ルートによって読み味がことなる作品。弥子→めぐる→澄→三日月 or めぐる→澄→弥子→三日月でもいいかも
浅学で申し訳ないのだが、名前は知ってはいたが、OVERDRIVEも瀬戸口廉也作品もプレイしたことがない。
これが初プレイとなった。
文章がまずひたすらうまい。今までプレイしてきた作品はそう多くはないが、一番うまいんじゃないかと思った。
あと、月並みな言い方だが、ひねくれた若者を書くのが本当にうまい。日常の些細な異化を感じられる方なのだろうお想像した。
弥子→めぐる→澄→三日月のルートで読了した。
弥子ルートに関しては、本当に馨のやりたかった事である、バンド活動を通じて、花井是清がロックに何を見たのかを追い求めることをせず、
周りの人をを幸せにすることが正しいと決断し、その道を歩むという話だった。
結果、弥子との素晴らしき日々を手に入れるんだけど、それ以外のすべてを失うというくだりは、非常に好みのものだった。
あと、是清の言の通り、音楽の評価など所詮イメージによる主観でしかないのだとしたら、評価や売上を考えず、ただプレイヤーが楽しいと感じられる音楽をやることは、一番幸せで、純粋な音楽の関わり方なのかなと思ったりもした
めぐるルートは凄くシンプルで、生の充実を得る一つの方法としてのロックンロールが描かれる。これ以上のコメントがしようのないほど。めぐるが可愛い。
澄のルートのみ異常にメッセージ性の強さを感じた。主人公のサイコパスさに磨きがかかり音楽とは何かを追い求める狂信者になっていく。澄を失っても、それさえも音楽の種にしようとする姿は、独りよがりな創作に身を捧げた成れの果てでもあり、それでもその袋小路に迷いこんでしまう魅力があった。
澄に関してはそんな馨を全肯定してくる、都合の良すぎる女なのがけど、その女に依存していく過程が何ともリアルで変な声が出た。
三日月ルートが一番無難なルートとも言えるかもしれない。良くも悪くもこのバンドはやはり三日月の天才性によって成り立っているので、その天才が日の目を浴びたらどんどん人気を得ていくというのは納得できる話であった。
歌えなくなるきっかけの起こり方が週刊漫画誌レベルの行き当たりばったり感でそこはイマイチだった。
その後のスタジェネでの復活と、序盤の花井是清の『音楽など所詮振動でしかない』という答えに、それでいいと言い切れる三日月と馨の成長を感じた。