ハロー・レディ! の完全版、成田真理の生き様の全て
本編もファンディスクもプレイ済みなので、追加シナリオである「Superior Entelecheia」(と「All's Well That Ends well」)について評価する(ただし得点は本編とファンディスクも含めた総合評価)。
評価点
シナリオ・設定の補完
本編で語られず、ファンディスクでさえ触れられなかった(どころか逆に風呂敷が広げられた)瑠璃やハロー関係の設定が軒並み補完・後付けされた。「Superior Entelecheia」自体が瑠璃√的な立ち位置であり、最強のHMIである瑠璃を軸に置くことで人類の可能性やハローの行き着く先など、復讐が軸であった本編とは趣向が違う話が展開されていた。一方、<機構>については相変わらず語られなかったりと消化不足な部分も少なからず存在したが、作風的に"謎の巨大組織"感を出すために意図的に触れなかったのだろう。
また、上記のように設定の補完が行われたと同時に、序盤に瑠璃の正体が明かされたため「復讐が無意味だと知った成田真理が何を成すか」についても描かれた。瑠璃の存在が明らかになるのが朔√(最終ルート)だったこともあって本編(及びFD)で語られなかった唯一の可能性を、それまでの6ルート分の蓄積を使って描いていた。それ故「Superior Entelecheia」はハロー・レディ! のグランドシナリオとして遜色ない内容(展開)となっており、成田真理の生き様の全てを描き切ったと言えると思う。
Hシーンの追加
本編、およびFDでは各ヒロイン(空子を除く)のHシーンが2つずつと、バトル物なこともあり一般的な作品よりも少なかった。それが「All's Well That Ends well」にて書下ろしのCGと共に1シーン(CG2枚)ずつ追加された。唯一ハブられた空子もリアクション役として美味しいポジションを貰っており、そこまで不遇に感じなかった。また、「Superior Entelecheia」の方がシリアス一辺倒だったため、主人公とヒロイン達の明るいコントが見られた「All's Well That Ends well」はHシーン以外にも価値があった。
クリアフラグ開放機能
本編+FD+追加シナリオの完全版なだけあって、追加シナリオ以外はやっているユーザーも多く、加えてこのゲームは選択肢が多いため、そういうユーザー向けにCG(クリアフラグ)開放機能があるのは素直に嬉しかった。特に、本編まで、FDまで、・・・と段階的に開放できるようになっており、本編はやったがFDはやってないというユーザーにも優しい仕様だった。
問題点
シナリオ展開の速さと雑さ
あくまでIFの短編だということなのか、よくわからない状態(OP2後かと思ったら空子の父親が死んでいたり美鳥が生きていたり)から始まり、そのまま事態が二転三転していき若干置いてきぼりを喰らった。特に接続実験の部分は明らかに描写不足に感じた。朔や終盤の瑠璃のように一部のキャラの言動が不可解なところも見られた。
戦闘に関しても、宿敵の黒船が序盤で死亡したりラスボスが巨人( )だったりして、イベント戦風なものが殆どで本編での黒船戦のような熱いものがなかったのが残念だった。展開としてはリア王Ⅴへの覚醒など燃え要素は存在したが、描写が淡白でいまいち盛り上がれなかった。一方、専用CGもあった空子vs美鳥のヒロイン対決はかなりの熱量があり面白かった。
ハロー・レディ! のグランドシナリオという立ち位置上、もう少し力を入れて丁寧に作ってほしかった。展開やクライマックスといった骨子が良かっただけに尚更である。
総評
追加シナリオが少々残念な出来だったとはいえ、念願の瑠璃やハロー関係の補完が行われ、クライマックスも「復讐が空振りに終わった成田真理が何を成すか」という、本編やFDで唯一語られなかったIFを綺麗に描き切ったと思う。
話の主軸には特に文句はないが、復讐劇という狭い範囲で繰り広げられる物語に対し、なまじ広い世界観と設定がミスマッチであり、前述したように本編ではそこが消化不足だと感じ、今作の追加シナリオに期待していたがやはり触れられることはなかったのが残念だった。