グラフィックは綺麗、キャラは良い、声も良い、日常は面白い、シナリオも良い、だけど詰めの甘さで名作としての評価を逃している気がします。
まず最初に思ったのは、過去に話題になった数々のゲームの美味しいところをそのまんまパ○ッて取り込んでいるということです。
学校での日常シーンは、主人公の置かれた状況といい、親友キャラの扱いといいク○ナドそのまんま。
生徒会の渚は、前作車輪の~で人気の出たキャラをそのまま持ってきて口癖まで同じです。
とはいえここはまあ面白いものができているんだし、不満と言うものではありません。
まず非常に納得がいかなかったのは、真帆に対する虐めです。
昨今は虐めという問題がクローズアップされてきていますし、「こんなあくどい虐めはありえない」なんて言う気はありません。
事実もっと酷い虐めはたくさんあります。
ただ、「ここまでの虐めを受けるタイプのキャラでは無いし、虐めの発端となった原因が弱い」と思うわけです。
この虐めの原因は、真帆が言い寄ってきた男子生徒に恥をかかせたからであり、この男子生徒があくどい虐めをするのは理解できます。
また、それによって男子生徒が共謀することもあるでしょう、でも女子生徒はどうでしょうか。
真帆が持ってきた弁当を落とされるエピソードがありましたが、あれの根拠が解らない。
そしてその後、他キャラシナリオの後半で、2ヶ月以上も経ってから「なんのまえぶれもなく」謝ってきて仲直りするというのが尚更意味がわかりません。
タイミング的に「実は謝罪して仲直りしたかったけど、極悪人の透と親しいヤツだからやめておこう」という感情があったと言いたいのでしょう。
でも、それを言ったら、同じく親しくしている綾奈達も虐めとは行かなくとも、他の友人は離れていくでしょう。
でも綾奈たちは普通に友人たちと仲良く過ごしているわけで、これも説得力には欠けます。
真帆がここまで執拗な虐めを受ける原因をもっと掘り下げるべきだったと思います。
次に引っかかったのは、「透は手が早すぎっ、ヒロイン達も揃いも揃って貞操観念無さすぎっ」という点。
でもこのへんはエロゲというジャンル上スルーしといたほうがいいのかな…?
そしてもうひとつ、沙希シナリオは良いストーリーだけど、序盤のイベントなど辻褄があっていない。
複雑な心境なんでしょうが、レストランに誘われたときなど、いくらなんでもイベント時の態度とそれ以外の態度が違いすぎます。
更に真実を知るのは生徒会長の一計があったから。
少なくともその前に、沙希が疑問を持ち始める程度まで、エピソードを挟めなかったんでしょうかね。
あまりに唐突すぎて拍子抜けしました。
そして最後、これが一番おかしい点。
空手部顧問である教師佐々木があの事件にああいった形で関わった動機が無いことです。
顧問の名前が大和田とかだったら話はわかるんですよ。
せめて大和田に肩入れする理由をシナリオに挟んでくれれば問題は無かった。
普通に考えて数々の大会で優勝して天才と言われる主人公は間違いなく部としては貴重な存在です。
顧問である佐々木が目の敵にする理由がわかりません。
ただ単にあの事件を主人公に擦り付けただけなら、「これが空手部としての大きな問題となることで、自分の指導者責任が追及されることを恐れた」という味方もできますが、それならばその後も大和田と友好的なのはおかしいですし、沙希シナリオでの陰湿な嫌がらせに通じません。
最後もなんかあっけなく消えていったし…。
こういう意味不明な点をあえて残して考察する楽しさを与えるって手法もあるでしょうが、この作品に関しては、間違いなくただの描写不足だと思います。
シナリオの流れは良いのに、いまひとつ感動というレベルまで行かないんですよね。
久々に眠くならないで楽しくクリアまで行けた作品なので、自分の中では評価は高いんですが、なんか高得点をつける気がしない、そんなゲームでした。