと私は自分で自分を赦せないんだ・・・」
“誰よりも”笹丸が好きだと言うアララギでしたが、他の“誰よりも”好きであるという確信が持てなかったため、
身体のつながりを拒むことになりました。ひよもアララギも、お互いに相手には敵わないと思っており、謙虚で実直な心根の優しさが伺えます。
テキストの衒学的な部分も含めて、ここまでで名作の香りがプンプンしてたんですけど、この後、期待していたのとは少し違う方向に行ってしまいました。
若さんがなんらかの術を使って時間を巻き戻し、二週目が始まり作品の雰囲気がガラッと変わりました。
ファンタジー色が強くなり、風土病、ループ物、キャラ消失・・・と00年代の作品に散見される設定が多くみられました。このゲームを最初にプレイしていればもっと高く評価出来たのでしょうが、どうしても「ああ、これあのゲームであったな」って思い出してしまって、どうにものめり込むことが出来ませんでした。
それでもこの作品の根幹、テーマに当たる部分である「優しさとは何か」をキャラが語るシーンはよかったです。
3,4周目はほぼ若さんルートと言ってもいいぐらい。一応謎が全て解き明かされて大団円を迎えるわけだけれど、
うーん・・・ここはちょっと自分には受け付けなかったです。机上の設定を代弁させている感が否めなくて、腑に落ちるというよりは、へーそうなんだーという感じで第三者的な目で眺めていました。若さんが生徒として少しの間でも学園に通う話が見たかったですね、消えるにしてもそれからでよかったのでは。
あとはこれだけ全体の尺を長く取っておいて、ひよルート一本であるならばもっとひよ個人を深く描いてもよかったような。笹丸と離れていた間に何を想って過ごしていたのかとか、笹丸と会話するために知識を身に付ける苦労の話とか、そういう内面描写が足りなかったかなと思います。というか内面って意味ではアララギのほうが優遇されてましたね。一周目二周目の演出的にもアララギのシーンの質が高かったと思います。
総括すると、キャラもCGもテキストも良質、WHITE-LIPSの歌も作風に合う素敵な物でした。
シナリオが若干合わなかったけれど、プレイして損はない作品でした。