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rinjunさんの時計仕掛けのレイライン -陽炎に彷徨う魔女-の長文感想

ユーザー
rinjun
ゲーム
時計仕掛けのレイライン -陽炎に彷徨う魔女-
ブランド
dramatic create
得点
90
参照数
417

一言コメント

シリーズ二作目あたりから読む手が止まらず。ミステリーものとして大変楽しめました。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

昼と夜のふたつの世界を持つ学園を舞台にしたミステリーADVです。PC版の三部作をまとめ、さらにVita版新シナリオを追加したもので、18禁シーンは削除されているもののかなりのボリュームがありました。

【黄昏時の境界線】
シリーズ一作目。物語の導入部分だけあって、各キャラクターとの出会いや舞台の設定紹介等が中心で、エンディングを迎えてもほとんどの謎が謎のまま残ります。もし、PC版単体でプレイしたら中途半端すぎて物足りなかったかも知れませんが、Vita版ではクリアすればすぐ続編をプレイできるのでそこまで気にはなりませんでした。
それより気になったのはシナリオの分岐。このゲームの分岐はいわゆる階段分岐で、最終的には必ずメインヒロインの憂緒√にたどり着きます。その構造自体はいいのですが、憂緒√以外が雑というかおまけと言えるほど短いのが不満でした。もちろん18禁シーンが削られているので多少短くなるのは仕方ありませんが、せっかく眠子も鍔姫も可愛いのに、付き合ったと思ったらあっという間に終わってしまって魅力を描ききれていない印象を受けました。

【残影の夜が明ける時】
シリーズ二作目。学園の目的や夜の世界の正体等、一作目でばらまいた伏線をがんがん回収していくのが面白くて、文章を読み進める手が止まりませんでした。あまりミステリーものはプレイしてこなかったので新鮮な気分もあったと思いますが、読み返してみると推理や予想をするためのヒントも存在しており、ミステリーものとしてもちゃんと楽しめました。
ただ、二作目もやっぱり個別ルートがアレ。単純に短いというのもありますが、憂緒√をクリアした後だとハイジ√も二人√もハッピーエンドとは思えなくなるのが残念でした。このゲームでは憂緒√以外は本当におまけと思ったほうが良いです。

【朝霧に散る花】
シリーズ三作目。最終作だけあって序盤から真相を追求していく展開。二作目で回収しきれなかった、または新たに発生した謎をすべて解き明かす勢いで、これまたボタンの連打が止まりませんでした。特に感心したのが主人公の力、黒谷の正体、そあらと主人公たちの関連性あたりの謎。一作目の時点で主人公がビール飲んでたり、そあらが小太郎のことを次男ぽいと発言したりしていましたが、そんな些細なことも確かにヒントになっていて、あとから思い返してみるとそういうことだったのか、と感心するばかりでした。
あと、三作目は個別ルートは存在せず、憂緒と結ばれてエンディングなので恋愛方面でもスッキリしました。正直、前二作も憂緒√だけで良かった気もしますが、18禁ゲームでヒロインが一人だけというのも難しいのかも知れませんね。

【陽炎に彷徨う魔女】
Vita版追加シナリオ。18禁ゲームを家庭用に移植した際の追加シナリオはおまけというイメージがあって、あまり期待はしていなかったのですが普通に面白かったです。特に印象深かったのはシグマの正体。よく顔を見たり、声を聞いたりしていれば気づけたのかも知れませんが、私はゲーム内で正体を明かされるまで気づきませんでした。シナリオ自体も三部作の中で残していた伏線を上手く回収しており、三部作に負けず劣らずミステリーものとして面白かったです。


【総評】
ミステリーものでネタバレは痛いのであえて内容にはあまり触れず感想を書きましたが、二作目あたりからは寝る間を惜しむほど夢中になるぐらい面白かったです。可愛い女の子と恋愛するだけでなく、推理や考察等をして物語を楽しみたい方にはおすすめです。