ErogameScape -エロゲー批評空間-

rhknogoさんのノラと皇女と野良猫ハート2の長文感想

ユーザー
rhknogo
ゲーム
ノラと皇女と野良猫ハート2
ブランド
HARUKAZE
得点
93
参照数
375

一言コメント

前作はキャラ同士の掛け合いにプレイヤー置いてけぼり感があったが、本作はそれが若干マイルドになっていた印象。その一方で、シナリオがより読ませるものに進化していた。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

当方はユウラシア→ルーシア→アイリス→ノブチナの順番で攻略していったが、この順番通りに面白かった。特に、ノブチナルートは前作を含めた全ヒロインの中で比べても圧倒的なまでに完成度が高いように感じた。

以下ルートごとの感想(エクストラに関しては割愛)

〇ユウラシアルート
キャラ単体で見ればユウラシアが一番好きだったので、個人的には満足したルート。ただ話のクオリティ的には他3人と比べると明らかに見劣りしているので、物語を楽しむというよりはユウラシアちゃんを愛でるルートであると考えた方がよし。

〇ルーシアルート
冥界の母の手によって光の届かない暗い地下牢に幽閉されていた過去を持つルーシアは自分の景色を見失っていたが、地上でノラと出会い、仲間に出会い、パトリシアとも腹を割って話し合うことで、囚われていた過去の呪いから解放され、新しい自分を見つけていく…というお話。要は「自分探しをしよう」という内容なのだが、不器用なルーシアが周りに支えられたり、見守られたりしながら葛藤する様子が良かった。ドレス姿のルーシアを自転車に乗せて、友人たちからの野次と魔力による爆発が飛び交う中砂浜を走っていくというなんともロマンチックな幕開けでスタートしたルーシアの第二の人生が、ふたを開けてみると重たい恋人生活だったのは笑った。

〇アイリスルート
冥界の話、生者と死者の話が最も色濃く描かれていたルート。とにかく共通ルートとこのルート終盤の皆での綱引きが熱かった。
本シリーズは独特で詩的な表現が多用されるが、アイリスルートでは「春と冬」「過去と未来」「生者と死者」などのテーマが、互いにうまく織り交ぜられながら表現されていて、読んでいて心地よさを感じた。「忘れられてしまうのを恨むよりも周りに元気に覚えてもらう」というアイリスの考えは物語当初から一貫していることが、結局はこのルートの本質だったように思う。

〇ノブチナルート
物語の紡ぎ方が上手い。題材としては家族との和解というオーソドックスな内容であるが、家族と家族との繋がりに本シリーズのメインメッセージである生命の話を絡ませてきたことで、より読み応えのあるものになっている。そして、家族の話と同時に、ノブチナルートは友情の話でもある。本シリーズは各ヒロインルートごとに色々なコミュニティにスポットライトがあたるが、やっぱり当方はノラ、井田、明日原、ノブチナ、田中ちゃんの幼馴染グループが一番好きなんだなと、このルートをやって改めて実感した。ノブチナは仲間を守るためであれば、自分が泥をかぶることも一人離れ離れになることも厭わないキャラである。しかし、周囲、特に明日原と田中ちゃんは、いつまでも5人でいることが一番大切なことだと考えている。5人が一緒にいるためには、友達の間違いを誰かが正さなくてはいけない。すなわち、今までノブチナが自分たちにしてきたように、今度は自分たちがノブチナに向き合い、叱り、手を引いて輪の中に連れ戻したのである。個人的に田中ちゃんは、友達を誰よりも愛し、そして誰よりも友達から愛されるキャラとして、5人には絶対に欠かせない存在であると感じる。あと5人の幼少の頃のCGとか最高だった。
家族の話と命の話と友情の話、テーマとしてはいささか盛り込みすぎ感のあるところを見事に余すことなく描ききり、かつ話のスケールを膨らませすぎないように、赤毛の少女の一つの物語として綺麗にまとめあげていた。ノラが猫の姿になることはあまりなく、友人としてずっとつきあってきた人間の姿で終始ノブチナに向き合っていたのも良かったと思う。