清々しいまでに王道の青春部活動ものながら、楽しく宇宙工学についても学べる類を見ない傑作
「部活でロケットを開発する青春もの」という、一見勢いだけのコンセプトに見えるものを過不足なく描き切っている。コンセプト上逃れることができない宇宙工学部分に関しても、ぼかすようなことは殆どせず、図解や比喩を用いて初心者にも理解できるように説明しているのは、ライターの理解度と教養の高さも含めて素晴らしいと思った。特に、中高で習う物理現象が現場でどのように応用されているのか分かるなど、エロ要素を抜けば教材としても使えるほど充実した内容であり、（内容を理解できることが前提ではあるが）この作品をプレイした後にロケットをはじめ工学全般に対する見識が大きく変わるのは間違いない。実際、この作品の影響で種子島のロケット打ち上げに興味を持ち実況を見守っていたり現地まで足を運んだりした人は少なくないと聞く。
ロケット関係では他媒体でも類を見ないほど専門性が高いが、シナリオの軸は「王道の青春もの」止まりであり、そこまで詳細な人間模様を見れるわけではないが、主軸はロケットなので仕方ないだろう。むしろ、ロケットに注力している割には父親たちの教育方針の違いや学園長の演説など考えさせられる部分も各所にあり、決して手が抜かれているわけでもない。
膨大な工学知識とトライアル・アンド・エラーは、理系かつ工学系（というか実際に試行錯誤しながらモノを作ったことがある人）は自然と共感してのめり込んでしまうような内容であり、そういう人におススメしたい作品である。