何度も笑って、何度も泣いて、心に残る夏休みでした。
発売前は気になる程度でプレイする予定はなかったのですが、評判が良かったので購入しました。Keyの作品をプレイするのはAIR、CLANNADに続いて三作目。以下、各ルートの感想です。
【しろは】
最初にクリアした√です。この√ではしろはがとにかく可愛かった印象があります。未来視の能力を思って人を寄せ付けなかったしろはが、料理や遊び、祭事を通して徐々に心を開き、最終的には羽依里と結ばれる。王道的ではありますが、いいお話でした。特に仮の夫婦となるシーンや、ラストの告白シーンはしろはの可愛さが際立ってお気に入りです。ただ、結局しろはの能力や羽依里が見た蝶等の謎が残されたままで読後感はあまり良いものではありませんでした。
【蒼】
しろはの次にクリアした√です。この√のメインは蒼のチョロさと蝶の正体についてです。共通√の登場時から全年齢ゲームにしては際どい発言の多い彼女ですが、七影蝶の記憶を見すぎて耳年増になったせい、というのはなかなか上手い設定だなと思いました。ただ、だからこそ羽依里と結ばれた後の行為が全年齢ゲームというせいで描かれなかったのが惜しい。惜しすぎる。中の人も好きなので、ぜひ18禁シーンを見てみたかったです。あと、気になったのが藍の七影蝶が蒼には見えなかった理由。その辺り作中では明言されていなかった気がしますが、私は『蒼が藍に会う勇気がなかったから』と解釈しています。自分のせいで寝たきりになった藍に許されるか不安だったから、でも羽依里がその橋渡しをしてくれたから再会できた。そんな感じに納得しました。話の流れとしては、最初に出逢った頃から蒼を起こし続けた羽依里が、最後も約束通り蒼を目覚めさせる、という展開できれいにまとまっていて良かったです。
【鴎】
三番目にクリアした√です。鴎√で印象深いのは『タカ』です。完全にミスリードさせられました。主人公の名字の一部で、羽依里も冒険をするうちに徐々に思い出すとなれば、実は昔に鴎と会っていたと思うのは仕方がないと思うのです。それはともかく、この話は正直辛かったです。10年後の冒険のために頑張り続けたのに、夢半ばで倒れて、でもスーツケースと共に想いだけ島に届けて夢を叶えようとした。そして、事実を知った羽依里が意味があるのかと自問自答しながらも鴎の夢を引き継いだ。辛い現実は変わらないのに、夢のため、好きな人のために頑張るという展開には弱くて、気づけば泣いてました。最後は結局鴎と再会できたのかわかりませんでしたが、ハッピーエンドであることを願います。
【紬】
メインヒロインの中では最後に攻略した√です。鴎√に引き続きミスリードしました。古い写真に紬が写っていて、人がいなかった場所から現れたり、場所を明らかにせずに帰らないといけないと発言したりすれば、過去からタイムスリップしていると思うのが普通だと思うのです。でも、紬の正体に気づいたとき、これは駄目な√だと直感的に思いました。そして、ロウソクのシーン。予想通り涙腺が決壊しました。絶対に報われない恋というのは辛すぎて駄目です。紬だったものと手を繋ぎながら涙を流す羽依里とともに泣き続けました。一番泣いた√かも知れません。
【ALKA】
リスタートする度に言動が幼くなっていくうみちゃんがメインとなる話。今までのうみちゃんの変化から展開はある程度読めましたが、それでもおとーさん、おかーさんと楽しい夏休みを過ごしたかったといううみちゃんの想いに号泣。何回泣かせれば気が済むのでしょうか。家族と過ごす夏休みが、仲間と遊ぶ夏休みが本当に楽しそうで、だからこそ徐々にそれが失われていくのが辛く感じる。使い古された展開ではありますが、それでも心に来るものがありました。
【Pocket】
ラストとなるこの√で語りたいことは3つ。
1つ目は、今までの各√を意味があるものにしたこと。普通の恋愛ゲームではエンディングを迎えたらその√の物語は終わりになりますが、本作ではうみちゃんがそれら全てを見てきて、そしてその記憶がしろはを現代に結びつけた。意味があるものにした。それが嬉しかったです。
2つ目は、うみちゃんが本当にやりたかったこと。ALKA√で過ごした夏休みもきっとやりたかったことなのでしょうが、本当に一番したかったことはしろはに「おはよう」と言うこと。そんな、家族では当たり前のことが、生まれた瞬間に死に別れたうみちゃんには出来なかった。それが悲しくて、切なくて、しろはの膝の上でうみちゃんがそれを伝えた瞬間、画面が滲んで見えなくなりました。
最後の3つ目は、しろはの力が消えた後の世界。力を失ったしろはは孤独じゃなくなって、プールで羽依里と出会うこともなくて、それでも父から引き継いだチャーハンが二人を結びつけた。これが運命なら、描かれなかった未来にはうみちゃんもきっといるはずだと信じたくなりました。想像するだけなら自由なので、私はこのエンドの先に、うみちゃんと羽依里としろはが楽しい夏休みを過ごす未来を期待します。
【総評】
単純に泣いた回数ならCLANNADの方が上ですし、主人公である羽依里が終盤空気になりがちだったのが気になりましたが、それでも何度も笑って、何度も泣いて、十分良作だと思いました。もし気になるなら、夏のうちにプレイしてほしい作品です。